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「挫折から始まる物語」
上杉拓哉の物語
僕の人生は、ある意味で挫折から始まったのかもしれない。
大学を卒業してすぐ、遠縁の親類が経営する食品商社に就職した。創業からの伝統を重んじながらも、新しい風を取り入れようとするその企業は、将来有望な若手に手厚い投資を惜しまない社風だった。僕も例外ではなく、将来の幹部候補として、戦略、財務、営業すべての分野でハイスペックな教育を叩き込まれた。朝から晩まで、ひたすら働き、学び続ける日々。成功を掴むためのレールは、誰もが羨むような直線だったはずだ。
でも、それがいつから「無理」になっていたのか、自分でも気づかなかった。
ある日突然、身体が動かなくなった。高熱、激しい咳、止まらない疲労感。診断は肺結核だった。しかも、かなり進行していたらしい。「しばらく休んでください」という医者の言葉は、人生を止められたように感じた。
半年以上の療養生活が始まったが、その時間は思った以上に静かだった。朝の慌ただしい通勤も、夜遅くまで続く会議もない。ただ、静かな部屋で自分と向き合う時間。初めは苛立ちや焦燥感ばかりだったが、次第に「自分は何のために生きているんだろう」と考えるようになった。
僕は、誰かが敷いたレールの上を走っているだけだったのではないか。成功を目指して突っ走っていたけれど、本当にそれが自分の望んでいた未来だったのだろうか――そんな問いが頭から離れなくなった。
そして、療養中に出会った本や人々との交流が、少しずつ僕の心を変えていった。大きな企業でのキャリアだけが人生ではない。地方で懸命に生きる人々、伝統を守りながら新しい価値を生み出そうとする人々、その一つ一つが鮮やかに思えた。
「次に動けるようになったら、自分の手で未来をつくろう。」そう決めたのは、療養生活の終わりごろだった。
この経験が、現在の僕の活動の礎になっている。徳島での「神楽創生プロジェクト」では、地域の文化と経済を未来につなげる挑戦をしている。そして、東京で9,000名が集うNLVコミュニティでは、深い対話を通じて新しいビジネスモデルを共に模索している。
人生は一度だけだ。その中で何を選び、どんな風に歩むか。僕の物語は、まだ始まったばかりだ。読んでくれてありがとう。そして、もしどこかで僕の話があなたの心に触れたなら、ぜひあなたの物語も教えてほしい。
折瀧浩二