プレイボーイ入門
今の東京でプレイボーイは完全に死滅したと思う。
世の中、不景気のせいでプレイボーイがいないのか、はたまた、プレイボーイがいないせいで不景気なのか。
冷静になって考えてみると、私は、後者が大きな要因をもっているような気がしてならない。
なぜなら、プレイボーイは一流品を好む。伊丹十三氏の言葉を借りるならば、「たとえ百円玉一個しかなくとも、そういうときは世界最高のケシゴムを捜す!」と。つまり、頭のてっぺんからつま先まで一流品でそろえなくては気がすまない。食べる、飲むもまた一流。そんなプレイボーイにいちばん似合わない言葉が、貯蓄だろう。貯蓄米兵。違うな。
それで、そのプレイボーイのまわりにわんさか集まってくる女性たちは、これまた、一流のフアッションに身を包み、有名美容サロンへ行き、高級化粧品をお使いになる。それで、デートはもちろん、一流の飲食店、そして、夜景の見えるバー・ラウンジ、流れて居酒屋で庶民の味を堪能する。
そう、プレイボーイがたったひとりいるだけでの話で、ファッション業界、飲食業界、美容業界がことさらに潤うわけである。活気をみせるわけである。
これが、百人いたらどうなるであろうか。きっと、日本経済は復興する。
さらにまた、プレイボーイは男と女の関係において、因果を残さない。ここもまた重要なポイントだ。「あの人のことは今でも好きよ。ただ、そんなふたりの季節が終わっただけ・・・」そんなことを相手の女性に言わせる技量、男の器が今どこにある。プレイボーイならぬ無礼ボーイにはなってはいないか。
そして、いちばん肝心なのは、プレイボーイは博識でなければならない。これだろう。着るもの、履き物、ジーンズに関する知識、そして、美食に関する知識、とうぜんワインの知識も必要だろう。ワインの産地くらいは知識にいれてイタリア・レストランを訪れたい。さらにはシングル・モルトなどについての知識もほしいところだ。「ラガヴーリン12年、うーん、ソルトを感じるね。ドライ、かつスモーキー、それと活気のある盛り上がりを感じる、いや、いや実に複雑で計りしれない味だよ」バーテンダーとの間にそんな会話がほしい。
それだけではない。音楽、ジャズ、クラッシック、70年代ロック、映画、舞台、文学、政治、経済にも精通していなくてはならないだろう。話題のないつまらない男に女性が集まるわけがない。無口でいいのは高倉健さんとノッポさんだけだ。
そうこう考えると、いや、プレイボーイになることは下手な大学出るより、よっぽど大変だということが分かる。
それでも、プレイボーイになりたい君へ。
そんな君に、この一冊をお勧めする。野坂昭如、丸谷才一、中原弓彦、河野典生、錚々たる先生たちによるプレイボーイの哲学、プレイボーイへの道、世界のプレイランド、世界の夜と女たち、等、全7章からなるプレイボーイ養成講座!
健闘を祈る!!