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ミスター タイムの英語は楽し! 第15弾 英語の「死」の世界 Part ①
こんにちは。今回は人間の永遠のテーマ、「死」を英語で表現してみます。「誕生」と「死」は表裏一体。深いですよ。
「死」はとてもデリケートな問題ですので、日本語でもそれぞれの場面でそれぞれの言葉で表現されます。「亡くなる」「息を引き取る」「天に召される」「昇天する」「旅立つ」「臨終」「永眠」「逝去」、天皇一族が死去すれば、「崩御する」なんておどろおどろしい表現もあります。
英語でも同様に様々です。しかし日本と英米とでは歴史が違いますし、死に対するイメージも異なります。一般に扱いにくいトピックですが、英語の世界では結構笑える陽気な表現もあるのです。
一般的には die という単語が最もよく知られています。しかしこれは「死ぬ」そのものを言うので、より丁寧な pass away がよく使われます。「遠くへ行ってしまう」といった感じでしょう。他にどんなものがあるか、見てみましょう。
① cross the river ② go west ③ go home in a box ④ go flat-line ⑤ come to dust ⑥ bite the dust ⑦ kiss the dust
⑧ turn up heels ⑨ kick the bucket ⑩ go to the better place
⑪ rest in peace などたくさんあります。
クイズも交えながら解説しましょう。まず①です。「その川を渡る」という意味です。さて、この the river とは日本語では何のことでしょうか。そう、「三途の川」です。川の向こうが「あの世」との発想です。これは日本語と一致しますね。日本では三途の川を渡るには、船代金として船頭に渡す六文銭(お金のこと。 現代で言うと300円くらいでしょうか・・?)が必要ですが、英語の世界ではどうなのでしょう。もしタダで三途の川を渡れるなら不公平ですよね。ということで、知り合いのアイルランド人にこのことを聞いてみました。すると、アイルランドでも死者は the river(川)を小舟で渡らせてもらうらしいのです。「じゃぁ、いくらか運賃がかかるんよ?」と聞くと、「よくわからない」と答えられました。「はぁ、眉唾な話…」と思いながら笑って聞いていました。
②は「西へ行く」です。はて、日本では「縁起の悪い方角」はどっちだったでしょう。「北」です。死者は枕を北向きにして寝ると昔からされています。「北枕」といいます。ではなぜ英語の世界では「西」なのでしょうか。諸説あるようですが「太陽が沈む」ことが「死」を連想させるというのが有力なようです。太陽は西に沈みますね。
③は「箱の中に入って帰宅する」です。これはストレートで分かりやすいです。box とはもちろん「棺」「棺桶」です。「棺」は coffin(コフィン)とか casket(キャスケット) と言いますが、 あえて box というシンプルな多義語を使って婉曲的に表現するところに死に対する畏怖の気持ちが感じられます。
④は医学関連で生まれた表現です。flat-line(フラットライン) とは「上下動なしの水平な直線」という意味です。さて、何のことでしょうか。そう、手術の時などに患者の心臓の鼓動を示す器具がありますね。心電図と呼ばれます。その画面に現れる線が水平になった時が心臓が止まった時、すなわち死んだことを表します。こんな発想、日本語には全く見当たりません。病院の医師が患者が亡くなったときに、「心電図の線が直線に変わりました」なんて言いませんよ。
面白いのは⑤⑥⑦⑧です。これらは想像力をフルに活用させて理解してください。⑤は「砂塵に帰す」 ⑥は「砂塵を噛む」 ⑦は「砂塵にキスする」です。「砂塵」とは地面を覆う砂やほこりのことです。⑧は「かかとを上向きにする」です。さてクイズです。これらの表現はどういう背景の中で生まれたものでしょうか。どんな場面から生じた表現でしょうか。次の中から選んでください。
ア 海の中 イ 台風などの大災害の中 ウ 戦場
エ 学校 オ ボクシング
正解は、ウの「戦場」です。
⑤は戦死した兵隊が誰にも発見されないまま風化してしまう様子です。
⑥⑦は類似表現で、撃たれた兵士がうつぶせに倒れ、顔は地面につけたまま死んでいる姿です。それを砂塵を「噛む」「キスする」と表現しているわけです。「キスする」は笑えますね。死という悲惨なイメージをユーモアで表したのですね。
⑧も戦場が思い浮かびます。兵士がうつぶせのまま死んでいるイメージを持ってください。その heel(かかと )はどうなっていますか。これはおそらく、至近距離から後ろ頭をズドン!と撃たれた兵士がそのまま前のめりに倒れた様子から生まれた表現でしょう。こういう表現は日本語にあるのでしょうか。これも面白い現象です。
⑨に行きます。bucket(バケット)とは「バケツ」のことです。意味は「バケツを蹴っ飛ばす」です。さて、これはどんな場面から生まれた表現でしょうか。これもクイズです。
ア 大喧嘩 イ 地震などの自然災害 ウ 死刑執行
エ 大火事 オ やくざの抗争
正解はウの「死刑執行」の場面です。死刑囚が立っているバケツを執行人が蹴飛ばせば、死刑囚はそのまま首つりとなりますね。あるいは首つり自殺をイメージすることもできるでしょう。この場合、バケツを蹴飛ばすのは自分です。ちょっと怖い表現です。
でも⑩⑪は死をポジティブにとらえた表現です。⑩は「より良い場所へ行く」です。the better place(より良い場所)と言っています。the は「特定のもの」指すときに使う単語ですので、間違いなく「天国」を表すのでしょう。日本語の「天に召される」に相当するのでしょうね。ただ「召される」という受け身的な言い方でなく、 「行く」と能動的に表現するとことに英語の「死」に対するポジティブさ」を感じます。
⑪は「穏やかに休む」という意味です。過酷な人生を生き抜いてきた死者に対する労りとリスペクトの気持ちを感じさせる表現です。例えば、長らく地球を守り抜いてきたウルトラマンがその命を終えるとき、私たちは、"You did a good job for us, ULTRAMAN. Rest in peace!(地球のためにありがとう。ゆっくりお休みください)といった感じです。
以上、英語の世界の「死」についてほんの一部ですが紹介しました。英米人と日本人の発想の違いや共通点などに触れれば、一つの感動があるものです。楽しんでいただけたら光栄です。
なお、「死」と同様にデリケートなトピックには、英語も日本語同様に様々な表現が駆使されます。例えば「(大便、小便などの)排泄行為」、「妊娠」「出産」「性行為」「愛情表現」などです。またどこかで特集しますね。
私も60代半ば近くを迎え、人生の3分の2以上を生きてきたと思っています。関わった多くの人から Rest in peace! と言ってもらえるような生き方を今後もしていきたいと思っています。