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女医の子供が入院して感じたこと~小児科受診のハードル~
こんにちは。精神科女医のyumeです。
今回は、私の子供が入院したことをきっかけに、小児科受診のハードルについて感じたことや考えたことを、女医の目線で書いていきたいと思います。
まず状況の説明ですが。。。
私の子供は、尿路感染症で入院しました。
入院が必要な状態だったのに、そこに至るまで様々なハードルがありました。
ひとつずつ、経時的に書いて行きたいと思います。
夜間の発熱、この時点では救急受診の必要性はないと思いつつ・・・。
息子の体調変化に気づいたのは、お風呂あがりの夜でした。
夫が抱っこしていて、「なんか熱くない?」と。
体温を測ると38℃台の発熱。
しかしこの時点では活気もあり、にこにこしている。飲みもまずまず。
ここ数週間、哺乳を嫌がることが多々あり、哺乳量が月例の3分の2程度であったことは気になっていた。
様子を見ていたが、更に上昇し39℃台に。
私の小児科の知識は研修医レベルではあるものの、救急外来を受診した子どもはある程度見たことがある。
”熱はあるけど、ニコニコしていてあやすと笑うし、哺乳量も極端に飲めないわけではない。これだと明日小児科受診してくださいって言われるだろう。でも0歳児だし、ここ数週間の飲みが減っているのは気になる・・・。救急外来には相談しよう。”
その日の小児科輪番病院に電話し、救急外来の看護師に状況を説明した。
案の定、翌朝の小児科受診を勧められた。
理由としては、
・熱が上がってすぐであれば検査が陽性にならないであろうこと
・その状態であれば夜間検査しないであろうこと
であった。
そして日中の近医小児科を受診するよう言われた。
まあそうなるか・・・と思いつつ、感じたこと。
電話の口調がかなり高圧的だった。
口調が早口でまくし立てるようであり、「~なんですか?」などの語尾が強く問い詰めるような感じで、こちらは責められているような気持ちになってしまった。
もちろん自分も夜間救急を経験しているし、多忙な現場で電話がかかってきたときの状況はわかるので、仕方ないのかなとは思う。(輪番病院は受診数も多いうえに救急車の対応もあるので、日中でよさそうな患者は内心受診を控えてほしいと思っているだろうし)
私は一応医者なので、子供の状態を適切に説明できたとは思う。
でも、医療者ではない一般のお母さんたちだったら、状態が悪かったとしても、このような感じで高圧的に来られると、症状を軽く言ってしまうように誘導されてしまうのではないか・・・と感じた。
翌朝、近所の小児科を予約しようとするも・・・。
朝になって、子供の熱は下がっていました。
でも何らかの感染症はあるだろうし、解熱剤も持っていないし、熱性けいれんになる可能性もあるし。日中のうちに小児科は受診しないと。
そう思い、朝の7時に近くの小児科のHPを検索。
予約システムがあり、会員登録をすると当日予約を取れるようだ。
会員登録を済ませ、本日の予約をぽちっと押す。
”本日午前の受付は終了しました。”
・・・・え?Σ(・□・;)
まだ朝の7時だけど?開院は8時半なのに?
開院時間になってすぐ、病院に電話。
新患で、本日受診したい旨を伝えた。
受付:「申し訳ありません、本日午前中は予約がいっぱいでして・・・。
午後になったら、午後の枠が予約サイトで予約できますので、そちらで予約をしてみてください」
私:「そうだったんですね・・・。わかりました。ちなみにネットだとすぐに予約がいっぱいになるようなんですが、ネットで予約が取れなかったときはどうしたら・・・?」
受付:「そうですね、その場合は受診できないです・・・。」
え!?(◎_◎;)
午後まで待っても予約できないことあるの?
午前中のうちに午後の予約をすることはできないシステム??
