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やりたい仕事と現実のミスマッチを防ごう・その2

中途採用で見かける求人の多くは
・施設警備員
・交通誘導警備員
のいずれかが主流です。

また、新卒で入社してすぐの間は上記のいずれかの配属になり、そこで経験を積んでからエリートコースに進む、といったケースが多いと思います。

じゃあ、施設警備員や交通誘導警備員はテキトーに働いてもいいんだね?と思われるかもしれませんが、
テキトーな仕事をして、重大な事案を引き起こせば、最悪の場合は懲戒解雇になって完全に人生を詰む結果になる事をお忘れなく。

確かに、傍目から見れば
ショッピングモール内をボケーっとしながらウロウロしている警備員とか
工場の通用口付近の警備小屋で座りながらハナクソをほじることに夢中になってる年寄りの警備員とか
工事現場の入り口で置物みたいになってる警備員
焦点の合わない目でただ旗や誘導灯を振ってるだけの警備員
満車の看板を持ってただ突っ立ってるだけの警備員
タバコを吸いながら誘導灯を振る警備員

そんな人達を見ていると
「警備員ってあんなバカでクズな無能底辺でも務まるちょれぇ仕事じゃん?」
と思うのは無理もありません。

そして残念ながら、そんなクズ丸出しの警備員を目にする機会は多々あります。

ですが、そんなクズでも雇い続けないと会社の存続が危うい警備会社が存在するのも事実なんです。

それにどんなにあり得ないほどのクズでどうしようもないドカスでも、一旦採用してしまった以上はよほどの事がない限り、そう簡単に解雇にはできないものなんです。

勤務態度が不真面目である事を理由に簡単に解雇!なんてできないんです。


中小や零細の警備会社の中には、とにかく利益最優先となってしまい、欠格事由にさえ該当していなければどんな人間性の警備員でも、とにかくポストに配置さえしておけば会社に売上金が入ってくるので、そうしているだけという事が往々にしてあり得ます。

そしてまた、最低な人間性の警備員が多くいる警備会社は本当の意味で警備員として適格な人材や高いスキルのある人材が定着しづらく、集まりにくいです。

何もわからずに真面目に働く人がそんな会社に入ってしまうと、冗談抜きで地獄を見ます。

これは僕の実体験なんですが、新卒で入社した警備会社を退職した後に、とある中小企業の警備会社に入りました。

そこの会社は本業は交通関係の会社の子会社なんですが、そこの警備事業部に契約社員として入社しました。
他の事業部は正社員採用をしていますが
警備事業部の警備職(現場の隊員)だけは契約社員かアルバイトのみの募集でした。
まず驚いたのは、新任教育をちゃんとやらなかったことです。
研修期間は10日程ありましたが、研修内容としては、そこの会社の独自の研修…ブラック企業にありがちな、社訓や企業理念の唱和(2日目までに全文暗記して来いという)や大声を出す研修、社歌の練習、会社の歴史の映像を見てその気づきを作文にしたり、延々と偉いさんの講和を聞かされたり、あとはなぜか警備とは関係のない、営業車両の洗車とか
そんな事ばかりをやって、法定教育をやった事にしていました。

今思えばその時点で辞めて他に行くべきでした。

研修が終わってからはいきなり現場に放り込まれて
「あとは現場での実地研修です」
と、OJTも何もなく
「見てたら覚えるから。警備の仕事なんてそんなに難しくないし笑」
「時間まで正面玄関でただ突っ立ってるだけでいいよ」
で、終わりでした。
これならまだ、最初の会社の方がマシなんじゃないかと本気で思いました。

現場の隊員は60代の爺さんが2人、40代後半のおじさんが1人で、その内訳は

自称・学校の先生で、個人事業主もやっていたけど今は仮の姿として警備員をやっている、という60代前半
自称・自動車学校の校長で、経営していた教習所が潰れたから仕方なしに警備員をやっているという60代後半
元会社員で整理解雇されたから仕方なく警備員をやっている40代後半

