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ちょっぴり狂ったお隣さん

午後2時
今日は大学の講義もなく、昼寝日和の空を自宅のソファに寝転がりながら眺める

〇:はぁ〜ぁ...少し寝よっかな

こんな日はのんびり過ごすしかないと、LINEが来てないか確認し目を瞑る
するとタイミングを見計らったかのようにチャイムが鳴った。

〇:...いいタイミングだな

少し不機嫌になりながらも玄関先まで向かい、
普段からのぞき穴を確認する習慣は無いのでそのまま鍵を開け扉を少し開くと...


〇:......っん?

気がつくと恐らく目隠しか何かをされた状態で、
椅子に手足を縛りつけられていた

?:あ〜ようやく起きてくれた?

玄関先でチャイムを鳴らしたのはこの女性だろう
正直まったく状況が呑み込めないが、こんな時こそパニックになったら相手の思うつぼだと父さんが言ってたのを思い出した

〇:えっと、取り敢えず目的はなんでしょう?相場は金銭的なものだと思うんですが、あいにく今手持ちがない状態でして...

?:目的?そんなの君に決まってるじゃん

〇:え...?僕ですか?

?:そう、その...君を見かけた時からずっと...えっと...一目惚れというかぁ...

シリアスな展開から一変して、急に女性は甘い声で話し始めた

〇:(..もしかしたら知り合い?いやいやそんな事より、この状態なら上手くいけばここから逃げ出せることが出来るかも!)

〇:あのっ!

少し勢いをつけて前かがみになると反動で目隠しが外れた

〇、?:...え?

目の前に居たのはあの時の...
という事はなく、本当に知り合いでも何でもない女性が慌てて顔を手で必死に隠していた

?:あっ、あの!その、...み、見ないで〜!!

〇:えっ?いや、どなたですか?

無意味な問いかけを自分でも無意識にしてしまった
しかも両手足の拘束はご丁寧にリボン結びされており
口を使って簡単に解くことが出来てしまった...

恐らくここは誘拐現場で...
僕が被害者で彼女が加害者で...
椅子に座った僕と、床で丸くなっている彼女
...この現状だとどっちが被害者なのか

?:うぅ…って、あ!手足の拘束解かれてる!!

〇:いや、だってリボン結びされてたし

?:ごめんなさい許してくださいほんの出来心なんです...

ものすごいスピードで土下座の体勢になりながらブツブツと謝罪の言葉を言っている

〇:えっと...取り敢えず顔を上げて落ち着こっか

そう言うとゆっくり顔を上げた

〇:落ち着いたかな、大丈夫?

?:はい...ありがとうございますぅ...

〇:(なんで僕は誘拐犯を慰めてるんだろう...)

〇:えっと、今回のことは警察とかには言わないから安心して。幸い怪我も何もしてないしさ

?:本当ですか!?ありがとうございますぅ!!

そう言うと彼女は急に抱きついてきた

〇:え、ちょっ...待って!なんで急に抱きつくの!?

?:え?だって私の気持ち受け取ってくれたんでしょ?

〇:そんな訳ないじゃないですか!初めて会って名前も知らない人なんですから

?:え、じゃあ名前教えたら付き合ってくれるの!?私、池田瑛紗って言います!今年から大学生になりました!不束者ですが末永くよろしくお願いします!

また恐ろしくはやい早口で、しかもこのまま結婚まで持ち込みそうな自己紹介が放たれた

〇:だ、だからまだ付き合うとか言って無いじゃないですか!

瑛:えっ...そう、なんですかぁ...

急激に元気をなくしていく彼女に
不覚にも少しかわいいと思ってしまった...

〇:あっ、えっとその...

瑛:…うぅ、振られちゃったぁ......

今にも泣き出しそうな反則級の顔を見ているとつい

〇:わ、分かりました!取り敢えずお友達からとかじゃダメですか?

瑛:…え?それってつまり、また会ってくれたりするってこと?

〇:ま、まあ...そういう事になります

瑛:本当に...?

〇:はい、嘘はつきません

瑛:良かったぁ...振られてたら気まず過ぎてまたすぐに引っ越すところだったよ

〇:…え?引っ越す?

そういえばここの間取りには少し既視感を抱いていた

瑛:うん、だって〇〇君の家、すぐ隣だもん!

〇:(これは完全に...うん...)

〇:…やっぱりさっきの話は無かったことに

瑛:え…?

断ろうとすると彼女の大きな瞳がより一層大きく、まるでこれから獲物を仕留める為のロックオンかのように見開いていた

〇:な、なんでもないです

瑛:じゃあこれから、まずは友達としてよろしくね!〇〇くん!

〇:…よろしくお願いします

こうして、のんびりと過ごす筈だった休日は終わりを告げ

ゆっくりと歯車が動き出していった

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