外来生物よもやま話
アカミミガメ逃がさないで!
2022年5月11日、参院本会議で改正外来生物法が可決・成立しました。施行は来夏を予定しています。
この改正で新たにアカミミガメとアメリカザリガニを例外つきで特定外来生物指定することになりました。
その例外は輸入・販売・運搬などの特定外来生物への規制のうち、捕獲や個人による飼育・無償譲渡を認めるものです。
両種はペット等として飼育されている頭数が多く、飼育を規制することで野外に逃がされることを懸念しての特例です。
ところが早速アカミミガメの飼育放棄が増えているようです。
ニュースは最後まで見ようよ…
というか、多くの報道では見出しが「家庭での飼育容認」なんですけど。
情報を伝えるのがいかに難しいかと言うと、この見出し見て「今まで飼育出来なかったのか」と言っている人がいます…
ちなみに現時点では「法律としては」まだ効力がありません。
法律は必ず成立(衆参両院で法律案が可決)→公布(天皇陛下によって一般に周知)→施行(効力を持つ)というプロセスを経ることになっています。
現在改正外来生物法は5月11日に参院通過(成立)し公布待ちだと思います。正確な施行日は公布と共に発表されるはずですが来夏予定です。
来年までは適法だからと言って飼育放棄するのはやめましょう。
「命に責任を持つこと」は目の前からいなくなればいいのではありません。
どうしても飼えない、飼ってくれる人が見つからないなら殺処分することが責任を持つことです。
殺処分法は出来ればー20度以下の冷凍庫で48時間冷凍することが推奨されており、環境省は今後安楽殺・殺処分について周知していくとしています。
アメザリとその他の外来ザリガニ
今回の改正でアカミミガメと一緒に例外付き特定外来生物指定されたのがアメリカザリガニです。
アメリカザリガニによる水棲昆虫や両生類への被害はよく知られていますし、水草を根こそぎ食べてしまう影響が大きいです。
環境省がめちゃめちゃ頑張って作ったアメザリくんが面白いですよ。
ちなみにあまり知られていませんが、アメリカザリガニ以外の外来ザリガニは全て2020年に特定外来生物指定されています。
もちろん飼育も出来ません。といっても日本ではロブスターみたいでかっこいいウチダザリガニ(タンカイザリガニ)が北海道を中心に冷水域で定着しているのみです。
ミステリークレイフィッシュやヤビーなどペット・観賞用で流通していたものもこの時から飼育出来なくなりました。
なお許可を受けていたとしても特定外来生物の繁殖は出来ません。
繁殖に関しては例外規定が無いのでアメリカザリガニも繁殖させることは出来ません。
魚や爬虫類の生き餌としても流通していますが、冷凍物のみということになります。
タイゴーストなど美しいアメリカザリガニ改良種も飼育は出来ますが繁殖・販売が出来ないので数年のうちに飼育個体はいなくなるはずです。
アメリカのザリガニと言えばアメリカザリガニと考えてしまいそうですが、アメリカには死ぬほどザリガニの種類があります。
男の子大好きザリガニ釣りですが、持って帰ってきてしまうと飼うか殺処分するしかありません。
キャッチアンドリリースするように教えてあげてください。
バス釣りが禁止になる日
そんなことありえないと言うかもしれません。
もちろんすぐすぐにという事はないですが、「これしか打つ手が無い」というところまで国や自治体を追い込めば立法に向かうことはあり得ます。
といっても地方自治体(滋賀県など)が条例で決めても業界団体などが憲法違反訴訟を起こすはずなので、決めるとすれば法律になるでしょう。
国が追い込まれるとはどういうことか?