特に問診やトリアージなどもなく、言うなればスマホの操作技術と早起き力とWi-Fi環境で受診できるかとその順番が決まってしまうということであった。
別の小児科を受診するも、なんだかモヤモヤ・・・。
この病院がそういうシステムなら仕方ない。選択肢は二つ。
午後まで待って、ネット予約を試みるべきか、それとも午前中のうちに別の小児科を受診すべきか。
午後まで待ってネット予約できなかった場合、日中の受診が難しくなり、そうすると検査もできないということになる。それは避けたいので、違う小児科を探して受診することとした。自宅から30分以上かかるところだったが、受診できるなら・・・と思い病院に向かった。
病院につくと、熱があるということで別室で待機となった。病院で熱を測ると朝より上がっていた。
比較的空いており、待ち時間もそんなに長くなさそうであった。
しばらくして、看護師さんが問診に来た。
私は昨日から発熱していること、夜間救急に相談し本日日中の小児科受診を勧められたこと、発熱に加えて朝ミルクを飲ませたところすべて吐いてしまっており水分がとれていないこと、以前から哺乳量が少ないこと、脱水にならないか心配であることなどを詳しく伝えた。
しかし、当の本人はニコニコしている。
それを見て、看護師さんは一言。
「大丈夫そうですね~。」
え・・・。それだけ・・・?
今までの話聞いてた・・・?
わかってもらえていない感じがして、モヤモヤしているところに更に追い打ち。
看護師:「うちの病院は紹介状がないと初診料がとられちゃうので、次はかかりつけ探していってくださいねー。」
私:「すみません、それはわかってたんですけど、近くの小児科に電話したら午前中予約できなくて・・・午後も予約できるかわからなくて・・・。」
看護師:「今日はいいですけどねー。それでは先生来るまでお待ちくださいねー。
・・・
・・・冷たいな。
夜間救急と近医小児科、すでに2回も断られてここに来ているのにな・・・。
そしてしばらくして医師の診察があった。年配の先生であった。
入ってくるなり、
「この年齢だと突発性発疹かもしれないねー。」
と言い、聴診と、口の中と体幹だけ視診。
突発性発疹の説明を軽くされた後、
「解熱剤持ってる?」と。
持ってないことを伝えると「出しておきますね。」と。
そのまま去っていった。
・・・え?
終わり?
小児科知識が研修医レベルの私でも、もう少し鑑別診断あげられると思うんだけども・・・。
そして日中に受診したのに、検査も何もなし・・・?
年配の先生に向かって失礼かと思い聞けなかったのだが、今思えば私も「検査などお願いできませんか」と聞けばよかったと反省している。
確かにその時はにこにこして機嫌も良かったので、引きさがってしまった。
夜間、明らかに子供の様子がおかしい・・・救急受診へ
日中に受診したあと、薬局で解熱剤をもらって帰宅した。
帰宅後に38℃台まで熱があがっており、解熱剤を使った。
ミルクを飲ませてみる。咥えるものの、少ししか飲まない。哺乳力も弱い気がする。おしっこも少ない。
本当に大丈夫かな・・・。なんか大丈夫じゃない気がするんだよ・・・。
と思いながら、子供が寝たのと同時に私も寝落ちしてしまった。
・・・目覚めたのは夕方だった。
なんかうなり声が聞こえる。
うとうとしながら隣を見ると、我が子がずっとうなっている。
飛び起きて、呼びかける。
反応はある。しかしすぐに目を閉じてしまう。傾眠だ。
目はうつろで、苦しそうにうなっている。視線は合わない。
これはおかしい。
再度熱を測った。
39.8℃まで上がっている。
すぐに夫、母に連絡した。
夫は残業を切り上げすぐに帰宅してくれた。母も救急受診するよう促してくれた。
こういうときは自分ひとりで抱えてはだめだ。
そして小児科夜間救急へ連絡。前日とは違う病院であり、受診可能との返事をいただいた。
ほっとした。昨日の病院じゃなくてよかった・・・と思った。
入院になる可能性も考え、最低限の入院セットを準備して出発。
出発前に解熱剤を入れたので、多少は子どもも落ち着いて、表情が和らいでいた。
救急外来につくと、看護師さんが対応してくれた。高圧的な感じは一切なく、優しく対応してくれた。それだけでだいぶ救われた。
問診表を記入して、順番を待っていた。
しばらくして、小児科の先生がやってきた。年数的には中堅ぐらいの先生だろうか。
私と夫と同じ目線になるよう、しゃがんで、問診票を片手に、経過や心配事をメモを取りながらをひとつひとつ聞いてくれた。
今は落ち着いていると言われるかもしれないと思い、うなっていた時に撮った動画もみせると、うんうん、・・・としっかり観てくれた。
