※ネタバレあり『蝶の毒 華の鎖』のPC版と移植版を比較する
下記は『蝶の毒 華の鎖(以下蝶毒)』の移植版が英訳されるとの発表を受けて、昨年ぷらいべったーに投稿したもの。noteに移動することにした。
ネタバレあるよ!!
蝶毒の移植版で英語の切り替えができるようになったということで...おめでたいね!
しかし!!個人的に移植版はPC版(18禁)と比べると劣ると思っている。蝶毒はR18の要素があってこそ成り立つ作品、CERO D内に収めてしまうと魅力は半減すると断言したい。
今回はPC版と移植版の違いについて、女探偵ルートと真島ルートから本文をいくつか取り上げる。ついでに真島のことも言及したい。
見比べながら入力したけど、間違っている可能性もある。予めご容赦を…
ꕥ女探偵ルート
自己否定する真島
【PC版】「しかし…どうして気付いたんです?俺が…おぞましい産まれの男だって」
【移植版】「ただ…どうしてあそこで産まれた子供が俺だってことが分かったのか…それが不思議なんです」
【PC版】「姫様があそこの古い女中に、あの別荘で汚らわしい子供が産まれたってことを聞いたというのはね」
【移植版】ではカット
【PC版】「産まれ落ちた瞬間から、この身は汚れているんです。汚れた血で産まれた命なんです」
【移植版】「この身は汚れているんです」
【PC版】「そんな人間が、復讐に身をやつしたところで、どんな恐ろしい罪に手を染めたところで、堕落するわけがない」
【移植版】ではカット
↑やはりPC版は真島が自己否定をして、自身を蔑むセリフが多い。初見時、彼のことを少し可哀想に思った。
大石さんの「産まれ落ちた…」の言い方はとても苦しそうでやりきれない気持ちになる。
「そんな人間が…」のセリフは真島が今まで悪事を働いてきた理由につながるので、婉曲化してでも移植版に書いてほしかった。
近親相姦を嫌悪する真島
【PC版】「同じ血の臭いに惹かれ合う…呪われた一族ですよ。俺はその結晶なんです」
【移植版】「…呪われた一族ですよ」
【PC版】「呪われた一族、って…自分と似た者に惹かれるのは、そんなに悪いこと…?」
「…姫様、何を言っているんですか」「親兄弟が惹かれ合うなんて、おかしいでしょう、同じような血が混ざり合えば、狂人が産まれやすくなるのを知らないんですか」「動物の本能的に、あってはいけないことなんですよ…近親相姦ほどおぞましいものはない!」「汚れた血を交らわせるのは、やめましょう。俺だってもう狂いたくない」
【移植版】ではカット
↑上記のセリフは近親相姦のデメリット(危険性)で、百合子と恋愛をする真島ルートで重要になってくる。初見時、こんなに近親相姦を嫌がる真島が百合子と恋愛なんてできるの?と心配になった。
移植版の真島は百合子とキスをして離別するが、PC版の真島なら絶対に百合子とキスはしないと思う。
ꕥ真島ルート
おかしなお姫様
百合子を買って抱く真島
【PC版】真島は、まるで悪いことをしているように項垂れて、百合子を抱く。
【移植版】真島は、まるで悪いことをしているように項垂れて、百合子を抱き締める。
↑野宮家への復讐を完遂した真島がなぜかつらそうで、百合子に対して罪悪感があるのは移植版でも分かる。
だけどこの結末の何がやばいって、真島は百合子を抱いている(抱擁ではない)っていうことだよ!この描写は超重要だよ!!
女探偵ルートで近親相姦をあんなに嫌悪し、おぞましいとか言っていたのにね…
悪人
PC版と移植版で違いはなかったので、特に書くことはなし。
上海愛玩人形
目と耳が不自由な百合子を可愛がる男
【PC版】左右の太股には深く切れ込みが入っており、毎日百合子を愛撫する男はいつもそこから手を忍ばせる。男は、毎日百合子を優しく抱いた。蕩けるように甘い閨房の営みに、百合子の恐怖心はいつの間にか消えていた。
【移植版】それら全てを自分に与えているのは、毎日この部屋を訪れる男だと、百合子は悟っている。最初はあった恐怖心もいつの間にか消えていた。
【PC版】男は熱く百合子を抱き締め、そのまま深く舌を絡めてくる。
【移植版】男はそのまま熱く百合子を抱き締める。
↑あれこの男は真島では?と誰もが思う短い結末。そしてこの真島も百合子を抱いているんだよ!!
