欲しがりません、勝つまでは

欲しがりません、勝つまでは
“シーチン”修一 2.0

【雀庵の「大戦序章」120/通算552 2023/1/6/金】小生はウサギ歳だから間もなく72歳になる。糖尿病と肺癌で60歳で成仏した父より12年も長生きするなんて想定外で、何となく申し訳ない感じだ。

敗戦で職業軍人の夢を断たれた父は22歳だったが、農家の次男坊だから実家にいつまでもいるわけにはいかない。間もなく近衛兵の軍歴を買われてキャンプ座間の警備員(セキュリティ・ガード)に採用され、軍需物資の横流しなどで資金を貯め、36歳の1959年には故郷に戻って食料品店(乾物屋)を開業した。小生は小3だった。

夕方4時から6時まで店は割烹着姿の奥さんで賑わった。両親と姉二人(中2と小6)は店で客の対応に追われ、夕食の米研ぎとナショナルの電気釜による飯炊きは小生の仕事になった。お陰で料理と台所の掃除は上手くなった。

1960年代からの高度成長の波に乗って父は商売繁盛、さらに株式投資も上手くいって蓄財し、47歳あたりにはお妾さん(寡婦、前夫との子供1人)も囲っていたから、60歳の早死にとは言え、まあ充実した人生だったろう。蓄妾以来、夫婦仲は冷えていたが、晩年の母は「戦後の食糧難の大変な時にお父さんは頑張ってくれたのよ、お妾さんのことなんてどうでもいいこと」と言っていた。まるで「恩讐の彼方に」。

米国の対日制裁、1941年の対米開戦、1945年の敗戦、米国による“属国化”・・・「恩讐の彼方に」という人もいるだろうが、日本は未だに属国、米国の51番目の州だ、と忸怩たる思いをしている小生のような人も少なくないだろう。

散歩では時折母校(多摩高)の正面入り口前を通るが、石碑には変わらず「質実剛健 自重自恃」とある。「浮薄に流れず心身ともに強くたくましく生きよ、自他を敬愛し、明朗闊達、礼儀を重んじ、自由と責任をわきまえ、自主独立の精神に徹し、つねに自らを恃み(たのみ)とできるように自己の昂揚に努めるべし」と小生は解釈している。

これは「武士道」だろう。教育勅語の「一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」、外敵から日本を死守しようということでもある。対米戦で頑張った父たちの2代目である戦後生まれの我らは今は70代、80代でなってしまったが、「日本独立」のタスキを次代につなげていかなければならない。

今は戦後日本、戦後世界の大転換期だ。第2次大戦に勝利した連合国体制(UN、国連)はそれなりに世界に安定をもたらしたが、コアの安全保障理事会は戦勝国の米・英・仏・中・ソの5ヶ国独裁である。冷戦期は4か国がソ連をそこそこ抑止できたが、今や中華民国は中共に、ソ連はロシアに取って代わられ、「自由陣営3」対「共産主義陣営2」で、すっかり機能不全になってしまった。

その上に米国はFDRルーズベルト以来、民主党は共産主義信奉者の牙城と化し、戦後になってようやく「あの人もこの人もスパイ・・・スターリン・ソ連に騙された!」と分かって来ると、レッドパージを恐れて「当時は社会主義者を共産主義者と称するのが普通だったんです、私は社会主義者です」と言い逃れる者が実に多かったらしい。

必死でアカ狩りに精を出していたジョセフ・マッカーシー(共和党上院議員)への支持は高く、後に大統領になったニクソン、レーガンも賛同していたが、民主党や陸軍などの反発は凄まじく、やがて多勢に無勢、マッカーシーはハシゴを外されて孤立し、アル中になったようでナント48歳の若さで亡くなった。憤死だ。

マッカーシー委員会に召喚されたレオ・ヒューバーマン。小生はヒューバーマンの著作「社会主義入門」「アメリカ人民の歴史」を1970年あたりに読んで感動し、と言うか大いに洗脳され、ヒューバーマンに手紙を書いたものだ。だが、今から思うと同委員会で彼は詐話師のようなことを言っている。例えば「社会主義入門」の補足「マッカーシーのやからへの挑戦」にはこうある。「 」はヒューバーマンの答弁(レオと略す)。

委員:あなたは「アメリカは現在ただ一つの病気にかかっている。それは資本主義という病気だ」と書きましたね。
レオ「書きました。私はマルクス主義者で社会主義者ですから」

委員:共産主義者で社会主義者、と言うなら分かりますが、どういうことか、説明してください。
レオ「全世界の非共産主義者と同じように、目標や方法が私のそれと一致している限り、共産主義者をはじめ他の人々と協力できる、と信じています」

