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その経歴、バレてますよ

最近は採用面接をやる事が多くなりました。

実は警備会社、応募は結構あるもんなんです。

応募だけなら、ね。

しかし、実際に書類選考や採用面接をして
「この人を雇ったら後々何かと問題を起こしそうだ」
「最低限の一般常識や社会性もないのか…」
と思う人が圧倒的多数だから、結局採用には至らず、警備会社は慢性的な人手不足なんですよ。

まぁでも「経歴不問」とか「職歴不問」みたいな事を書いて間口を広げてとりあえず面接だけは受けてもらうやり方を変える気はなさそうです。

とはいえ、そのやり方でもごく稀にいい人材が発掘できる場合もありますからね。

それと、よくネットでは
「日本語が話せれば採用される」
「不採用になってる人を見た事がない」
なんて書かれてますけど、半分はホントで半分はウソかなと思います。

それに、不採用になってる人を見た事ない、なんて、採用の現場で働いていた社員からの口コミならともかく
現場でしか働いてない警備員ならば、そんなのは当たり前の事でしょう。
現場には、採用になった社員しか配置しないんですから。

不採用になってる人は当然、その会社では働けないんだから、現場の警備員が見る事ができるわけないじゃないですか。
ナニを言ってるんですかね。


そんな当たり前の事を転◯会議とかイ◯ディードあたりの会社の口コミにわざわざ書くの、バカ丸出しで恥ずかしいですよ。
逆に言うとそんな事を恥ずかしくもなく口コミに書くようなお馬鹿さんでも雇う会社と思われるかもしれません。

しかしながら、確かに現役の警備員達を見てたら、
来るもの拒まずで面接に来た人は問答無用で全員採用!みたいな感じで
何でもかんでも雇っているように見えるかもしれませんが、実際にはちゃんと面接はしていますよ。
採用見送りにする人もそれなりにいます。

やっぱりね、自分たちが採用した従業員になんらかの問題点が発覚したとか、勤務中にトラブルを起こしたなどの場合、当の本人だけでなく、その人の採用に関わった人間もその責任を問われて詰められますから。

ぼくの会社の場合は、履歴書と職務経歴書を営業所に送って貰い、書類選考の上で面接に進む人と書類選考の結果採用を見送る人を選別します。

最近はPDFなどで応募書類を送って来る人が多いので、その処理は僕がやっています。
(課長はITアレルギーだから一切パソコンに触ろうともしません)
本来ならその履歴書を共有フォルダに入れてその旨を人事課の社員全員にCCで一斉送信するんですが、PCオンチの課長の為に、一部だけプリントアウトして
わざわざ紙にしておかなければなりません(笑)
それと、各種転職サイトからのWEB応募も僕が対応しています。

その代わり、郵送の書類に関しては年配の社員達が対応しています。
(年齢の高い応募者は従来のように郵送で書類を送るやり方しかできないという人も多いので)

ですが、そうやって手順を踏んで応募して来る人はまだまともな方です。

というのも時々、会社の窓にでかでかと貼り出されている
「警備員急募! 随時受付中 学歴・経歴・年齢不問(18歳以上なら上限なし!)
詳細は下記連絡先までお気軽に!」
のポスターや貼り紙などを見て、いきなりビルに入ってきて
「警備員なりたいんだけど!」
というムチャクチャな人も割といるんです…

ぼくが内勤になって間もない頃
営業所の入口にいきなり見知らぬ人が入ってきました。
薄汚れた身なりの高齢の男性(60代以上ではあると思う)で、明らかに関係者や取引先の社員ではないし、現場帰りの隊員にも見えませんでした。

社員達は皆
「誰?」
と顔を見合わせていました。

すると、その男性はおもむろに
「おい、警備員なってやってもいいぞ」
と、謎の上から目線。

近くにいた総務課の社員から
「誰かー、人事の人来てよー」
と言われたので、課長が
「トラ夫、お前行ってこい」
と顎でしゃくったので、ぼくが対応しました。

近寄ると、明らかに数日間フロに入ってない系のすえた臭いが鼻についてきました。

「はい、警備員の応募の件でしょうか?」
と訊くと
「おめえら人足んなくて困ってんだろ?俺が警備員なってやっから」

…で、再び謎の上から目線(笑)
もちろんこの時点で雇う気は完全にゼロなんですけども。
とはいえとりあえず

「この度はご興味頂きましてありがとうございます。では、この場で面接のご予約を承ります。
後日面接を行う際に履歴書が必要となりますので、履歴書を持参して頂いてもよろしいでしょうか?」
と言うと
「ぁあん?今ここで雇わねーのか?!履歴書?なんでそんなもん持ってこねぇとなんねぇんだよ?働いてやるつってんだから今すぐ雇え!随時募集とかお気軽にとか書いてんのはウソか?!」
と、いきなりバチギレ(笑)

