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英語は楽し! 第9弾 Part2「英語の世界の動物たち」


⑥象(elephant エレファント)


 英語でご存じ elephantレファント)です。これも英語的には面白いですよ。英語の世界では象は色の違いによって表現されます。英語の世界には白い象とピンク色の象がいます。白い象は white elephant ですね。これは「役立たずの無用なもの」という意味です。昔、タイ国の国王が、恨みを持っていた家臣に白い象をプレゼントしました。白い象は神聖なものとして崇められていた生き物です。ですので象をもらった家臣は飼育を放棄することもできず世話し続けざるを得なかったのですが、大食いするだけの動物に四苦八苦し、最後は破産してしまいました。プレゼントした王はまんまと復讐に成功しました、という逸話です。 white elephant は「無用の長物」という意味に通じます。
 次に「ピンク色の象」 pink elephants です。皆さんはお酒は飲みますか? 深酒をして前後不覚になったことはありますか? まさか、麻薬を試したことがある人はいないでしょうが、泥酔による酩酊状態にある時、麻薬によってふらふら状態にある時に、このピンク色の象が幻覚として現れる、というのが英語の中にあるのです。実は私、かなりの酒飲みなのですが、一度はピンク色の象にお目にかかってみたいものです。それにしてもなぜ象なのでしょうか・・・。ディズニー映画の「ダンボ」の中で、お酒に酔っ払ったダンボにピンク色の象が見えているシーンがあります。よかったら確認してください。
 因みにこのフレーズは  elephants と複数形の s が付いていますが、これはなぜでしょうか。実はこの複数形の s は実に大きな働きがあるんです。詳しくは近いうちに寄稿しますが、英米人は複数形の s に、「現実の認識の仕方」を込めているのです。 dropping は「落下」という意味にしかなりませんが、 droppings と言うふうに 複数形の s を付けると、「(犬や猫の)糞」という意味に変わるのです。つまり英米人は、「動物は普通、一回の糞で、一本(一個)じゃなく、何本も(何個も)するものですよ、という認識を、この s に込めている」というわけです。
 elephants の話に戻りますが、この s には、「幻覚って、一回きりでは終わらないでしょ。何度も何度も襲ってくるものなんじゃないの? だから複数形の s がいるでしょ?」という彼らの認識が含まれているのです。
 「複数形のおいらが付かないと幻覚という意味は表現できないだろ!? a pink elephant じゃただのピンク色の象にしかならんやろ」と、 s は自己主張しているわけです。恐るべし s 。
 

⑦ヘビ(snake スネイク)🐍


 ヘビ snake(スイク)のイメージ的には世界共通でしょう。嫌われ者ですよね、ヘビは。英語の中にも誉め言葉として使われることは皆無だと思います。a snake in the grass(スネイク・イン・ザ・グラス)というフレーズがあります。 grass は「草むら」です。意味は「草むらの中に潜むヘビ」です。いつ鎌首もたげて毒牙で襲ってくるかわからない油断ならない奴」という意味です。今まで一緒に行動してきたのに、「おあいにく様、じゃ、ばいばい!」なんて、甘い汁を吸ったとたんにドロンする、映画に出てきそうな意地悪な裏切り者のイメージです。
 また、 a snake in the bosom(ア・スネイク・イン・ザ・ブザム)というフレーズがあります。 bosom は「胸」です。「胸の中に抱いたヘビ」というのが直訳です。傷ついたヘビを何とか助けようと、胸の中で温めていたとしましょう。しかしヘビはヘビ。牙をむいてあなたの胸に噛みつきます。そう、「恩を仇で返す恩知らず」という意味です。「獅子身中の虫」ですね。ヘビは暗く非情な裏切り者というイメージばかりです。
 また、 snake-pit(スネイクピット)という単語あります。 pit(ピット) は「穴」です。snake-pit は「ヘビの穴」です。皆さん、ヘビが無数にウヨウヨいる穴に落ち込んだとしましょう。どうしますか? もう気も狂わんばかりにバタバタするはずです。 snake-pit は「修羅場」という意味です。怖いですね、ヘビは。
 

予想がつかない奴


   

⑧ペンギン(penguin ペングウイン) ⇒ いろいろあって、一番 楽しいよ!


