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VRCにおける文化形成のススメ ~ちょっとだけ自己肯定感のあげかた~
一章
そもそも文化とは何でしょう?
文化人類学の太祖として知られるアメリカ人研究者、クラックホーン (C. Kluckhohn) は「Culture (Classic Reprint): A Critical Review of Concepts and Definitions」において、文化に係る定義を次のように述べています。
「文化とは,歴史的に形成された,顕在的,潜在的な生活に関する様式の体系であって,ある集団の全員または特定の成員に共通に保有されているものである」※1
なんのこっちゃ??
簡単に言うと共通意識です。
例えるなら、初心者にはみんな決まって「JPTに行くといいよ」とオススメしたり、ポピ横で毎日自然発生的に乱痴気騒ぎが起きることを指します。
それと最近で言うなら、みみのこバトルについてもそうですね。
初期搭載のギミックから戦いの文化が生まれ、ファンアートがにぎわったり、専用のワールドができたり。
VRCって・・・ おもしろ!!・・・
二章
実は最近私も、ちっちゃくはありますが「文化?」みたいなものを作ることができまして。
自分語りで恐縮ですが数か月VRCをやっているのに、私は友達が全然いません(突然の自分語りは可愛い女の子の特権)。
数少ないフレンドのインスタンスに飛び込む勇気もなく、だからと言って新しく友達を作る気力もない。悲しきVRChatterはいつしか綺麗なワールドを巡るだけの怪物と化してしまいました。
そんなある日、不思議なご縁でとっても素敵な釣りワールドに出会いまして
一目ぼれした私はここに定住することに決めました。
定住と言っても簡単です。
同じ時間にパブリックを開いて、一人でだらだら過ごすというもの。
ラジオを聴きながら(なんとワールド内にラジオがあるのです!)
釣りをしたり、好きな音楽を聴いたり、時にはkindleで小説を読んだりして・・・
そんな生活を何日か続けると、なんと嬉しいことに私と一緒にダラダラすごしてくれる方たちが現れました!
・遠くの桟橋にいつもいて、プロフィールに自作の誌を載せている女性
・すごく小さくて一生懸命リールを巻くケモノアバターの方
・韓国人のペアのピカチュー(何故か釣りはしない)
他にも素敵な方々がたくさん!
ですが実は我々、会話を一切しません。ジェスチャーすらもなし。
ワールドに入退室記録もペンもないので、その場限りの関係です。
ただなんとなく同じいる空間が居心地よくて、毎日出会って、なんて言えばいいのでしょう
通学・通勤の時にいつも顔を見かける人みたいな・・・?
「今日はあの子英単語頑張っているな、自分も頑張ろ」みたいなね。
他人の些細な行動で励まされることってありますよね。
三章
ちょっと横道に逸れて、VRCにおける文化形成の事例を紹介しましょう。
①魚頭(フィッシュヘッド)文化
「人間の身体」に「海の生き物の頭」が乗っているアバターの人たちが集まる文化のことを指します。
調べたところ自然発生的に輪が広がったようで、VRCの潮流である「かわいい・かっこいい」とは真逆の自分にむしろ落ち着くようです。
noteにおける名記事はこちら
https://note.com/itoyo_monk/n/n12f3b4c6cf2b
②VRCくりえいてぃ部
イラストレーターや3Dモデルの人たちが24時間作業を共にできるグループ及びその活動ワールドのことを指します。
作業通話のように落ち着いた、それでいて穏やかな雰囲気が漂っています。
トキワ荘やいけぬこ研究会のようにクリエイターの方たちが集まる集合体はここVRCでも生まれるんですね。
https://vrc.group/EBI.4198
③くれ運
「なあ、ちょっと『くれこ』の運動に付き合ってくれないか?」が共通言語の、主催者(=くれこさん)と一緒に毎日運動するイベントです。
今でこそ毎日50人前後が集める人気イベントですが、「一人で運動するのつれーな!」という誰しもが持っている気持ちから発展しました。
文化形成というものは、潜在意識として誰しもが有する共通意識にこそ、その根底があるのでしょうね。
https://vrc.group/KUREUN.7765
四章
閑話休題
結局何が言いたいかというと「いまこのVRCで文化を形成することは結構誰でもできそうだよ」ってことです。
私の好きなVRC関連のnoteでこんな記事があります。
https://note.com/rich_donkey1897/n/n56500082c273
記事から文章を抜粋すると
「人気者なフレンドとの差や、寂しさ、焦り、承認欲求などの暗い欲求が根本的に埋まる事はありません」
「重荷になってるなら、中途半端な地位、名誉、名声全部捨てましょう」
「重い荷物を下ろし、軽装で歩く方が遠くまで行けると思います」
うーん名文章・・・
文体こそ荒いですが、根底には「あなたは何者でなくてもいいんだよ」って優しさに溢れています。
とは言っても私、思うんですよね。
「誰しもちょっとは他人に認められたいよね」って
だからこそ、自分で文化を作るのです!
文化形成のススメです!
(タイトル回収完了! 完!)
何も難しいことはしなくていいんです
あなたのできることから始めていきましょう。
・友達と会った時にオリジナルの挨拶をする
・毎日同じ時間、同じワールドでインスタンスを開く
・自分のファングループを自分で作ってみちゃう(難易度高)
・自分の好きなワンポイントアイテムをアバター改変に混ぜ込む
現実世界において企業のIR・広報担当が頭を悩ませている中、このVRCで文化を形成することは存外に簡単です。
最終章
さいごに一つ余談を
私にはとっても大好きなフレンドがいます。
ですがそのフレンド、そんなにコミュケーションが得意ではありません。
本人に許可を得ているので記載させていただくのですが、言葉を発することが苦手すぎて無言勢だと勘違いされることが多々あります。
当然そんな調子なので、集団に声を掛けにいくこともままならない。
そんな彼が友達作りでどうしたかというと、フジヤマのインスタンスを最初に作り、最初に入ってきた人に話しかけるということです。
いつしか、彼の行動は一部の人に知れ渡り、毎回入ってくれる人ができ、多くの友人に囲まれるようになりました。
(めでたしめでたし)
これも一種の文化形成の在り方だと思います。
有名人でなくても、コミュニケーションが得意でなくても、一芸に秀でてなくても文化は形成できます。
通学途中、英単語を一所懸命覚えていたあの子のように、あなたの些細な行動はいつしか誰かの心の支えとなり、それはやがて文化となるはずですよ!
Yes, 文化形成!
1) A. L. Kroeber and C. Kluckhohn, Culture-a critical review of concepts and definitions, A Division of Random House, 1963, p.119.
参考図書
https://www.amazon.co.jp/-/en/L-Kroeber/dp/1397667230
https://www.amazon.co.jp/Culture-Critical-Concepts-Definitions-Sciences/dp/1789872766