メチャクチャです。

…当然ですが、こんな人は雇いません。
雇うわけがない。

「そんな面倒クセー事させるんなら働いてやんねえよ!じゃな!」
と、謎の捨て台詞を吐いて帰って行きました。

ぼくにとっては初めての経験だったので呆気に取られていましたが、課長曰く
「あー言うのは時々あるよ。ま、警備会社なんてそんなもんだ。とんでもないヤツが当たり前の様に警備員に応募して来るからな。そのうち慣れっこになるよ」
との事で…

けど、これもまだマシな方。

もっと厄介な事もあるんです。

それは、夜の商売から堅気の仕事に復帰してきた人達
なんです。

実は、この連中が一番厄介なんです。

水商売や風俗嬢という仕事は一生やる仕事ではないと思います。

それらの仕事の需要は主に若い人で、年齢を重ねるごとに市場価値が下がって行くのに比例してどんどん収入が減り、引退を考えるのでしょうが
そういう業種に従事していた人に対して世間の風当たりが強いのは否めません。

もちろん、ばか正直に「夜のお仕事をやってました」
と経歴を語る人は皆無だと思います。
そんな事を言ったら即不採用になるのは当たり前の事ですから。

ではなぜ、夜の商売(特に風俗などの性産業)に従事していた人が転職活動で圧倒的に不利なのかと言いますと
風俗やアダルトビデオなどの性産業は「公衆道徳上有害な業務」と、職業安定法で定義されています。
公衆道徳上有害な業務というのは、社会共同生活上で守られるべき道徳を害する業務という事になります。

要するに、社会的な道徳に反するひわいな行為(性行為類似行為)を生業としている、と、反社会的な意味合いがあるという解釈になると思います。
例えば、本番行為をせずに性行為類似行為をするだけに留まって売春防止法に抵触せず、風俗営業法を遵守していたとしても
「公衆道徳上有害な業務」である事に変わりはないとされています。

ですから多くの企業では、そういった産業に関わりのある人を自社の従業員にしたいとは考えないと思います。
ましてや近年は反社会的勢力を排除する動きが年々強くなっていますので、そういった業種の就業経験がある人を率先して採用したいと思う企業はますます少なくなっていると思いますし、
また、面接の時点でもそういう不審な人物をオミットできるように
様々な業界の様々な企業で対策を講じていると思います。

当然、弊社でもその様な経歴のある人は採用しませんし、採用後に発覚した場合には重大な社内規定違反、あるいは経歴詐称に該当するとして、相応の懲戒処分をさせて頂いています。

学歴・職歴・年齢を偽る経歴詐称は、人事決定に際して大きく影響を与えるケースが多いので、懲戒解雇になるケースが多いですが、諭旨解雇となる場合もあります(懲戒解雇の次に重い懲戒処分)



一般的にはいきなり懲戒解雇というのはハードルが高いので、諭旨解雇を通告する事が多いです。
諭旨解雇に応じなければ、懲戒解雇となります。

諭旨解雇を宣告されたら、どのみちクビは免れられないと思った方が良いと思います。
それだけ経歴詐称というのは重大な背信行為(信用毀損行為)となんです。

また、悪質な場合には一発で懲戒解雇となる事もあります。

ちなみに元風俗嬢の場合ですと
・風俗店で働いていた事実の隠蔽(いんぺい)
・介護、家事手伝い、資格取得の勉強など、実際の経歴と異なる虚偽の情報
・アリバイ会社など、実在しない架空の会社や登記されていても事業活動が不明な会社の名前を履歴書に記載している

とまぁ、この時点で、二重にも三重にも嘘を重ねていますから、悪質とみなされる可能性が高いと思います。

特に、アリバイ会社の名前を履歴書に書くのは完全にアウトなんですが、当たり前のようにアリバイ会社の名前で「自称正社員」(やアルバイト)で応募してくる不審な女性がいますので、100%不採用にしています。
「入社時に前の会社での雇用保険被保険者証と源泉徴収票が必要になります」
雇用保険被保険者証は正社員で就業していた場合のみ必須ですが、源泉徴収票はアルバイトでも必須になります。
「え、え、バイト先が発行してくれるのかわかりません」
と返って来たら
「それならば税務署で源泉徴収票不交付の届出手続きをして発行申請して下さい」
と言うと焦りが一瞬顔に出ますので、その時点でクロです。

