小池百合子とブラックバス
2022.07.15加筆訂正 6362文字
みんな大好き小池百合子さん。あまりにも事実誤認がひどいのでブラックバスとの関わりをまとめてみました。
バス擁護への反論はこちら
リリース禁止は小池百合子のせいだ!許せん!
リリース禁止は各都道府県の条例などで定められており、小池元環境大臣は関係ありません。
ちなみに琵琶湖がリリース禁止になったのは外来生物法に先立つ2003年で、滋賀県議会での可決は小池さんが環境大臣に就任する前の2002年です。
全国で一番早くリリース禁止に踏み切ったのは新潟県でなんと1999年のことです。
この事実から分かることはバス擁護派には伝聞の情報をファクトチェックをすることなく、人物や団体を口汚く罵る品性をお持ちの方がいらっしゃるということです。
リリース禁止は条例で決められたものだから守る必要はない
条例で逮捕されることは無いと大真面目に説くバス擁護派の方もおられますが、条例も法令であり普通に逮捕されます。痴漢も盗撮も法律違反ではありません。基本は迷惑防止条例違反で逮捕・処罰されます。
罰則のない条例は京都市の日本酒乾杯条例のように啓蒙・消費促進を目的とし努力目標となっているものが一つです。
もう一つは諸般の事情により罰則の設定は出来ていないが守らなければならないルールです。
滋賀県「琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」では、
第18条 レジャー活動として魚類を採捕する者は、外来魚(ブルーギル、オオクチバスその他の規則で定める魚類をいう。)を採捕したときは、これを琵琶湖その他の水域に放流してはならない。
と明確に定められており、文言を法的に解釈すれば法的拘束力が生じると思います。
YouTubeでドヤ顔で条例なんか守る必要が無いと公言している人達の言い分を聞いていると、法律・法令・政令・省令・条例の区別がついていない人が多くて正直驚きます。
罰則がないから法令を守らなくて良いと法令違反を推奨することなど、まともな大人であれば恥ずかしくて出来ません。
罰則が無いからと利息制限法を守らなかったサラ金はどうなりましたか?
日本三大メンツにこだわる人種は役人・政治家・警察、次点でヤクザです。
罰則が無いからとこれ見よがしにリリースしていたらどうなるか、想像出来ませんか。
特定外来生物指定は小池百合子の独断で決まった
政治ってそんな単純なもんじゃありません。
擁護派は「バスは指定を外れるはずだったのに小池百合子のせいで指定された」
と批難しますが、そんな事実はありません。
外来生物法が公布されてから第1次リストが決定されるまでバスが指定から外れる方向に向かったことは無かったと思います。
最初に言っておきますが、外来生物法はブラックバスを規制するために作られたと言っても良い法律です。
要するにブラックバスが第1次リストから外れるなんて本来あり得ないし、あってはいけないことです。
擁護派の皆さんがすぐ持ち出してくる100万人署名ですが、まず目的が公認釣り場の増設であり、外来種指定とは外れています。
さらに組織的な署名集め、不正署名についても指摘されています。
だいたい提出先が水産庁となっている時点で目的が全く違います。
それでここからが一番大事なんですが「署名は民意を表さない」んです。
署名をクレームと捉えて対応することはあり得ますが、リコールなど法で規定されたもの以外は対応する必要はなく、対応することはむしろ民意をねじ曲げることになりかねません。
ここから指定までの流れを説明していきます。
2003年9月に小池さんが環境大臣に就任。翌2004年6月に外来生物法公布。
この時点では小池さんはほぼタッチしていないと思われます。
前述の通りこの法律の本丸はバスであり、指定されないはずがありません。
同年7月にパブコメの募集があり、バス擁護派が96%を占めています。
漁業関係者からは自分たちにパソコンを使える人があまりおらず、電子メールなどを駆使してテンプレートを使い回す擁護派に対する敗因分析がなされています。
パブコメというのはもちろん投票ではなく、数にはあまり意味がありません。
コメントの内容にこそ意味があり、テンプレ通りのコメントが並ぶ擁護派があまり評価されなかったことがうかがえます。
要するに田代砲にすぎませんでした。
当然このパブコメの結果に関わらず専門家会合で着々と指定に向かっていきます。
その潮目が変わったのはおそらく11月頃。
環境省はブラックバスだけを個別に検討する小委員会を設置します。
要するにバスに関しては一筋縄でいかないと本腰を入れてきたのです。
何が起こったのか?もちろん推測ですがほぼ間違いないと思います。
バス擁護派による政治介入です。
