警備員はPCオンチが多い?
転職サイトを眺めていますと、警備会社の求人がかなり多く掲載されています。
圧倒的に多いのは交通誘導警備の求人なんですが、交通誘導警備は肉体的にもキツく、基本的に日給制(場合によっては時給制もある)で給与も安定しない事と雇用形態もアルバイトや契約社員という、非正規雇用が主流という会社も多いことから、非常に不人気な案件です。
中には正社員という求人もありますが、正社員でも日給制である事に変わりはないので非正規との区別が全くありません。
交通誘導警備は業務の特性上、一般企業のような月額の固定給制にする事が難しいんです。
ちなみに日本の企業の多くは日給月給制で正社員と雇用契約を結んでいますが
日給月給制と日給制、月給制はよく混同されるんですが(ぼくも勘違いしてました)
日給月給制→1日を給与の計算単位として、あらかじめ定めた月額の固定給から欠勤や遅刻、早退などの時間分を差し引いて支払う給与形態。
ノーワークノーペイの原則に基づいた制度。
月給制→1ヶ月を給与の計算単位として賃金が固定されている給与形態。
遅刻・早退・欠勤があっても差し引きはなく、毎月必ず決まった固定給が支払われる。
日給制→1日あたりの給与額をあらかじめ定め、1ヶ月のうちで働いた日数に応じて賃金を支給する給与形態。
警備会社の多くは日給制か時給制が主流で、正社員であっても固定給制(日給月給制)を導入している会社は少ないです。
固定給制を導入しているのは主に大手警備会社(セコム、綜合警備保障、全日警、セントラル警備保障)や、施設警備・輸送警備(現金輸送車)などに特化したごく一部の警備会社に限られています。
9割ほどの警備会社は正社員でも日給制か時給制なんです。だから賞与もないし(あっても寸志程度だしそもそも寸志を賞与と言うのは誤り)退職金もありません。
これがブラック業界と呼ばれる所以ではあるんですが…
ですがそれには理由があります。
交通誘導警備は天候に左右されますから、荒天・悪天続きだと自宅待機を余儀なくされるため、月によっては勤務日数が18日未満ということも普通にあります。
例えばある月の勤務日数が12日(梅雨時などで現場が休みという日が続いたなどで)だったとした場合、固定給制だと月の所定労働時間に満たずに所定割れとなってしまい、基本給を満額お支払いできなくなります。
そうなると手取りが大幅に減ってしまいます。
日給制だとしても自宅待機の時は給与は発生しませんから、いずれにせよ手取りが減ることに変わりはありませんが…
交通誘導警備の場合は月によって勤務日数(ひと月あたりの所定労働時間)に大きな波があるので、固定給にしづらいんです。
それに固定給制にしてしまうと、給与計算がかなり面倒になるので、労務管理や経理の負担がかなり大きくなります。
なので、日給制にせざるを得ないんです。
交通誘導でも施設の駐車場などのような、固定の現場での勤務ならばまだ給与は安定しやすいですが、
工事現場の勤務はかなり不安定なので、希望する人は少ないのが現状です。
そういう事もあってか、施設警備と交通誘導警備でしたら、やはり施設警備の方に応募が来ます。
ぼくの会社は施設警備が主力ですが、交通誘導警備の案件も少しあるので、両方で求人を出していますが、応募の多くはやはり施設警備に集中します。
どちらも肉体的にキツいとは思いますが、施設警備の場合は屋内での立哨や巡回という現場が多数なので、同じ立ちっぱなしの仕事でも交通誘導警備と比べるとマシなように思われています。
しかしながら、施設警備でも敷地内での車両案内・出入管理業務や立哨という業務がある現場も少なくありません。
そこは交通誘導警備と同じく外で立ちっぱなしの業務になりますから、キツさはほとんど変わらないと思います。
なので1号警備(施設)も2号警備(交通誘導・雑踏警備)もさほど違いはないと思います。
ただやはり、雇用形態と給与の形態が違うんです。
施設警備の正社員は固定給制なんですが(準社員、契約社員、アルバイトは時給制)
交通誘導警備の方は正社員での雇用はなく、準社員、契約社員、アルバイトのみです。
本来ならこういう格差があるのも問題だと思うんですが、それを改善するには現実はまだまだ厳しいと思います…
個人の能力や適性もありますので
弊社の場合なんですが、正社員希望の警備員は原則として契約社員からのスタートになります。
準社員、アルバイトを希望する場合は最初からその雇用形態で雇用契約を結びます。
ただ、例外として
施設2級以上、1号業務指導教育責任者、機械警備業務管理者、いずれかの有資格者であれば正社員からスタートとなります。
それ以外は一律契約社員からとなり、その後は本人の希望により勤務態度や実績、適性や能力などを考慮して正社員登用となります。
また、最近では施設警備でもPC業務が増えて来ているので、最低限のPCスキルを求める現場が増えて来ています。
特にオフィスビル、企業の事業所の施設警備の場合は、基本的なPC操作ができる事を強く求められます。
依頼主側の社員たちとのやりとりはもちろん、現場の隊員同士でも無線でやり取りするのが困難な連絡・申し送り事項などは各ポストに置かれている端末にチャットなどで一斉送信するようになっています。