中には
「でも月に8万くらいしか働いてないので」
「辞めたのがだいぶ前だから無くしちゃった」
と逃げる場合もありますが、月給が88,000円以下の場合は扶養内で働いている事の証明が無ければ(扶養控除等申告書の提出がない場合)
月収が88,000円以下でも源泉徴収の対象となりますから、源泉徴収票の提出が必須になります。

そして
「辞めたのがだいぶ前だから無くした」場合は、前職の会社の人事か経理に相談して再発行手続をしてもらって下さい。
本当にその会社で働いていたのであれば、発行して貰えます。

それができないのであれば、その経歴は「不審」とみなします。
不審な経歴を持つ人を採用したいとは思えません。

もうね、バレバレですからね、その経歴。

あるいは、法人登記はされていても、事業活動がなかったり、事業内容が曖昧な表現でされているなど、実態が不明な会社も怪しいと判断します。
その企業の主たる事業内容が「ナイトレジャー事業」などというのはもう間違いなく確定ですね。
他にも「ヘルスケア事業」と書かれているのに医療機器メーカーや医薬品メーカーとの取引の実態がない、なんてのも確定ですね。

普通にまともな社会人として働いて来たのであれば、経歴を偽る事がどれほど罪が重い事かは簡単に理解できると思いますが
「履歴書に書けない仕事」に従事していた人は、経歴を偽る事にへのハードルが極めて低く、社会的責任や倫理観に乏しいと言えます。
そんなモラルのない人間を自分の会社の従業員として雇うのは、非常にリスキーな事です。

万一、巧みに面接をすり抜けて自分の会社に入り込んで来たら、知らず知らずのうちに重大なコンプライアンス違反をして、会社に甚大な損害を与えるリスクが高まります。

もっとも、経歴詐称の時点で重大なコンプライアンス違反なんですが。

ですから、そういう産業に従事していた事が発覚した時点で懲戒解雇にするのは、妥当な事と言えます。
そもそも、そんな経歴があると知っていたら、元から採用しなかったんですから。



ご存知の通り、懲戒解雇というのは、社会人としての死刑宣告の様なものです。
懲戒解雇は重責解雇とも言い、普通解雇や整理解雇とは明らかに区別されます。

普通解雇→就業に際して明らかに能力が不足している、とか、協調性や一般常識が欠けていて周囲とのトラブルが多く、業務に支障を来たす、勤怠不良(遅刻や欠勤が多く、度重なる注意指導を以ってしても改善の兆しがない)、就業規則違反など、一般的に「クビになる」と言われるものです。

整理解雇→会社の業績悪化、経営難、あるいは事業の縮小などで人員を削減する必要がある場合に行われる解雇で、いわゆる「リストラ」と呼ばれているものです。



これらは、転職の際にハンデになる事はあっても、懲戒解雇や諭旨解雇ほど大きなハンデとはならない事が多いです。

しかし、懲戒解雇は、解雇となる理由が
・職場内での横領、顧客データの不正流出など、職務上での不正行為
・勤務中、勤務時間外に関わらず何らかの法律違反行為をして、その被疑者として逮捕、勾留、起訴され、有罪、実刑判決となった場合、
あるいは本人が罪を認めた場合
・重大な業務命令違反行為があった場合(わかりやすく言えば、正当な理由なく転勤を拒否して会社に重大な損害を与えたなど、会社からの正当な指示に従わなかった場合)
・連続での無断遅刻や欠勤
・機密漏えい(顧客データ流出と被りますが、業務上知り得た情報を友人知人に公開したり、SNSなどに投稿すること)
・重大なハラスメント行為(セクハラ、パワハラなど)
・経歴詐称
・インターネット上などで会社や同僚に対しての誹謗中傷を行った場合(最近増えてきたのはこれです。5ちゃんねるや爆サイ、X(旧Twitter)などで気軽に同僚や会社の悪口を投稿した事で懲戒解雇になるケースは意外と多いです)

などに該当する場合になり、普通解雇や整理解雇とは大きく異なります。

また、懲戒解雇処分になると離職票に「重責解雇」と記載され、離職理由欄に詳細が記載されます。
また、雇用保険受給資格者証や退職証明書などにも離職理由は明確に記載されるので、そこからでも簡単にバレます。