隊長は常駐しておらず、内勤の物件担当の社員が隊長を兼任して、複数の物件の隊長もやっているという、妙な構成でした。

そういうのは隊長とは言わないと思うんですが。

いわゆる典型的な底辺警備会社で、社会からドロップアウトした人達の溜まり場みたいな会社でした。

「へぇ、君まだ20代で若いのに警備員なんて変わってるね。こんな仕事、若い子が好き好んでやる仕事じゃないだろう?んで、君はまだ若いのにいったい何をやらかしたの?どうせ警備員なんてやるくらいだから訳アリなんだろ」
初対面の挨拶がこれでした。

訳アリも何も、僕は警備の仕事が好きでやってるだけなんだけども。

そう言いたかったんですけど、それを言うのは場違いな気がしたので、黙って適当に流す事にしました。

その会社は他にも病院の警備や寺院の警備、学校の警備、駐車場の管理室など、あまり大きな仕事はなく、30人程度の警備員で細々とやっている様な会社でした。

その30人は僕を含めて全員、契約社員とフリーターで、正社員はいませんでした。

いずれの現場も高齢者が殆どで、50代・40代は若手、30代以下は殆どおらず、全員業務集会兼現任教育で集まった時には皆一様に覇気のない顔をしていたのが印象的でした。

この会社は定期的に全員業務集会という名目の集まりがあり、その際には非番の隊員は強制的に会社に集まる義務がありました。

全員業務集会と言っても、警備に関する業務連絡や研修などは一切行わず、社歌を歌わされたり、大声で社訓や企業理念の唱和を延々とやらされて、その後に偉いさんの講話(という名の「俺様スゲ〜!話」)をひたすら聞かされて、その感想文を3日以内に提出で、提出期限に間に合わないと罰金が徴収されるという、どブラックな仕様でした。

まぁ要するにブラック企業あるあるの「洗脳教育」ってやつです。というより、入社時の洗脳教育が解けない様に行う再洗脳教育という方が妥当ですね。

その日にシフトに入っている人は免除されますが、非番の人は強制参加で、参加しなかった場合は罰金が発生するシステムです。

一応、出勤扱いにはなるので日当は出ましたが、拘束時間に関わらず、交通費込みで一律3,000円という…

拘束時間はかなり長くて、ほぼ丸一日訳の分からない事を延々とやらされたり、精神修養の為だとかで何故か全員で社屋の掃除をやらされたりしました。

僕はトイレ掃除の担当だったんですが、清掃終了後には清掃チェックとやらがあり、指導教官とかいう人が難しい顔をして隅々までチェックするんですが、合格点に満たないと何度も何度もやり直しを命じられて、午前中はずっとトイレ掃除をやっていました。

なんでも、

「新品のようにピカピカに磨いた社屋で気持ちも新たに集会をしようではないか!」

「掃除は文化!最高の精神修養で身も心も磨こう!」

という事らしいんですが、単に清掃員を雇う金がないから従業員にやらせてるだけではないかと。

全員大清掃が終わる頃になると、ヨレヨレの服装のおじさんや若者達がぞろぞろと会社にやってくるんですが、彼らは「臨時警備員」という人達でした。

臨時警備員というのは、この会社独特のポジションで、お祭りなどのイベント時だけ仕事が来る、という非常勤の警備員の事です。

午後から研修(全員業務集会を現任教育という事にしている)に入るので、彼らは正勤者ではないから掃除が免除という謎ルールでした。

臨時警備員は制服貸与がなく、仕事が入った時だけ制服貸し出しになるので、現任教育の時には私服で参加しているのですが、スーツはもちろん、オフィスカジュアルの人すら皆無でした。

学生バイトのお兄ちゃん達はTシャツにジーンズ、スニーカーでまだマシな方でしたが

普段はコンビニのバイトをやってるフリーターとか、ホストみたいなチャラ男もいたり。

ひどいのになると歯が無い新聞配達員だとか、日雇いの工場勤務者、もしかしたらホームレス?!みたいな、かなりヤバい風貌の中高年も結構多くて、彼らが来た途端に会議室にすえたような酸っぱいニオイが漂っていて、なかなかのカオス状態でした。