 ペンギン🐧は penguin と綴られ、「ングウイン」と発音されます。ペンギンはかわいらしいからペットにしたいと思っている人はいませんか。とんでもないです。もちろん抱っこできるような小さな種もいますが、世界最大のペンギンである皇帝ペンギンは、最大130センチメートル、45キログラムにもなるのです。こんなもの相手にしたら、下手するとつつき殺されますよ。ウェブなどで確認してください。その迫力が分かります。
日本語ではペンギンはペンギンでしかありません。ところが英語の世界ではペンギンは大暴れします。(笑) 今から「エっ!ホント?」「なるほど!」の世界へいざないます。
 (ア)ペンギンには「飛行場を滑走する戦闘機」という意味があります。さぁ、今この段階でその理由が推測できますか? では皆さん、ペンギンの後姿をイラストに描いてみてください。その後ろ姿は顔を上に向け、両手はともに斜め下に開いている姿です。描けましたか? どうです? 色も黒っぽく塗ってみてください。 ほら! 戦闘機を上から見たイラストになりませんか。この投稿の一番上の写真を確認してください。
 ここに日本的発想と英語的発想の大きな違いが垣間見られます。含蓄深いですよ。では説明します。
 まず、「飛行場を滑走する戦闘機」というイメージをする英語的発想は、ペンギンを「歩く、走るのではなく、滑走する生き物」と捉えているということです。では何を使って? もちろんお腹を使って滑走するのです。ペンギンはおなかを使って、つまりうつ伏せになって氷上を滑走しますね。ペンギンにとって陸上を最も早く移動する方法はこの滑走です。英語的には、ペンギンはそういう動物と捉えられているわけです。
 一方日本ではどうでしょうか? その前に、ペンギンを漢字で書くとどうなるかご存じでしょうか。なんと、「人鳥」です。完全に当て字ですが、ここ漢字の中に、日本人のペンギンという生き物の捉え方がはっきり見て取れます。そう、二足歩行です。日本人はペンギンを「(人間同様)二足歩行する生き物」とイメージとして捉えているのです。
 英語の世界では「飛行場を滑走する戦闘機のような動物」、日本語の世界では「二足歩行の動物」という発想の違いがはっきりとあるのです。
世界中のどこに行っても人間が想像するペンギン像は一致します。色黒でくちばしがあって、短い手があって、二足歩行はすれど、よちよちと頼りなげに歩くかわいい鳥という像です。ですが、英語的イメージと日本的イメージはこうも違っているのです。とても興味深く楽しい事実ではないでしょうか。
 (イ)さらにペンギンには、「修道院の(女性の)尼」という意味もあります。黒いローブに包まれ、首付近は白色が目立ち、顔だけが露出している尼。ペンギンはそれをイメージさせる、というのも英語的発想です。日本にはありませんね。
 (ウ)ペンギンは群れて暮らす動物ですが、実は群れを統率するリーダーはいないのです。ライオンや狼とは違う群生活を送る生き物です。これはある意味、危険な在り方です。統率するリーダーがいないということは、群れ全体が生き残る手段を欠いていることになりかねないからです。でもご安心あれ。ペンギンの群れの中には First Penguin がいるからです。「ファースト・ペンギン」です。これは、群れ全体を動かす勇気あるペンギンのことです。親ペンギンは子育てのために一日中海に潜り、魚を捕らえ、子に食べ与えなければなりません。しかし生息している氷の上は海面まで崖の高度がありすぎて怖くて飛び込むことをためらいます。そんな中、天敵が待っているかもしれない海へ勇気を持って飛び込む勇ましいペンギンが必ずいるのです。我先に海に飛び込みハンティングに励む一匹のペンギン。それを First Penguin と呼びます。他のペンギンたちはそれを見て、次々に海へ飛び込み、魚を狩り始めるのです。そうやって巨大なペンギンの群れは生き延びて行っているのです。
 今では、「リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主」のことを「ファースト・ペンギン」と呼ぶようになりました。日本のドラマにもこの名の番組がありましたね。
 アメリカで若者が最もあこがれるのが起業家です。それもあって、アメリカで「ハイリスクを恐れず新しい分野に向かって勇気を持って挑みなさい」という教育が行われていると聞きます。 First Penguin を目指す教育が盛んなのです。 iPhoneの開発で世界を変えた男スティーブ・ジョブズのモットーは Think Differentスィンク・ディファレント) です。「人とは違う考え方をしろ!」です。まさに First Penguin ですよ、世界を変えるのは。
 

Ⅲ 終わりに


  a fly on the wall(ア・フライ・オン・ザ・ール: 壁に止まっている一匹のハエ)ってどんな意味だと思いますか。 fly(フイ) は「ハエ」です。壁に止まってじっとしているハエを想像してください。ハエは何をしているのでしょうか。そう、「盗み聞き」をしているのですよ。男女の秘密の会話を盗み聞く野暮な奴、や機密情報を盗み聞きするスパイみたいな意味です。
  ants in the pants(アンツ・イン・ザ・パンツ) はどんな意味でしょうか。意味は「ズボンの中にアリがたくさん」です。想像してください。ズボンの中にアリがうようよしている状態を。もぞもぞして気持ち悪いでしょ。そう、「緊張したり、トイレを我慢したりして落ち着きがない」という意味です。アリという小さな生き物が大活躍です。
 先ほども触れましたが、この表現で antss に注目してください。複数形の s が付くのは、「アリが、たかが一匹ではもぞもぞしないだろ。たくさんズボンの中にいなきゃ、モゾモゾせんだろ? だから複数形の s が付くんだよ」と主張するためです。つまり、 an ant in the pants(ズボンの中にアリが一匹)では「落ち着かない」という意味が出せないのです。モゾモゾしないから。モゾモゾするにはアリは複数いなければならない、というわけです。
 今回は生き物に関わる表現を特集しました。面白いものが他にもたくさんあるのですが、載せきれないのがとても残念です。また何かの機会にやりたいと思います。
 どの分野にしてもそうなのですが、英語を学んでいると、日本人と米英人の発想の違いやイメージの仕方の違いに出会い、そのたびに感心したり、あっ!と驚いたりします。かと思うと、まったく一致することも結構あり、発見や感動は限りがありません。そういう知らなかった世界に触れることはとても新鮮だし、建設的な体験だと思っています。自分の人生に新たな光が差したような気にもなります。これからもわかりやすくためになるようなコンテンツを皆さんにお届けいたします。では、 See you again!


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