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バリでカード賭博詐欺一味におもてなしされた話


もう20年以上前の話だがバリで賭博詐欺(未遂)に遭ったことがある。
当時はバリが大好きで毎年のように訪れていた。

散歩の途中で

その日、スミニャック方面に向かって1人で歩いていると
金のネックレスをした小太りの中年男性と中年女性の2人組に声を掛けられた。
聞くと彼らの妹が近々、日本に留学しに行くのだがお母さんが、
とても心配をしている、ぜひ家に来て日本のことについて話をして
安心させてあげてくれないか、と言う。
2人とも身なりはきちんとしていて裕福そうだし
(そりゃ見るからに詐欺師な詐欺師は居ないだろう)昼間だし、
危ない目には遭わないよね、と好奇心に負けてノコノコと付いていった。

平屋建てでのんびりフィリピン・ランチ

SUVに乗って20分ほど走っただろうか、周りが田園の平屋に着いた。
ものすごく開放的な造りの平屋で万が一、何かあっても
簡単に逃げ出せそうだなと思った。
おじさんに連れられて中に入ると細くて小柄な年配のおじさんが居た。
彼はお母さんの兄で肝心のお母さんは今、娘(留学する本人)と一緒に
病院に行ってるから、ランチでも食べてちょっと待ってて、と言われる。
ダイニングにはランチが用意されていて、私の好物であるフィリピンのアドボもあった。誘われるがままに普通に美味しいランチをご馳走になる。
食後にバリコーヒーをいただきながら、おじさんと歓談。
おじさんはヌサドゥアにあるリゾートホテルのカジノ勤務。
常連に中国系ジャワ人のケチで感じが悪いお金持ち(確かワンさん)が
居るらしい。
とにかくギャンブル好きのケチでカジノだけでは飽き足らず、
おじさんの家でも賭けトランプをやりたい、とこれから来るらしい。
私とおじさんで組んで彼から大金を巻き上げよう!と途端に雲行きが
怪しくなってきた。

突然、雑なおかまちゃん登場

賭けトランプなんてやったことないし、興味ないよと断っているところに
チャイナ服を着たかなり太目なおっさんが手に持った扇子を振り振り、
「Hello~」とやって来た。まさかのワンさん、おかまちゃん設定、
しかも、かなりステレオタイプ。中華系だからチャイナ服なの?
これはもしや危ない流れでは、とさすがに思い始めた私でも
笑ってしまうほどの雑な役作り。ワンさんに気を取られている間に
隣の個室に移動、賭けトランプが始まってしまった。
ヤバい、これはいよいよヤバい、何としても逃げないとヤバい。
突然、トイレに行きたい!と無理やり個室を出ると最初に声を掛けてきたおじさんが外でのんびりと煙草を吸っていた。
「友達と約束してて、もう時間だから帰りたい!」と話すと、あっさりと
「じゃあ街まで送ってくね」と車を出してくれた。
え?帰っていいの?しかも送ってくれるの?
帰りの車内でもバンコクのハードロックカフェの話や色んな話をして
また会おうね、とか言いながら、でもそれは絶対にないことを
お互い感じつつ、終始和やかに別れた。

一体なんだったのか

定宿に帰って仲良しのジャワ人のスタッフに事の顛末を話すと
「もうバカじゃないの?何で付いてくの?それ典型的な詐欺だよ、
ガイドブック読んでよ!」と説教された。ぐうの音も出ない。
フロントにあった地球の歩き方を見たら彼の言った通り、
全く同じ手口の詐欺に遭い、最終的にカードで現金を下ろしてまで
お金をあげざるを得なかった、という経験談が載っていた。
家に誘う口実や賭けトランプへの流れなど全く同じ手口だった。
違ったのは私はただ美味しいランチを食べて、おかまちゃんの寸劇を見て
車で送ってもらって帰って来たということ。
何で一銭も取らず、逃してくれたんだろう。
幸運にも被害はなかっただけで、いつだって何らかの被害に遭う可能性が
ある、という教訓にして、あれ以来なるべく気を付けてはいるが
あまり気を付け過ぎると旅先での出会いや面白い経験を逃すので
その辺のさじ加減が難しい。
今ではさすがに声を掛けられて付いていくということはしなくなったが
今でも時折、自称ディーラーのおじさんのお人好し顔や
雑なおかまちゃん・ワンさんの脂ぎった顔を懐かしく思い出す。









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