世界に一冊だけの手作り絵本

 栴檀は双葉より芳し
  

 と言うのだから。解釈は違うかもしれないけれど。

 いずれ咲く花を待つのでなく、

 

種のうちから、双葉のうちから、価値あるものを大切にしたい。そして今、咲ける花があるならどんどん咲かせたい。


 ある女の子と、手作り絵本を作った。
 お別れする先生に向けて、私が筆で字を書き、絵をお願いした。
 私の書いた言葉を、自分の感性と体験でしっかり受け止め、絵に思いを転写してくれていた。

 一旦一人きりの空間に籠もると、絵は溢れ出るように生まれ、さらにプラスされ、そして完成した。入り込むと描くエネルギーはクルクル回り出し、よどみなく進み続けた。

 
 感動に理屈は無くて…

 毛穴でキャッチした思いが、胸に迫ってくるようで…

 自然に涙が溢れた。


 この才能は、いずれ大人になって、職業にして、お金を稼げる仕事となるかもしれない。
 または、違う仕事をして、スキルとして自分を助けるかもしれない。

 先のことは分からない。


 今は、

 描きたいから描く。
 贈りたいから描く。

 その子は、喜びにつながる体験を重ねている。自然体で。

 私は、娘が幼い頃描いてくれる絵が大好きだった。
 いつも、あったかい絵に、あったかいメッセージが添えられていた。
 誕生日、卒業、旅立ちの時、折りに触れ渡された手紙にはいつも、心に温かい波が押し寄せてくるようだった。
 

 今、こうして書きながら、二人の小さな絵描きさんに重なる思いを、自分の中に見つけた。


 好きなことを仕事にしたら、好きなことが嫌いに変わりそうだから、絵のお仕事はしない!と言っていたなぁ。

 それでも、娘の毎日に確かに活かされている感性は、今もなお、活き活きとして見える。

 子どもたちが幼い頃に買った沢山の絵本たちは、断捨離でほぼ手放した。
 それぞれの自立を覚悟するにあたり、母でい続けたい未練たらたらの私を手放すために。

 私も、自分が咲かせたい花を咲かせよう。そう思っている。
 

 


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