嬢をめぐる冒険(N#15)
プレイの後は彼女は「手を洗ってくるね」と言ってバスルームに向かったが戻ってきた時には髪も濡れていた。そして脱力している僕の身体も拭いてくれた。拭き終わると「髪を乾かしてくる」またバスルームに入っていった。
やはり髪まで汚れてしまったようだった。そのとき僕は魂を抜かれた放心状態だったので気にかけてあげることは全くできなかった。今になって彼女の言葉を思い出し、そうだったのだと思っているだけだ。
まだ時間があったので布団をかけて二人で横になった。彼女も僕も目を瞑りながら話していた。お互いに寝落ちてもおかしくないほどだった。
「帰りはちゃんと車運転できるかな」笑いながら僕は言った。
「東京の時と同じですね」
「まあ運転慣れてるからね」
「回遊魚みたいですもんね。泳いでいないと死んじゃうみたいな」
「前にそう言ったかもしれないね。マグロだよ」
「最初だってあの大雪の日だったんですから。普通は来ないですよ」
「そうだったね。むしろ人が来ないからチャンスと思ってさ」
「隣県のイベント行って、朝に帰ってきた夜にも会いに来ましたもんね」
彼女は会った時のことをちゃんと憶えているようだった。
「120分が6回。もう10時間以上、一緒の時間過ごしているんですよね」
「それは長い?」
「多くても3、4回が普通かな」
「時間の使い方が人と違うんだよ」
正しくは120分が4回、90分が2回、120+30分が1回だった。彼女は90分から上はロングコースと言っていた。僕は90分はロングコースだと思っていなかった。彼女からすればロングコースが6回は他の人間とは違うのだろう。
ポジティブに捉えて良いのかネガティブに捉えて良いのかわからなかった。
「長く一緒にいても大丈夫ですよ」
と言ってくれているようにも
「もうそろそろ終わりにしませんか?」
と言われているようにも聞こえた。