そうなると、日頃死んだ魚みたいな目をして働いている中高年の警備員がかなりマトモに見えてくるから不思議です。

そうです。いわゆる「制服補正」ってやつです。

警備員のあの制服を着ただけで、それなりにちゃんとして見えるという、アレです。

比較対象が浮浪者寸前か、不審者と見分けがつかないくらいのひどいものばかりだから、変な警備員でも、制服を着ているだけでまだマシに見えるというやつです。

でも決して彼らもまともな人間ではないんです。

僕はそれでも警備員として働く以上、責任を持って業務を全うしようと思っていました。

あの頃の僕はまだ若くて

「僕が誠心誠意頑張れば、きっとみんなも気持ちが変わって本気で警備の仕事を頑張るようになるんだ。だから、はじめは僕だけでもいい、頑張ろう!」

なんて青臭い意気込みなんかに燃えていました。


でもね、現実は甘くないんです。

元教師のおじさんが

「お前さぁ、真剣に仕事するのやめてくれるか?」

なんて言ってきたんですよ。

「…どうしてですか?信頼される警備員になれば、皆さんの見る目も変わると思うんです」

「お前、バカじゃねぇの?信頼だとか、感謝だとか、そんなもん要らねぇんだよ。真剣にやろうがサボろうが日当は一緒なんだよ。俺らはただそこにいるだけで金が貰えんだから、楽して時間潰して金貰っときゃそんでいいだろうがよ。テメエがそうやって鼻息荒くして真面目に仕事してっとこっちも真面目にやんないといけなくなるだろうがよ。余計な事してんじゃねえぞコラ」

と凄まれました。

それでも僕は馬鹿正直に真面目にやっていました。でも、それも長くは続きませんでした。

不良中高年達が他党を組んで、僕の仕事を邪魔する様になって来ました。

引継ぎ事項や業務連絡を一切僕にはしてくれなくなりました。

重要な業務連絡を知らないままで仕事をする訳ですから、当然ミスも起こります。すると僕の責任になってしまいます。

こんな事がある度に会社に相談をしても、会社はまともに取り合ってくれず、「頼むから仲良くやってよ」で終わらせてしまうだけでした。

状況を見て本気で心配してくれていたのは設備員のおじさん達でしたが、設備員さん達は別会社の人達ですから、こちらの会社に口出しはできませんでした。

ただ、設備員の責任者のおじさんが

「君の警備会社はいつもこういうトラブルばかりだよねぇ。…実を言うとね、ここの現場ではね、君の前にも君と同じような目に遭って辞めちゃった若い男の子がいたんだよ。その子も真面目で仕事をきっちりやる良い子でねぇ…あの人たちに執拗に虐められて、最後は鬱になって辞めて行っちゃったんだよ。悪いことは言わないよ、君はまだ若いんだ、もっとまともな警備会社を探した方がいい。よその会社を悪く言うのは気が引けるけど、君の警備会社は最底辺の人間が集まってるよ。そんな吹き溜まりみたいな警備会社じゃなくて、もっとちゃんとした警備会社はいくらでもあるんだよ?」

と、こっそり僕に話をしてくれました。

そんなある日、正面玄関の立哨警備の交代に行くと、リーダー格の元教師から

「若造が、意気がってんじゃねぇぞ?」

と言われたので

「僕は意気がっていません。ただ、仕事をきっちりやりたいだけなんです。だから今日限りでこの会社を辞める事にしました。短い間でしたがお世話になりました。これで気は済みましたか?」

と言って、その会社を辞めました。


まさに社会の掃き溜めのような警備会社でしたが、こんな警備会社は一定数あります。

そういう警備会社で働くとひたすら不幸になるだけなので、そういう会社は避けた方が得策です。

しかもそういう警備会社は最低賃金ギリギリでこき使うだけこき使い倒して、身体を壊してしまったら最後、無一文で放り出されます。

そんな会社で働きたくなければ、いい加減な態度の警備員を見かけた時に、その警備員の制服をよく見て下さい。

標章(胸と腕に付いている警備会社のワッペン)に警備会社の名前が書いてあると思いますが、その会社名をよく覚えておくと良いです。

そんな警備員を雇い続けている警備会社は碌でもない警備会社です。

その会社では働かないように気をつければ良いと思います。


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