委員:あなたの考えが共産主義とどう違うかについて説明してください。
レオ「質問は良心、信念、思想に関する私の自由を侵害するものです」

委員:あなたの書いていることを引用します。
《普通、革命家が与える一つの答えは次のようだ。暴力は使われねばならず、流血が見られなければならないのは、革命家が暴力を使うことを欲するからではなく、暴力を使わなければ支配階級を退けることができないからだ、ということである》
あなたはこうして我々の政府の在り方を転覆するために力と暴力を使うことを奨励しているのですね。あなたの文章でははっきりそう言っているように思われますが。あなたはこの文章を書いたのですね。
レオ「私が書いたものです」

委員:わが国で我々の制度を変えて、あなたの言われるマルクス主義なり、社会主義なりに移るためには、力と暴力が必要だ、とあなたは言っておられるのですか。
レオ「本委員会でわたくしの著書の内容について論議することは拒否します。本委員会の目的は、著書を著書として論議することではなく、わたくしの政治的見解を確かめることではないのですか。私は自分で正しいと信じていることだけを書いてきました。それで、読者が、あなたが今引用した部分を始め、どの部分でもその全体との関連で正しく判断されればうれしいと思っています」

委員:あなたの書物「社会主義入門」には次のような箇所があります。
《今では我々は中央集権的な計画をもつことが、ある一国にとって可能であるかないか、と推測する必要はない。今では我々はそれは分かっている。ソビエト連邦はそれを試みたのである。それは上手く動いている。それは可能なのである》
あなたがこれを書かれた時、あなたは共産党員でしたか。
レオ「私は共産党員だったことはありません」(以上)
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そう言えば小生が大嫌いな“卑怯者のすゝめ”的悪書「君たちはどう生きるか」の著者・吉野源三郎も、やっていることはアカ=共産党員そのものだったが党員ではなかったようだ(隠れ党員?)。吉野は逮捕歴のある“戦前リベラル”だったが、戦後は岩波書店が日共に乗っ取られ、結局、吉野は容共左派=戦後リベラルの代表格の一人となった。

WIKIによるとヒューバーマンは「中国やキューバなど、社会主義諸国を取材するとともに、多数の著作や講演活動などを通して米国内外で社会主義の啓蒙活動を続け、1957年には日本労働組合総評議会(総評)の招きで来日し、各地で講演した」という。

GHQが反共のために創った総評=社会党は、当初はリベラルを売りにしたが、結局、大内兵衛や向坂逸郎などマルクス主義信奉の社会主義協会に乗っ取られて過激派になり、自滅した。「2017年10月には立憲民主党が結成され、旧総評系労組の組織内議員の大半が参加した」(WIKI)そうだが、今では立民自体がレームダックになり、日共も斜陽が止まらず、小生には嬉しい「絶滅歓迎種」になった。

これで中露北の共産主義独裁帝国が穏やかに自滅してくれれば世界は随分明るくなるだろうが、独裁者やその党員、取巻き、労組専従、日本学術会議などの学者、マスコミ、財界など既得権益層は危機感を募らせているから、絶滅させるのは容易ではない。昨年、中西輝政先生監訳の「ヴェノナ――解読されたソ連の暗号とスパイ活動」を読んだが、建前上「反共の民主主義国を良しとする」米国でも政権中枢に“隠れアカ”と小生が嫌う大統領FDRルーズベルトの他に本物のスパイがウジャウジャいたという。同書の解説によると、
<ハリー・デクスター・ホワイト:通称「ジュリスト、もしくはリチャード」、財務次官補、IMF理事長。1941年11月対日圧迫外交における最後通牒「ハル・ノート」の原案を起草。1948年自殺>
まさに「あなたの隣にスパイ・・・」、共産主義恐るべし。武漢発コロナウイルス並の感染症だ。

国連安保理は解体的出直しが必要だが、それ以前に我が国の茫洋とした大臣がこのところ君子豹変なのか、国防に急に熱心になってきた。戦意高揚の産経の影響もあるだろうが、じっくり新聞を読む時間はないはずで、小生は「なんなのだ」といぶかっている。

丁度、志垣民郎著、岸俊光編「内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男」 (文春新書)を読み終えたところで、内閣調査室(内調)は日本のインテリジェンス(諜報機関)の代表機関で、安倍晋三氏が最も重要視していた情報源だと知った。茫洋大臣も宗主国・米国からの軍事力増強を求める圧力のみならず、内調からの報告もあって“ヘンシーン!”になったのか?

先の大戦では近衛文麿総理はソ連スパイに篭絡され続け(ゾルゲ事件)1941年に日ソ中立条約を締結したが、古人曰く「朱に交わればアカくなる」、共産主義者を信じるとひどい目に遭う、必ず裏切られると肝に銘じなければならない。まあ「喉元過ぎれば熱さ忘れる」は世の習いだが、中露朝を10年ほども封じ込めれば共産主義国は自壊するのではないか。今が自由民主圏の踏ん張りどころで、ウクライナも頑張っている。「欲しがりません、勝つまでは!」、結束を進めよう。
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