ブラックバスについて検討する小グループ(以下小グループ)には指定反対の本丸・(財)日本釣振興会と(社)全日本釣り団体協議会が入り、日釣振のバックには釣魚議員連盟が控えています。釣魚議員連盟は表向けは釣り好き議員の親睦団体となっていますが、実態は釣りに関する業界の意向を国政や行政に反映させることが目的です。麻生太郎元総務相を筆頭に閣僚経験者が9人、メンバーは自民党を中心に40人。
何としても指定を逃れようと最強の布陣で環境省に立ち塞がりました。
まずは11月のオオクチバス小グループの議事録より抄録します。
もうバス擁護派こてんぱんです。滅多打ちです。
これらに対して擁護派からは、拙ブログで論破した根拠のない発言しか出てきていません。
そこから会合を繰り返し、1月に小グループの委員(おそらく研究者)から「そもそも法の最大の目的はブラックバス対策。全国の湖沼のほとんどにバスが生息し即座に対応しなければならない状態」というコメントが飛び出します。このコメントが出てくる意味は明白で、政治圧力により指定が遅れそうだという危機感からです。
その危惧通り、19日の会合で指定を半年見送るということが決まってしまいます。
これも推測ですが、どうしてもリストに入れたい環境省と、絶対入れさせるわけにはいかない擁護派(国会議員)の間で手打ちがあったのだと思います。
半年後は指定することを前提に半年先延ばしにする。
議員は業界団体には半年後指定外しになると説明してお互いのメンツを保つ、ということだと推測しています。
その日本らしいズブズブの政治劇に颯爽と現れたのが小池環境大臣です。
大物議員と高級官僚が長い時間をかけてギリギリのラインで決着したわずか2日後、21日の午前に「そもそも、外来生物法の目玉がこのオオクチバスでありますので、指定を回避するというのは批判をされても仕方がない」とちゃぶ台を思いっきりひっくり返す発言をします。
閣僚経験者はじめ居並ぶ大物議員のメンツは丸つぶれですね。
普通なら4選、初閣僚の中堅議員が出来るようなことではありません。
当時党内で恐怖政治を振るった小泉総理と結婚が噂される程の、まさに蜜月であったからかもしれません。
余談ですが翌年小泉総理は郵政民営化解散で逆らった議員に刺客を立てて葬り去り、党内を震え上がらせました。
郵政民営化に反対した議員に刺客を立てることを聞いた小池さんはすかさず総理大臣秘書官に電話を入れ、かねてから鞍替えしたかった東京の衆院議員で反対票を投じた小林興起の刺客として立つことをアピール。
大差で小林を破っています。抜け目ない鮮やかです。
その日の午後に専門家グループ会合があり、26日に実質的な決定の場となる自民党環境部会・自然環境保全に関する小委員会が開かれるのでぎりぎりのタイミングですが、相手方の反撃の準備をさせない意図があったのかもしれません。
結果として半年延ばしの流れはひっくり返り、31日に発表された候補種第1次リストにバスは入りました。
何故小池さんは鶴の一声で合意をひっくり返したのでしょうか。
擁護派の皆さんは何も考えずに人気取りだと喚きますが、では誰に対して人気取りをしているのか聞いたら多分答えられる人はいないでしょう。
環境省内部から大臣何とかして下さいと泣きつかれたのか、自然保護NGO・NPOから陳情があったのか。
これも誤解している人が多いのですが、「口利き」は政治家の重要な職務です。もちろん違法ではありません。
まあ今回の場合、明らかに強烈に政治介入しているのはバス擁護派です。
代議士にとって何より大切なのは票なので、この一件で小池さんの評価がどうなるか考えてみましょう。
バス釣り愛好家(自称300万人)+バス業界関係者からは親でも殺されたような強烈な憎悪を受けました。
逆にこの「英断」を評価するのはごくわずかな内水面漁業関係者(琵琶湖の漁業関係者は約2000人と言われています)とこれまたわずかな自然保護に強い関心がある人ぐらいでしょう。
どう考えても「人気取り」ではなくて人気を落とす行為ですよね。
ともあれ、小池百合子が指定除外になるはずだったバスを強引に指定させたという事実はありません。
小池さん自身がバス問題を憂いて発言した可能性は非常に薄いと思います。議員として、都知事としての行動言動を見る限り、そんなことに関心を持つとは思えないからです。
現実として小池さんの行動がバス擁護派からは裏切りとみられたため、擁護派と規制派の信頼関係は完全に崩れ擁護派の協力が完全に得られなくなりバス問題はこじれにこじれました。
バス擁護派からも規制派からも「いらんことしやがって…」と恨まれる所以です。
また擁護派がよく口にする「小池百合子は指定反対派が圧倒的多数だったパブコメを無視した」ですがこれも事実無根です。
1月31日の第2回専門家グループ会合で特定外来生物候補種第1次リストが発表
