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お前は猫か!
童謡「ゆきやこんこ(ゆき)」の一説では、「犬は喜び、庭駆け回り、猫はコタツで丸くなる」そうだが、どうやらそうでもないようだ。
うちのワンコ、モコ(♀、9歳、トイプードル)は寒いのが大の苦手。
犬のくせにコタツが大好きで、寒い日は猫さながらにコタツに潜り込んで丸くなっている。
いつの間にやら視界から消えて、ふとコタツに足を入れてみると、つま先でなにやら動く物体が。
モコである。
我が物顔で寝そべり、チラリとこちらに視線を送り、「何か問題でも?」とおぎやはぎばりのすまし顔。
そんな彼女に私は言う「お前は猫か!」
散歩に連れ出しても、雪の日は動きがすこぶる鈍い。しまいには散歩途中でお座りして動かなくなり、進行を拒否する始末。
しかたなく抱っこして家まで帰る。家に着くと猛ダッシュでコタツに突入。
そんな彼女に私は言う「庭駆け回るんちゃうんかい!」
猫よろしくコタツの中で丸くなるのが好きな彼女でも、ずっと中にいるのはやはり暑いらしく、時々這い出て来る。
這い出た彼女は、今度はコタツ布団の上で丸くなる。
うちのコタツ布団の色は濃いブラウン。彼女の体毛は真っ黒だ。
同系色なので、完全に同化していて、うっかりすると踏んでしまいそうになる。
そんな彼女に私は言う「お前はカメレオンか!」
私がコタツに入って胡坐でテレビを見てると、コタツ布団の上から私の膝の上に乗ってくる。スペースが狭かろうとお構いなしに突っ込んでくる。
私がコタツに入って寝転んでいるときは、コタツ布団の上から私のおなかの上に乗ってくる。私が食後でおなかがパンパンになっていようがお構いなしにジャンプしてくる。
そんな彼女に私は言う「ジャンプはやめてよ~(泣)」
彼女はモコモコのコタツ布団がお気に入り。
というか、モコモコの場所がお気に入り。
毛布、クッション、布団。
ありとあらゆるモコモコの場所に陣取って、寝そべる。
名は体を表す。
名前は彼女がうちに生後2か月でやってきたときに私が付けた。
そのときはまだ両掌に乗るほど小さく、体毛もモコモコだった。
ベタな発想で「この子はモコだ!」となった。
今ではすっかり成犬となり、真っ黒だったモコモコの体毛に若干の白髪が混じり、体重も5kgを超えた。
故に満腹のおなかにジャンプして着地されれば、
思わず私は言う「うっ!」
彼女の食欲は留まるところを知らない。
自分のご飯を食べ終わった直後でも、私たちの食卓の横にピタリと張り付き、分け前を要求してくる。
人間のご飯を食べさせるのは極力控えた方がいいのだが、テーブルに首だけ乗せて、上目遣いで見られるとなかなかに弱い。
それでも無視して食事を続けていると彼女は言う「クゥ~ン」
もうこちらの負けである。
絶対NGの食材を避け、ほんの少量分け与える。
それでも私たちが食事を終えるまで、彼女が食卓の横を離れることはない。
彼女が届く範囲に食べ物を置くことは厳禁だ。
人がいる前では決して食べないが、目を離した隙に、さっきまでそこにあったはずの食べ物が消え失せている。
特に短時間でもお留守番させるときは注意を要する。
テーブルの上にお菓子を置きっ放しにしてしまえば、袋ごと食いちぎって散らかすし、
お供え物をした仏壇のある部屋の戸をうっかり開けて出かけようものなら、ご先祖様より先に彼女の胃袋に入ってしまう。
ゴミ箱も要注意だ。
帰ってくると、食べかすが残っていたであろう、お菓子の袋を捨てたゴミ箱を盛大にひっくり返して、床一面にゴミが散乱していることがよくある。