「違法(密)放流」です。
宮城県の伊豆沼・内沼付近のため池で池干しをしてバス・ブルーギルを根絶した2年後、多くのバスの稚魚が確認されました。
状況から違法放流の可能性が高いとされています。
釣りがしたくて放流したと言うより、いくら駆除しても無駄だという示威行動に思えます。
これからさまざまな手段でため池などの閉鎖水系で外来魚を根絶し生態系を回復しようとしているのに、いたちごっこになっては打つ手がありません。
密放流を防ぐのはテロを防止するのと同じで、守る方は24時間365日全方位全箇所守らなければならないのに、破る方は一瞬の隙を突くだけです。
全国のため池や河川、湖沼を守るのは不可能です。
そうなると何が出来るか?
違法放流の動機を無くすしかありません。
バス釣りが悪いとは国も行政も、バス規制派の多くも思っていません。
ただバスは、大げさに言えば国を守るために駆除が必要なのは明らかです。
15年前、特定外来生物指定について議論していた場でゾーニングについて「そのルールが絶対に守れない」として切り捨てられましたが、その後バス擁護派はその不名誉な言を証明し続けて来ました。
バサーがルールを守りさえすれば管理バス釣り場を増やして、生態系を守りながらバス釣りを楽しめるようになります。
バスを釣って鮎を守ろう
山形県白鷹町では特産の鮎を守るために天敵であるブラックバスを買い取る釣り大会が開催されており、今年は3年目となります。
5月15日〜10月31日までの日程で、同町の最上川で開かれます。
先着100人の事前登録制とし、1800匹を上限に1匹300円で買い取るとのこと。
釣ってバス駆除!三方よし!
釣ったバスを管理釣り場に入れて有料でバス釣りが出来ればさらに良しだと思いますが、いろいろいろいろ難しいでしょうね。
山形新聞より
不妊魚で外来種を駆除する
何故かバス擁護派が提案することが多い駆除策です。
要するに、「どうせ無理」「有効なのに何でやらないの」という嫌がらせ話法ですね。本当に実用化されたら遺伝子操作の安全性がーと反対に回るのはみんな知ってます。
バスに関しては研究が見つかりませんでしたが、ブルーギルに関しては実は実証段階まで進んでいます。
順調であれば3年位前に野外での実験に移っていたはずなのですが、環境省から管理区域での実証実験を求められました。
じゃあ実験すれば、となりますがまさかの理由で進んでいないようです。
「実証用のプールを作るお金がない」
全国でブルーギルの防除に使われているコストを考えれば優先して予算をつけるべきだと思うのですが…
おそらく日本人の遺伝子操作アレルギーも影響しているのだと思います。
今回はよりリスクの少ないゲノム編集ですが、違いが分かる人は少ないですよね。
不妊魚の放流量により十数年から30年程度で琵琶湖で根絶可能とのシミュレーション結果が出ています。
池干し以外では唯一の根絶法だと思われます。
<環境視点>ゲノム編集で外来魚駆除
在来魚の絶滅の実例
大阪近郊のあるため池の実例です。
2000年頃までこの池には外来魚がおらず、モツゴ・メダカ・スジエビ等が豊富に見られたそうです。
2001年頃からバス・ブルーギルが確認され、直後から小魚が全く見られなくなりました。
2006年に池の水ぜんぶ抜いて池干しし、外来生物の根絶を目指します。
ちなみに某番組、いろいろと悪評もありますが池干しをしているのか気になります。池干ししないと外来生物の根絶は出来ません。
池干しで生物の検証をした結果、バスが9尾、ブルーギルが数百尾、ニシキゴイ1尾、ヘラブナ15尾のみで、在来種は小魚小エビ1匹すら見つからず、完全に根絶していました。
外来魚移入前は地元住民が採っておかずにするほど豊かだった在来種群がわずか数年で食い尽くされたのです。
これが擁護派の言う「一定期間後に安定する」ということです。
バスの数が少ないのは閉鎖水系で完全に餌を食い尽くしたため個体数が減ったと考えられます。実際、捕獲されたバスは非常に痩せていたそうです。
琵琶湖を戻す会 池干し駆除レポート
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