なので、再就職が不利になりやすい、というより絶望的になります。

懲戒解雇処分になると、その会社を辞めた後でも経歴としてずっと残りますので、転職や再就職に甚大な悪影響を与えます。
そうなるともう、まともな会社は採用してくれません。
場合によってはアルバイトで働く事すら厳しくなる事もあります。
だからといって懲戒解雇になった事実を隠して再就職をすると、再就職先から採用の為に離職票や退職証明書を求められた時に懲戒解雇の履歴がある事が判明してしまい、それもまた経歴詐称となり、懲戒解雇の対象となります。

いわゆる、完全に人生詰んだ状態そのものです。


だから、懲戒解雇は社会人としての死刑宣告と言われたりするんです。



弊社では面接時に、履歴書や職務経歴書に記載されているものが全て事実に基づくものであり、一切の虚偽はないこと
内定通知後、あるいは就業中に応募書類に記載のない副業などに従事していた経歴、公衆道徳上有害な業務に従事していた経歴が発覚したなどの虚偽の事実が発覚した場合は、
重大な経歴詐称として入社前ならば内定取り消し、就業中ならば相応の懲戒処分に処す
というところを再確認していただき、それに同意を頂ける人のみ採用しています。

そもそも、そういった経歴のある人は、面接時から何かしらの不審な点が多々見受けられることが多いと思います。
どこの会社でも、人事担当者は伊達に人を見る仕事はしていませんから。
ぼくのような経験の浅い採用担当でも丸分かりなんですから、ベテランの採用担当者が見抜いてない訳がありません。

実際、その疑いのある不審な応募者を面接した事は、ぼくも数回ほどあります。

まず、性産業に従事していた人の履歴書には、謎の空白期間が1年以上ある事が多いです。
その時点で「怪しい」「不審な経歴がある」と思います。

経歴に空白期間がある場合には、必ずその理由を確認するのが一般的で
どの企業の面接でも必ず行います。
病気での療養など、あるいは出産や育児などで就業が困難な状況であるなら、正直にその旨を伝えて貰えれば空白期間の正当な理由となり得ますが
就業可能な状況であるにも関わらず、就職はおろか、アルバイトすらしていないという空白期間がある場合にはその理由を深掘りするのが当然と言えます。

理由を明確に釈明して貰えない場合には、
服役していたなどの可能性も疑われる事もあります。

企業は、雇用契約を締結するにあたって、まずは確固たる信頼関係を構築するのは、当たり前の事です。
ですから、信用に値しない人間とは雇用契約を締結する事はできません。

そこで、性産業従事者の多くは
「親の介護の為」
「家事手伝いの為」
などという嘘をつきます。

空白期間の理由が上記だった場合は、性産業に従事していた可能性を疑います。
本当にその理由で、未就業期間があり、性産業に従事していない人にとっては甚だ失礼かもしれません。
ですが、上記の理由に関して疑心暗鬼になっている面接官も少なくないのです。
かく言うぼくもそのひとりですが。

だからといって
「あなたのお父さんは本当にご病気なんですか?」
などと訊く事はさすがにできませんから
外堀を埋めるような形で質問をして、本当に親の介護をしていたのか?
本当に家事手伝いをしていたのか?を確認する事になります。

大抵はこの、2つ3つの質問で簡単にボロを出します。
意地悪な質問でも何でもなく、本当に介護をした人であれば何の問題もなく答えられる様な簡単な質問をするだけです。

家事手伝いに関しては、内定通知後に身上調査の為に素行を調査します。
これには信用調査や刑事記録の確認も含まれる事もあります。
特に警備業では業務の特性上、刑事記録の確認を行う会社が多いと思います。
大手はほぼ間違いなく行ってるはずです。

調査に同意して貰えない場合には内定は見送らせて頂く事になります。
というより、空白期間の説明に不審な点が見受けられた時点で既に不採用はほぼ確定していますが…

もう、その時点で後ろ暗い経歴がある人は目が泳ぎ、挙動不審になります。
ど素人のぼくでも簡単に判別できるくらいです。

とはいえ、面接の時点ではそんな事はおくびにも出さず、粛々と面接を終わらせて、後からお祈りメールをサクッと出せば、それまでです。


面接なんてチョロいわぁ〜
簡単に昼職デビュー♪
だなんて、世の中を舐め腐るにも程があります。

世間様に背く様な行いをしていながら、何事もなかったかのように堅気に紛れ込もうとする輩と一緒に仕事をする事が不愉快なだけです。

ほんのいっときの気の迷いだったとしても、世間に顔向けできない様な事をしておきながら、
もうその道で生きてはいけなくなったからと、真っ当に生きている人々と同じ暮らしをしようだなんて、随分と虫のいい話です。

少なくともぼくの会社にそんな輩を在籍させたくはありません。






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