そんな彼女に私は言う「お前は強盗か!」
彼女は自由奔放だ。
階段の下にペットシーツを敷き、排泄はそこで行うように躾けている。
尿は概ねシーツの上にするが、便の方はなかなかシーツの上に収まらない。
シーツの上でしようとはするが、ぷりぷり排便しながら、ちょこちょこ動く癖があるので、最終的には階段の下を出て廊下にブツを着地させてしまう。
我が家の廊下は木目のフローリング。節の模様と同じに見えて、不覚にも踏みつけてしまう。思わぬところに地雷が仕掛けられていることもある。
素足で踏みつけたときの悍ましい感触ったらない。
そんな彼女に私は言う「お前はロシア軍か!」
彼女は生まれつき心臓が弱い。
トイプードルという犬種にはよくあることらしいのだが、心臓が肥大していて、動悸や息切れ、心疾患を起こす危険性があるらしい。
なので、毎回、食事の際に心臓の薬をウェットフードで包んでお団子にして服用させている。
太りすぎは心臓にも負担がかかるので、食事は脂質を制限したドライフードを湯煎して油抜きをしてから食べさせている。
ウェットフードもドライフードもペットクリニックから専用の物を購入している。
さらにかゆみ止めの薬、下痢しやすいので整腸剤のサプリメント、2か月に一回のトリミング代。
毎回、金額を見るたびに眼球が飛び出しそうになる。
そんな彼女に私は言う「金のかかるヤツだな~。」
彼女はさみしがり屋だ。
必ず、人のいるところに来る。私の横にすり寄って来る。
私がいないときは娘にすり寄ってくるらしい。
彼女と7歳の娘は親友でもあり、ライバルでもある。
娘が一人で寝ているときは必ず横で一緒に寝るし、
幼児期には娘が泣くと彼女も一緒に遠吠えしていた。
そして、お互いに相手の事を自分より下だと思っている。
家族みんなで寝るときは妻君と娘の間に割って入って、布団から首だけだして眠る。
たまに私の布団に入ってきて、今日はこっちで寝るのかと思っていると、知らん間にまた妻君と娘の間に戻ってる。
そんな彼女に私は言う「ツンデレか!」
彼女は真っ黒だ。
もちろん体毛の話である。故に写真を撮ると黒い塊のようにしか見えない。
目はクリクリしてるので、顔面の写真写りは悪くないのだが、カメラ目線でないと写真が映えない。
彼女をペットショップで見たとき、彼女には兄妹がいた。
明るい茶色の毛並みで、トイプードルの見本のような子だった。
二人は同じケージに入れられ、お互いじゃれついていた。
妻君は最初、茶色い子を気に入って連れて行こうとしたが、同時に別の家族もその子を所望した。
どちらも譲らなかったので、最終的にはじゃんけんで決めることになり、妻君はあえなくその勝負に敗れたのだった。
私は残された真っ黒い毛並みの子を抱き上げ、
彼女に言った。「うちに来るか?」
その時のクリクリした真っすぐな瞳を見た私と妻君は彼女を家族に迎え入れることを決めたのだった。
彼女には二人きりの時に、よく愚痴を聞いてもらっている。
いろいろと拗らせている私の感情をストレートに吐き出しているが、彼女はいつも黙って聞いてくれている。
最後には丸まって横になっている彼女のおなかに顔をうずめ、「猫吸い」ならぬ「モコ吸い」をして癒されている。
寒いのが嫌いで、
犬なのに猫みたいで、
カメレオンみたいにコタツ布団と同化して、
寝ている私のおなかに遠慮なくジャンプしてきて、
とんでもなく食いしん坊で、
強盗のようにゴミ箱を散らかして、
廊下に地雷を仕掛けて、
とんでもなくお金がかかって、
娘とは親友で、ライバルで、
犬のくせにツンデレで、
真っ黒で、クリクリで、
そんなモコは私たちの癒しで、大切な家族の一員なのである。