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ジェンダーを使わないでジェンダー平等を実現する
職場で使えるジェンダー・ハラスメント対策ブック
アンコンシャス・バイアスに斬り込む戦略的研修プログラム(現代書館)
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ジェンダー・ハラスメントは「性に基づく役割を他者に期待する言動」であり、就業女性を基幹的な役割から遠ざけ、周縁的な役割に押し留めようとする。
本書では、女性の活躍を阻むジェンダー・ハラスメント抑止を目的とした新しい研修プログラム(認知的複雑性研修:CCT)とその効果測定の結果を紹介し、新しいジェンダー平等推進の方法を提案する。
この研修プログラムは、受講者のジェンダー研修への抵抗を可能な限り低減するために、戦略的に「ジェンダー」の説明や用語を用いない。その代わり、受講者の他者への多面的理解(認知的複雑性)を促進することで、ジェンダー・ハラスメントを抑止しようとする。また、次の理由からジェンダー・ハラスメントをやめるように促すこともしない。
たとえば暗い夜道で「お化け」のことを考えないようにしようとすると、余計に「お化け」が頭から離れなくなる。これと似たようなことがジェンダー差別の文脈でも起こることがあり、「女性は感情的」と言う相手に、「女性は感情的ではない」「女性を感情的と言わないでください」と反論すると、「女性」「感情的」という言葉をセットで用いることになり、余計にこれらの結びつきを相手に対しても自分に対しても強めてしまう。このように、ある行為の禁止の呼び掛けは、必ずしもその行為の抑止の得策とはならない。
このような視点から、ジェンダー・ハラスメントを「しない」ように呼び掛けるのではなく、別のことを「する」ことを促して、結果的にジェンダー・ハラスメントをしないように導くことはできないかという着想に至り、研修プログラムを構築した。なお、この研修プログラムは、実際に就業者の研修前後および事後のデータを取得して、一定程度の効果が確認されている。データ数はまだ少ないものの、分析結果からはハラスメント防止に有効であることが期待されている(Kobayashi & Tanaka, 2022)。
また、ジェンダー概念を用いなくてもそれに基づく差別防止に有効であることは、この語や考えに抵抗感を持つ人に対しても有効な現実的な方略とであるとともに、ジェンダー以外の差別にも効果が期待される。
さらに、最近日本でも注目を浴びている「アンコンシャス・バイアス」の誤用について触れ、なぜそれが問題であるかを、ジェンダー平等推進の担い手の視点から考える。
この記事、研修に関するお問い合わせはこちらまで↓
toiawase.cct[アットマーク]gmail.com
↓こちらは、実際に研修を実施した出版社の方からのリポートです。
是非、ご覧ください。
社員9名の出版社がハラスメント対策研修を実際に受けてみた|前編(現代書館)
https://note.com/gendaishokan/n/n59911248a1aa