大企業のオフィスは地雷原
大企業のオフィスビルの警備をやっていた頃に仲良くなった派遣社員がいます。
彼女は桃子さん(仮名)という方なのですが
先に断っておきますが、彼女とは普通に趣味の話で盛り上がって仲良くなった飲み友達なので、変な関係ではありません。
つい先日も彼女とぼくの前職の同僚たちと3人で飲みに行って来ました。
彼女の今の就業先はとある中小企業での営業事務だそうですが、大企業に派遣されていた頃と比べるとかなりストレスがなくなったと聞きました。
ぼくら警備員から見てると、オフィス内で働いてる人たちはなんかキラキラしていて楽しそうに見えてたんですけど…超ホワイトで有名な会社ですし。
でも現実はそうでもなかったようです。
彼女が派遣されていた部署にはリーダー格の女性正社員とその取り巻きの女子社員がいて
昼休みになるとそのリーダーを中心に女子社員全員がぞろぞろと連れ立って社員食堂に行くのが日課なんだそうです。
その【ランチメンバー】には、その部署に派遣されている派遣社員達も含まれていたそうで、断れない雰囲気だったと言います。
昼メシくらいはのんびりと食いたいと思いますんで
僕にはそういうのは理解できません(笑)
桃子さんの話は続きます。
昼食後は、お菓子配りという物があるらしく、
ランチメンバーの中の「お菓子当番」が、メンバー全員分のお菓子を配ってみんなで食べるという暗黙のルールがあったそうです。
お菓子当番は何日かおきに交代で回ってくるそうですが、
まあやっぱり、天下にその名を轟かせる大企業ですからね、「お菓子」も百貨店で売っているようなハイグレードなものが好まれるそうです。
スーパーで売ってるファミリーパックのお菓子なんかではだめなんだそうです。
あからさまにだめとは言われないけど、社員達がデパートの高級菓子を振舞ってる中で自分だけがファミリーパックのスーパーのお菓子、なんて状況だと……面倒くせぇなあ(呆)
正社員たちは高級取りが殆どなので(30代の年収は700〜850万円くらいらしいです)デパートの高級菓子でマウントの取り合いをしてても財布はさほど痛まないんでしょうけど、
給料が安い派遣社員たちには結構な負担になっていたようです。
大企業とはいえ、派遣社員の月収は手取りで20万円あれば良い方だそうですから。
しかも派遣にはボーナスもないですし。
週に一度、10,000円弱の出費(しかも自分がメインで食べる訳でもないお菓子)があるのは相当キツかったそうです。
ぼくと元同僚のハンチョウ君(当時の彼が班長だったので、某漫画のキャラクターよろしくハンチョウと呼んでいます)
は半ば呆れながらも
「派遣の人たちは弁当持参とかにすれば良かったんじゃないの?」
と聞いてみました。
確かに桃子さんも、生活費の事を考えたら弁当にしないとやりくりがキツい、と思っていたそうですが
そこの部署にはユリカさんという、いつでも独りぼっちの女性社員がいたそうで、桃子さんは
「ユリカさんみたいになるのは怖いから」
と言いました。
ユリカさんとは、勤続15年くらいの社員で
小柄で華奢な人で、キラキラ系女子やゴージャス系女子みたいな陽キャ系とかバリキャリ系が割と多いその会社では珍しく、かなり地味で飾りっ気のない女性社員だそうです。
彼女は、桃子さんのいた部署のリーダー格の晴美さん(ゴージャス系)の2年先輩で、新卒で入社してからはずっと経理部門の部署にいたそうですが、そこの部署に異動してきたのが5年くらい前。
ユリカさん異動して来た時には既にその部署には【社食ランチ会】があったそうで、
というより元々その部署に代々伝わる慣習なんだとか。
で、当時のボス格の女性社員がユリカさんをランチ会に誘ったところ
「お誘いは嬉しいのですが、今日はお弁当を持参していまして…」
と断ってしまう…いや、完全に地雷を踏んでしまった様で
その日から彼女はイジメのターゲットになってしまったそうです。
イジメといってもロッカーにカビパンとか
私物を隠されたり、なんて幼稚なものではなく
あるいはネチネチといびられたりイヤミを言われるというものでもなく
部署の女子社員全員がユリカさんをいないものとして扱うようになったそうです。
といっても完全にシカトしたり口を聞かないというような事はなく、仕事上必要な会話はするけど