本当に[壺中天]は良い...この真島が何を考え、どんな風に百合子と接していたのかが分かるからね。
秘めた想い
縁日を楽しむ百合子
【PC版】にはなし
【移植版】百合子はさっきまで落ち込んでいたことも忘れて、目を輝かせた。…
↑真島と駆け落ちしたばかりの百合子が両親や瑞人のことを忘れて、縁日の屋台を楽しんでいるのはおかしいという感想を見たことがある。まぁ分からなくもない。でも真島ルートで新しくストーリーを追加するなら、この部分しかない気もする。
夫婦になった兄と妹
【PC版】・【移植版】「…でも、俺にとっては、永遠の姫ですよ、あなたは」
【移植版】ではそれ以降がカットされ、結末を迎える。
【PC版】「…ずっと、こうして…抱き締めてみたかった」「ずっと…?」「ええ。…ずっとです。出会った、最初のその日から…」
↑ただでさえPC版でも短い真島ルートをカットしたら、もっと短いじゃん。
「…永遠の姫ですよ、あなたは」の次にあるセリフ「…抱き締めてみたかった」の下りもカットされていると思わなかった。でもまぁ初めて出会った時の百合子はかなり幼いので(VFBより)、なかなか際どい発言かもね。
真島の独白
【PC版】兄と妹の間に生まれた悪魔は、やはり自分の妹に欲情したのだ。
【移植版】その血を受け継いだ俺は、やはり同じ香りに惹かれたのだ。
【PC版】恐らく、俺を生み出したあの二人だけではあるまい。家系を遡れば、確実にその傾向は見えて来るのだろう。
【移植版】恐らく、俺の知る者達だけではあるまい。狡猾に罪を犯し、裁かれる事なく純化していく悪魔の血ー
↑やはり《欲情》という言葉は良い。百合子は実の妹なのに、性的な目で見ていたことがはっきり分かるので。
「恐らく、俺の知る者達…」についてはかっこいい書き方だけど、石川家は近親相姦の傾向があると婉曲化せずに書いてほしかった…結構大事な設定なので。
だからこそ[永遠の下僕]で斯波さんと百合子の間にできた子どもが男の子と女の子なのは怖いと分かる。そして[女探偵]で百合子がずっと独身なら、近親相姦の呪いを受け継がないという意味では1番ハッピーエンドなのである。
野宮家について話す百合子
【PC版】にはなし
【移植版】時折、彼女は無邪気にあの家のことを口にする。俺はその度に心が醜く濁るのを感じるけど、家のことを話すなとは言えない。俺にとっては憎むべき場所だが、彼女にとっては生まれ育った大切な場所なのだ。そして、俺があの家を憎む理由を話すことができない以上、彼女にあの家を思い出さないでなどとは頼めない。
↑PC版にはない下り。百合子は野宮家と縁を切るつもりで真島と駆け落ちしたが、たまに彼らのことを思い出して懐かしむんだろうね...
ꕥ最後に
真島と百合子のこれからについて
【PC版】・【移植版】「ちょっと!これからは、秘密ごとはナシよ!私たち、一緒に暮らしてゆくんですからね!」「…ええ、もちろんです。でも大丈夫ですよ、俺の仕事のことは心配しなくても」
↑違いはないけど言いたかったので。初夜の時のやり取りなんだけど、読んでいてやっぱり悲しいと思ってしまう。
[秘めた想い]は完全なハッピーエンドではないからこそ良い。そのうち生活が破綻しそうで心配だけど。いつか百合子に真島は兄だとバレる気がする。一生2人で夫婦として幸せに暮らしました、お終いってなるんだろうか…
乙女ゲームは女主人公と攻略キャラが両想いになってナンボなのに、真島と百合子は結ばれて一緒にいることが最適解ではないんだよね。正しくないからこそ良い。だから真島と百合子の関係は面白くて好き。
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