一通り聞き終わったあと、先生に
「一番心配なことはなんですか?」
と聞かれた。
私は
「ミルクが全然飲めてないので脱水になってないか心配です。あとは熱の原因がわからないまま重症化しないかどうか・・・。」
と答えた。
「そうですよね。そうなると、点滴しながら検査も並行してやっていくことになるのですが・・・入院でも大丈夫ですか?」
「お願いします。その方が安心です。」
このような流れで入院の運びとなった。
入院後に行った採血と尿検査の結果、尿路感染症であることがわかり、点滴と抗生剤が開始となった。
結果、小児科入院までのハードルは4つもあった。
ここまで、我が子の症状が出現してから入院に至るまでの経緯について書いてきました。簡単に流れを振り返ると、、
①夜間救急に受診を断られる
②日中開業医に受診を断られる
③日中小児科受診するも検査してもらえない
④二度目の夜間救急へ連絡、入院となる
・・・小児科に入院するまでにハードルが4つもありました。
正直、心が折れました。
小児科の先生に診てもらえるまでに、こんなに振り落とされるものなのか。と。
特に感じたのは、窓口である外来の看護師の対応の仕方によって、子どもが適切な治療を受けられるかが変わってくるということ。
今回とは別件ですが、我が子は別の小児科で検査や治療をしていたことがあった。
その件に関連して、園での投薬の必要性について保育園側から先生に確認してほしいと言われたので、その小児科の外来看護師にその旨を伝えた。
しかし、その看護師は先生には相談せず、
看護師「先生のカルテにはこう書いてあるので、こうしたらいいんじゃないでしょうか。」と。
私「そうかもしれないんですけど、一応保育園側からは先生に確認してほしいとのことでご相談したんですが」
看護師「いや先生のカルテにはこう書いてあるので。あとはお母さんが判断することなんじゃないですか」
・・・は?
人の話聞いてます?
私も一応研修医やったことあるんで、おそらく先生はこう言うだろうな~っていうのはわかってるんです。
でも保育園側としては、投薬は主治医の指示が必要だから、敢えてわざわざ先生に確認してほしいってお願いしているんですよ。
それをなぜ?あなたが意見を述べてるんですか?
あなたの意見は聞いてないんです。
必要なのは主治医がこのように指示したという事実だけです。
そして口調も高圧的、上から。
なめとんのか(# ゚Д゚)
・・・気を取り直して(笑)
確かに怒りもあるけど、やっぱり責められているように感じると苦しいです。
母親は不安なんです。我が子に適切な医療を受けさせられなかったら、私の責任だって思います。
多少医療的知識のある私でさえ、こんなに苦しいし不安でいっぱいでした。
全国のお母さんたちはもっともっと苦しくて不安です、きっと。
私が看護師さんの引きが悪いだけかもしれないです。
統計を取ったわけでもないです。
とても親身に対応してくれる看護師さんもいるのもわかります。
でも事実としてこういう看護師がいます。
その結果として、適切な医療が早期に受けられない子どもがいます。
もし、精神科医的に、本当に基礎的なところを彼女たちにアドバイスするとしたら。
どんなに忙しくても、
「そうですよね。お母さん不安ですよね。」
って一言だけは言ってください。
この一言だけで母親の気持ちはずっと楽になるんです。
共感的態度。大事です。
そして医師としてアドバイスするなら。
ちゃんと先生につないでください。
自己判断で勝手なこと言わないでほしいです。
あらかじめこういう時はこう対応するって先生に確認している場合は除いて、患者の症状に関連する質問は、原則先生に確認してほしい。
あとは最低限のトリアージ力はつけてほしいかな・・・。
電話対応で、これはやばそうだとか、これは待てそうだとか。判断は医師に任せるとしても、患者さんの状況をちゃんと医師に説明して、”これこれこういう状態なので心配です”と伝えられる人に外来看護師になってほしい。
看護師の配属は病院側が決めることが多いだろうから、これは難しいかもしれないけど(-_-;)
地方は医師不足です。小児科医なんて特に少ないです。
そんななか、身を削って子どもたちを診てくれる小児科医の同僚や先輩、後輩たちを、私は心から尊敬しています。
どうか、治療が必要な子を、その先生たちにちゃんとつないでほしいです。
これが母であり女医である私の、切実な願いです。
・・・長々書きすぎました。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
それではまた。