忘れられない恋物語 : 想い出のカンタータ 13歳の時に初めて知った恋の悲しみ
僕が中学1年生の時、若くて綺麗な音楽の先生がいた。
恥ずかしくて皆には言えなかったが、僕はその先生のことが好きだった。
ある日、部活が終わり、音楽室の近くまで来ると
ピアノの音が聴こえて来た。
音楽室のなかを見ると、その先生がピアノを弾いていた。
僕は先生がピアノを弾く姿をずっと見ていた。
先生が僕に気が付いて音楽室から出て来た。
僕は、どうしよう、と思っていた。
ところが先生は、僕のところへ来ると微笑みながら
「1年4組の鈴原君ね。音楽が好きだったのね。」
と言って、僕を音楽室のなかに連れて行ってくれて
ピアノの前の席に座らせてくれた。
そして、先生が弾いていた曲を、最初からもう一度
弾いてくれた。
僕が曲名を聞くと
バッハのカンタータの第147番
主よ、人の望みの喜びよ
と教えてくれた。
家への帰り道、走りながら、
その長い曲名を何回も心のなかで繰り返していた。
三学期の終業式の時、
他校に転任されて行く先生方のなかに
その先生の姿があった。
僕は家に帰るとヘッドホンを耳に当て
ずっとビートルズを聴いていた。