され、事実上バスのリスト入りはここで確定しています。
パブコメが募集されたのは第1次リスト確定後で特定外来生物としてどう運用していくのが相応しいかを問われているのに、組織的なテンプレート回答で「指定反対!」と喚いても相手されるはずがありません。
実際113792件中反対95620件と圧倒的多数ながら環境省は「結論を変更する必要はない」と断じています。
後は手続き通りに粛々と進み、無事6月1日にバスを指定対象とした外来生物法は施行されました。
決定後の9月に、内閣府による調査「自然の保護と利用に関する世論調査」が行われ、外来生物駆除に賛成する人が9割を超えるという「あれれ〜おっかしいぞ〜」案件が発生しています。
この調査はバスを含む外来生物に関する調査で、全国の大都市から町村まで様々な都市規模から無作為に抽出した3000人(有効回答数1834人)に対する個別面接聴取によるものです。
調査としてはこれ以上ないほど正確なものと言えます。
つい筆がのって長くなりましたが、バスの指定までの流れはある程度追えていると思います。
関係ないですが私は小池百合子が大嫌いです。政治家で一番嫌いです。
この人は火事場泥棒、よく言って政治屋でしかありません。
初の女性宰相を虎視眈々と狙っているのが見え見えで、絶対首相にしたらあかん人物だと思っています。
以下にバス特定外来生物指定までを時系列にしてみます。
1999年 新潟県が新潟県内水面漁場管理委員会指示第1号によりリリース禁止(オオクチバスも含むリリ禁は全国初)
2000年9月10日~同年12月末日 (財)日本釣振興会が主体となり、ブラックバスの公認釣り場の増設を目指して署名運動
2001年3月 日本釣振興、1,079,409名(日釣振発表)の署名を水産庁長官・次長に提出
2002年10月 琵琶湖リリース禁止条例成立
2003年9月 小池百合子環境大臣就任
2004年6月 外来生物法公布
時期不明 第1回パブコメ 擁護派7785件、規制派315件
2004年10月27日 第1回専門家会合
2004年11月 環境省がブラックバスだけを個別に検討する小委員会を設置
2004年11月12日 第1回専門家グループ会合(魚類)
2004年11月26日 第1回専門家グループ会合(魚類)オオクチバス小グループ会合
(以下オオクチバス小グループ)
2004年12月7日 第2回オオクチバス小グループ会合
2005年1月12日 第3回オオクチバス小グループ会合
2005年1月 専門家会合の委員による発言「そもそも法の最大の目的はブラックバス対策」
2005年1月19日 第4回オオクチバス小グループ会合「調査委員会を設置して防除法を議論、半年をめどに指定に向けた検討を進める」との報告をまとめることで合意
2005年1月21日午前 小池百合子環境大臣発言
により指定先送りの方針を見直し、六月に予定している法施行時点で指定を目指すことを決定「そもそも、外来生物法の目玉がこのオオクチバスでありますので、指定を回避するというのは批判をされても仕方がない」
2005年1月21日午後 第2回専門家グループ会合(魚類)
2005年1月26日 自民党環境部会 自然環境保全に関する小委員会(事実上の特定指定決定の場)
2005年1月31日 第2回専門家グループ会合 特定外来生物候補種第1次リスト発表
2005年2月3日〜3月2日 環境省、パブコメ募集開始
113792件中反対95620件ながら環境省「結論を変更する必要はない」
2005年4月5日 第3回専門家グループ会合 ブラックバスを含む第1次リスト決定
2005年4月5日 自民党環境部会 自然環境保全に関する小委員会
2005年4月22日 閣議決定
2005年6月1日 外来生物法施行
2006年9月 内閣府による調査「自然の保護と利用に関する世論調査」において外来生物駆除に賛成する人が9割を超える(バスを含む外来生物に関する調査・全国の大都市から町村まで様々な都市規模から無作為に抽出した3000人(有効回答数1834人)に対する個別面接聴取による)
オオクチバス小グループ会合参画メンバー
指定反対
(財)日本釣振興会(会長 麻生太郎総務相)←釣魚議員連盟(会長 綿貫民輔元建設相)
(社)全日本釣り団体協議会(会長 亀井善之元農水相)
研究者1名
指定賛成
全国内水面漁業協同組合連合会(会長 桜井新元環境庁長官)
研究者4名
いかにバスに関してデマが多いか分かっていただけたと思います。
著名なバサーで今でもデタラメをYouTubeなどで垂れ流している人もいます。
「ブラックバスは悪者ですか」でも基本エビデンスのある情報を参考にしていますが、推察の部分ははっきりそう分かるように記述したつもりです。