切り抜きコマでツッコミ大丈夫?
切り抜きコマは通報案件です
SNSでよく見かける「漫画(アニメ)」切り抜き。
これ、基本的に違法です。
というか適法に使われているものをほぼ見たことが無いです。
まず著作物を無断転写(コピー・写メ・スキャンなど)してSNS等で利用すること自体が違法です。
ごく一部の「例外」を除きますが、例外については後述します。
まず、親の顔より見たやつを例示しておきます。
このおっさん、もはや知らない人が多いと思うので解説動画を雑に貼っておきますね。
ツイートをスクショして貼り付ければ分かりやすいのですが、もちろんそれも違法ですし、違法性の話をしている場には不適なのでご容赦ください。
もちろんこのおっさんの切り抜きも明らかに違法コピーです。
ではどういう条件なら適法に画像を転写することが許されるのでしょうか?
まず著作権保護対象では無いもの。
著作者の死後70年以上経過した著作物や、レストランのメニュー、時刻表等は著作権で保護されません。
じゃあミッキーマウスの著作権もいずれ切れるのでは?と思いますよね。
実は初期のミッキーマウスの著作権は既に切れているはずなのですが「ミッキーマウス延命法」とも言われる悪名高き法改訂により、未だに保護され続けています。
文化庁による「著作物が自由に使える場合」には多くの項目があるように見えますが、この場合関係あるのは「第32条 引用」のみです。
漫画やアニメは基本的に著作権保護対象なので、「引用」の条件を満たさない利用は違法となります。
なお「フリー素材」は使用条件を満たせば無償で利用出来ますが、著作者人格権に基づき改変などに制限がある場合があります。
引用と見なされる条件は以下になりますが、これを「全て」満たす必要があります。
引用部分がメインでは無い
引用部分が明確である
引用を行う必然性がある
引用元を明記すること
主にこの4点となります。
まず1点目「引用部分がメインではない」
法律的な言い方をすると「主従関係が明確であること」となります。
オリジナルであるメイン部分(主)と引用部分(従)の関係が明白に分かる必要があり、漫画のコマだけを貼るツイートや、1〜2行のコメントを添えるのみでは漫画のコマが「従」となりません。
2点目「引用部分が明確である」
文章であれば””(ブロッククォート)で囲む、フォントを変えるなど明示の方法が確立していますが、コマの場合は分かりやすく色を決めた太枠線を付けるなどの方法が考えられます。
3点目「引用を行う必然性がある」
ここがハードルが高い部分です。「このコマを使うと面白いから」「このコマが状況に最適だから」では必然性があるとは認められません。
あくまで「主」を説明するために「従」を例示する必要がある場合に限られると考えられます。
例えば鬼滅の刃の「炭治郎のだんだら」が集英社により商標出願(拒絶)された話を説明するのに「羽織を着た炭治郎」のカットを入れる場合が考えられます。
※今回は「引用」の実例として引用要件の説明部分を「主」とする判断で引用させていただきました
4点目「引用元を明記すること」
「鬼滅の刃 ○巻より」等、どこから引用したのか明示することが不可欠です。「引用元を書けばOK」と思い込んでいる人がいますが間違いです。
この4点をクリアすることはハードルが高く、ツイートで「引用」することは不可能に近いことが分かっていただけるでしょう。
セリフ貼り替えの問題
さらに問題が起こりやすいのが「コマの改変」です。
セリフを書き換えたり、キャラの顔を実在の人物の写真に貼り替える「コラ」などがこれに当たります。
著作物には「著作者人格権」があり、この中の「同一性保持権」によって著作権者は自己の作品を改変されない権利があります。
特にキャラクターのイメージを損なうような改変は著作権者の心証を害する場合も多いと想像出来ます。
人物写真は「肖像権」「パブリシティ権」に抵触する場合があります。
ただし「セリフ改変コマ引用」が適法となる場合があります。
講談社・小学館が協同で運用するアプリ「コミコミ」では指定のコマになりますがセリフを改変したコマを製作し使用することが出来ます。
※アプリは無料ですがアプリ内課金があります。
コマは限定になりますが、利用が可能になるサービスもあります。
コマ盗用だと思って指摘したら適法である場合もあるのでご注意ください。
とりあえず引用元明記してないのは全て違法だと思っていいです。
著作権法違反は親告罪なので大丈夫
「親告罪」は被害者の訴え(告訴)が無ければ「公訴提起(起訴)」出来ない犯罪です。
それは「犯罪ではない」という意味ではありません。
例えば、ほんの5年前まで「強姦」は親告罪でした。
被害者が訴えなければ強姦は無罪ですか?
現在でも未成年者誘拐罪等は親告罪ですが、SNSで知り合った中学生を連れ回すことも親権者の訴えが無ければ無実でしょうか。
漫画などを無断コピー・二次創作利用した場合、公表した時点で民事上の責任は発生しています。もちろん「著作権法違反」という犯罪も成立しています。
著作権者の「お目こぼし」という表現は好きではないのですが、現状として二次創作も含めて作品の利用(使用)は違法行為ということが出来ます。
みんなやってるのに違法なんておかしい!と言うのは分かります。
著作権法上、著作物の利用には原則的に事前に著作権者の許可(ライセンス)を受けることが必要で、「無断」での利用は違法であると言うことです。
その違法行為を「みんなで渡れば怖くない」でやっているのが現状です。
解決策はあるのか
音楽の場合は著作権管理団体JASRACやNexToneのお陰で二次利用(他人の楽曲の演奏など)が簡単に出来るようになっており、使用料もきちんと著作権者に届くようになっています。
ライブハウスでの演奏は基本ライブハウスがJASRAC等と契約しているために演者はJASRAC取扱曲であればコピー曲を著作権者の許諾や使用料を気にすること無く「適法に」利用出来ます。
JASRACが音楽利用を阻害しているという誤解が根強いですが、JASRACは音楽を利用しやすくしている団体です。
音楽を不正に、著作権者に支払うべき使用料を支払わずに利用している人はJASRACを悪し様に言いますが、それは脱税者が税務署を嫌うのと同じことなので耳を傾けてはいけません。
切り抜きコマ利用や二次創作を適法化するには、漫画・アニメ版JASRACのような著作権管理団体を作るしかないと思います。
現在の「黙ってやってくれ、黙認するから」の歪つな状態を是正し、著作権者に正当な使用料が入るようにするには公正な団体の設立が必要だと思います。
罪をもって罪を制す
切り抜きコマは違法だとさんざん説明しましたが、糾弾する意図はありません。世の中には、多種多様な切り抜きをストックして当意即妙に切り抜きを瞬時に貼り付ける「切り抜き職人」もいます。
SNSの文化として発展したもので、その漫画を知るきっかけになることもあります。そのためにも、せめて出典の明記はお願いしたいです。
僕が切り抜きコマを見て何だかなあ、とモニョモニョするのは、否定的・批判的にコマが使われている場合です。
特に著作権や商標権の侵害に対して切り抜きコマで誹謗中傷していたりすると「どの口で」「ブーメラン」としか言いようがありません。
作者も決してそのように利用されることは本意では無いと思います。
ましてやセリフが本来とかけ離れたものに改変されているならば…
将来、切り抜きコマや二次創作の著作権使用料が正しく作者に届くシステムが出来ますように。
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