基本的にユリカさんはいないものとして扱う、みたいな絶妙なラインを攻める際どい感じの扱いなんだそうです。
やっぱり、大企業ですからコンプライアンス意識も高いですし、あからさまにやり過ぎてしまうとアウトなので
ギリギリのところを巧みに攻めるやり方なんだそうです。怖いですね。
そして当時のリーダーは現在では執行役員に昇格したこともあり、次期リーダーの晴美さんに交代してからも続いていたそうです。
むしろ、晴美さんにリーダーが交代してから状況はもっとキツいものになったのだとか。
ユリカさんという見せしめの存在があることで、他の女子社員や派遣社員も戦々恐々として、晴美さんには逆らえないそうです。
その晴美さんとやらは、先代のリーダーのお気に入りでとても仲が良く、ゆくゆくは彼女も執行役員に上がるのではと専らの噂です。
はあ…これが大企業病とかいうやつなんですかね。
そんな毎日でしたから桃子さんはそこで就業している間は気が休まることがなく、円形脱毛症にもなったそうです。
しかも想定外の出費が嵩み、しまいには貯金を切り崩して家賃を払う事もあったりして
何のために働いてるんだかわからなくなったそうです。
でも、「超有名大企業で働いている」というだけで
何の役にも立たないメリット(?)の為と、初回更新しないと次の就業先が決まりにくいと派遣元の担当から説得されて一度目は契約更新はしたけど、さすがに2度目の更新は辞退して、そのまま契約満了で次の就業先にかわったそうです。
その際に
・ファミリー経営じゃない、地元ではそこそこ名の知れている中小企業が一番ストレスが少ない
・大企業は人間関係が超絶めんどいから絶対にパス!
と条件を絞って今の就業先に落ち着いたそうです。
みんな高時給に釣られて大手・有名企業や、大企業ばかり選ぶ傾向があるから、中小企業は意外と穴場で仕事が決まりやすいのだそうです。
しかも中小企業は、運が良いと正社員登用の可能性も高めだからほんとに穴場なんだそうです。
桃子さんの今の職場は、小ぢんまりとしている会社だけど離職率がものすごく低いので、求人は特に出していないそうです。
ここ数年、中途社員を採用していないそうです。
というより、派遣で来ている人の中で良いなと思う人がいたら
その人を引き抜くようにしているから採用活動は特にしていないそうです。
確かにそのスタイルは効率的かもしれません。
ぼくも採用担当をしているからわかりますが
面接の一瞬だけでその人がどんな人かを完璧に見抜くのは難しいです。
良いなと思って採用したらとんでもないやらかしマンだったから、できれば解雇したいけど一度雇ってしまったらそう簡単に解雇ができなくて苦しい、とか
採用した人自身に問題はなくても、いざ働いてみたら職場との相性が合わなくてすぐに辞められてしまった、とか
人を採用するのは本当に難しくて毎日毎日頭が痛いです。
ですが派遣なら1ヶ月単位で契約できますから、実際に就業して貰って、お互いにミスマッチであると感じたら
企業側は他の派遣社員に交代をお願いできますし
派遣社員側は契約更新せずに次の就業先を探す事ができますからね。
(いずれにしてもそんなに簡単な話ではないでしょうけど)
そして
「この人すごく良い!是非ともうちの社員として迎え入れたいくらいだ!」
と思えるような人材が来たら、直接雇用を打診もできますからね。
この辺りが中小企業の強みですね。
組織の規模が小さい中小企業ならそのあたりはスピーディーに決まるんでしょうけど
大企業だとそう簡単に行かないので、結果的に派遣社員は使い捨てとなるのが殆どですね。
運良く直雇用となっても契約社員というのが殆どで、契約社員になったらなったで、正社員登用という甘い餌で釣って上限年数まで飼い殺して、最終的には雇い止め、というが関の山でしょうねw
まあ、これは大企業あるあるでしょう。
逆に派遣社員の立場で考えても、派遣社員としてある程度その職場の業務内容や雰囲気も知った上で居心地が良いと感じているなら
そこの正社員になることで派遣社員という不安定な立ち位置から卒業できますし
年収も上がるし(その会社の基本給にもよりますが)
ボーナスも貰えるようになるのでメリットもありますからね。
ただ、警備の仕事は派遣社員にお願いができない職種なので無理なんですけど。