むしろ、無線や内線では聞き間違いなどのリスクがある為、緊急の用件でなければ文書でやり取りした方がメリットがあると言えます。
また、商業施設であっても施設の責任者へ提出する報告書は基本的にPC入力という施設が増えて来ており、
紙ベースの報告書という現場は年々減少しており、また、ペーパーレス化の推進によってここ2、3年で一気に増えて来ました。
施設警備は現在、PCを使った業務に移行している現場が多くなり、従来のやり方と比べると作業効率が上がってきているので、今後ますますPCを活用しての業務がどんどん増えていくと思います。
なのでどうしてもPCを使う業務が苦手という人は敢えて交通誘導警備を選択する人もいます。
交通誘導警備は今だに完全マンパワーでPCを活用する場面は殆どなく、報告書も基本手書きです。
うちの会社でも採用面接時にアンケートを実施していますが、そこにPCスキルを書いて頂く項目があります。
例えば
Word:カナ入力、ローマ字入力、文字変換、書体変更、印刷、表作成、画像挿入、差込印刷
Excel:入力(数値、文字)、四則計算、基本の関数(SUM、アベレージ)、書式設定(掛線、フォントサイズやフォントカラー変更、太字・斜体への変更、フォント変更)、印刷詳細設定、文章保護
PowerPoint:基本的なスライドの入力・作成、グラフや画像データの挿入(写真やイラスト)
その他:タッチタイピング、入力スピード
いずれも事務職の人達にとっては日常業務でやっている事ですから当たり前にできる事で、何を今更wなことかもしれませんが
警備員に応募して来る人の中には
「すみません、それ無理です」
「パソコン使った仕事なんてした事ないからできません」
という人も少なくなくて、さらには
「既に質問内容すら理解できません」
「パソコンなんて見るだけでジンマシンが出る」
という人も普通にいたりして…
だからこそ警備員に応募して来たのかもしれませんが
施設警備を希望するのであれば、最低限上記の項目は普通にできて欲しいところです。
先述のとおり施設警備は年々、通常業務でPCを使う現場が増えていますので、最低限のPCスキルがないと仕事にならない場面が多くなっていますので、今後採用する人にはPCスキルを求めています。
当然ながらその分交通誘導警備と比べると能力給を加算するので給与も高めに設定してありますし、配属先によって勤務地手当が付与されます。
(配属先により差はありますが、業務内容の差異によるもので、ひと月あたり1〜5万円の勤務手当金が付きます)
ですから、施設警備で応募して頂いた場合でもアンケートの回答によっては交通誘導警備の方をお願いすることになってしまうんですが
交通誘導はやりたくない。でもパソコンも嫌い、となると、弊社では少し難しいと思います。
これは年齢の高い応募者に多いんです。
「この歳になると外で一日中旗振りなんてキツいんだ。だから屋根のある仕事場で働きたいから何とか施設警備にさせてくれないか?」
と、面接時に頼み込まれる事もあるんです。
そりゃぼくも交通誘導のキツさは身にしみる程わかりますからその気持ちも理解できます。
でも、今の施設警備は昔のように通用口のカウンターに座りっぱなしで鼻くそほじりながら時間潰ししている様な働き方じゃないんです。
今の施設警備の業務はまず、上番して配置についたら配置ポストにあるPCに必ず個人に割り当てられたIDとパスワードでログインする所から始まります。
で、申し送り事項やチャット・メールの確認。
その日の来館者リスト・作業申請書などのファイルのチェックをする事
来館者の入退館時刻を専用システムに入力する業務がある事
鍵貸出しや返却も専用システムに鍵のコード番号、鍵を借りる社員の社員コード、貸出時間や返却時間をその場で入力する事
一時入館証(カードキー)の貸出がある場合には来館者チェックリストを参照の上、誰にどの権限付与をするのか、カードキーの有効時間などを専用システムに入力してカードキーを設定する事
キーオーディット(鍵点検)はPCにバーコードスキャナーを接続して読み取るという作業をする事
巡回は開始時刻をシステムに入力後に巡回実施。
巡回終了後は終了時刻をシステムに入力後、巡回の所見も併せて入力
警備報告書(日報)は全てExcelで入力する事
構内で作業があった場合は、出入りした業者・作業員の人数・構内に入出庫した車両の集計業務をExcelで行う必要がある事
などなど
PCを使った業務がメインで、それができなければ施設警備は難しい旨を伝えると
「それはちょっとできそうにない」とのこと。
難しいPC操作ではないから、とりあえず簡単な入力さえできればあとは現場で頑張って覚えてもらえればと伝えても
「いやぁ…パソコンだけはどうしても拒否反応が出るんですよ」
と返されたらそれ以上はもうどうにもできません。
今までのように入管台帳や鍵貸出し簿に手書きで、とか
鍵チェックリストを片手に一本一本呑気に鍵を数える、なんて業務はもうやっていないのですから。
それでも何とか頑張って人並みにできるように頑張りますと言うのならともかく、それをやりたくないと言うのであればどうしようもないです。
人手不足ではあるんですが、応募して来た人を何でもかんでも採用する訳ではないんです。
時代に沿ったスキルがなければ、みんなが嫌がる仕事をやるしかないのは警備業界でも同じです。