#15 知らなくてもいいけど基本の春分点歳差の仕組み
【地球の首振り運動】
知らなくてもリーディングには差し支えはないお話です。
ただし、「ホロスコープ作成ソフト」のプログラムを組む場合、基礎中の基礎となる「春分点歳差」のお話です。
12サイン(宮)が始まる基本の「牡羊宮の0度」こと「春分点」は、地球の歳差運動(首振り運動)に伴ない、わずかずつですが12サイン(宮)とは逆方向に移動しています。
「春分点」を始点に30度ずつに12サイン(宮)は区分されているために、移動する「春分点」の位置を正しく把握しておかないと、長い年月の間にはサインの度数が変わっていくからです。
わずかな移動です。
約72年に1度ずつ程度ですが、遠い過去や未来のホロスコープを出そうとするとき、お使いの「ホロスコープ作成ソフト」のプログラマーが、このことを正しくご理解されてプロ儀らミングをされていないと、間違って出力されてしまいます。
この「春分点」の移動の根因にあるのが「春分点歳差」(地球の歳差運動)です。
事実、ホロスコープが誕生した2千数百年前の時代と現在とでは1サイン(宮)分も「春分点」がズレています。
かつて「牡羊宮≒おひつじ座」だったサイン(宮)と星座の位置関係は、現代のホロスコープでは「牡牛宮≒おひつじ座」に変わっていて、現在では「牡羊宮≒うお座」という位置関係になっています。
ホロスコープは、黄道上の12星座やへびつかい座を含めた13星座はもちいません。
12サイン(Sign=宮)を用いるのですが、空の星座(Constellation)の名称のみをサイン(宮)に流用したもので、星座は、地上から見た人間の想像の産物です。
なので、12サイン(宮)とは、名称と順番の並び以外、関係がないのが本当のところです。
【「春分の日」と「秋分の日」】
12サイン(宮)のはじまりが「春分点」です。
では、「春分点」はどのように決まるのでしょうか。
太陽が「春分点」を通過していく日が「春分の日」で、「春分点」は地球の公転面と自転軸とによって決まります。
地球が太陽を公転する面、地球からみれば太陽の通り道「黄道」ですが、これと地球の赤道を宇宙に投影した「天の赤道」とが交わる2点のうち、1つが「春分点」です。
もう1つが「秋分点」で、春分点の正反対に位置します。
12サイン(宮)でいえば、「春分点」が牡羊宮0度で、「秋分点」は天秤宮0度になります。
【地球の歳差運動】
「春分点」は、実は地球の「歳差運動」(首振り運動、すりこぎ運動)によって、少しずつ動いているので「ホロスコープ作成ソフト」のプログラミングは、約72年に1度ほどずつ修正が必要になっています。
現時点のみをみれば、微々たる誤差なので、さほど関係なくても、36年で1度の半分ほど移動し、18年で0・25度も移動すれば、中には度数が変わってくるものが出てきます。
「春分点」は、太陽の移動方向とは逆方向に移動しています。
そのため、現在のホロスコープで牡羊宮0度(=魚宮30度)の「春分点」の黄道上の位置は、約2,160年前のホロスコープでは、魚宮0度の位置でした。
「春分点」が黄道上360度を1周していく期間は、計算値で約25,920年です。
約2,160年×12サイン=約72度×360度=約25,920年(計算値)です。
実際はもう少し短いのですが、この周期は「プラトン年」(グレート・イヤー)と呼ばれています。
プラトン年を12等分したものが「プラトン月」(グレート・マンス)です。
古代ギリシャ当時の「春分点」は、現在では当時のホロスコープでいえば、今では「宝瓶宮」(ほうへいきゅう:水瓶宮の古称)の29度付近に進んできており、それゆえ現代は「宝瓶宮時代」の緒にあります。
【春分点の移動を図示】
地球の自転軸の首振り運動、すなわち「歳差運動」によって地球の赤道を宇宙に投影した「天の赤道」も少しずつ動いていきます。
そのため、「天の赤道」と「黄道」との交点である「春分点」と「秋分点」も少しずつ移動しているというのが、「春分点歳差」です。
地球の自転軸は、地球の公転軸に対して約23・3度の傾きを保ったまま、ゆっくりと首を回すように、約25,920年という長いときをかけて一回りします。
これを「歳差運動」(Precession)といいますが、それに伴なって、「春分点」も少しずつ黄道上を移動していきます。
それゆえ、地球の自転軸の延長上、北方向には、現在「北極星」(polaris)が位置しており、地球の自転に伴なって、星たちは北極星を中心に回っているかのように見えます。
ですが、「歳差運動」によって、プラトン年の半分、約12,460年ほども経つと、地球の自転軸の北方向の延長上は、現在の北極星から上図でいう「ベガ」の位置付近に移っていきます。
ベガは「こと座」の一等星で「夏の第三角」の1つです。
七夕の「織姫星」としても知られています。
現在の「秋分点」がある位置に「春分点」が移動していくわけです。
【トロピカルとサイデリアル】
おまけの関連知識です。
西洋占星術は、現在の「春分点」を12サイン(宮)の始点(牡羊宮0度)とする「トロピカル方式」を多くの場合、採用しています。
一方、インド占星術(ジョーテッシュ)は、古代ギリシャ時代の当時のままの「元春分点」の位置を始点とする「サイデリアル方式」を採用しています。
夜空の星座でいえば、おひつじ座とうお座の境あたりに「元春分点」は位置したため、サイデリアル方式は星座と12サイン(星座宮)の位置がほぼ重なります。
結果、トロピカル方式の西洋占星術と、サイデリアル方式のインド占星術とでは、現在1サイン分(1星座分)ほどズレてしまいました。
この差は「アヤナムシャ」と呼ばれています。
「あなたはおひつじ座生まれね」(太陽)というとき、インド占星術では、そのままおひつじ座(Constellation)に位置する「太陽」になりますが、西洋占星術の場合は、おひつじ座ではなく、うお座に位置する「太陽」になります。
正確には、ホロスコープの「牡羊宮」に位置する太陽です。
知らなくてもさほど差し支えはないホロスコープの基本中の基でした。
※「奥義講座のための基本の基02」を
リライトして掲載したものです。