初めて天才とカテゴライズした人
天才が帰ってきた。
いや、正確に言えば彼はずっと天才なのだけど、久しぶりにトキメキが止まらない作品と出会ってしまった。
ここではこのページ開設の経緯とは離れた、もっと前から好きなアーティストのことについて書きたいと思う。
彼の名は
清竜人
経歴を知ってる人からすると苦手意識がある人もいるかもしれない。正直私も今は他人に紹介しづらい。なぜならリリース毎に音楽性(とご様子)がごっそり変わる人だから。
きっと書き尽くされているであろう彼の変遷について、私のような凡庸な人間がどう捉えているか。それは。
"天才は凡人の尺度では測れない。"
この一言に尽きる。
彼はずっとその作品性を変えつつクオリティの高い作品を届けてくれる。たとえそれが自分の好きなジャンルではなくても受け入れざるを得ないと思わされるほどに。
最初の出会い
2010年1月、当時なんとなくつけていたエムオンにこの曲が流れた。
切なく苦しいファルセットが耳に痛いほど届きすぐに彼を調べてみた。
1年前にデビュー。
デビュー曲を聴いてすぐauのCM曲だと気がついた。
これがデビュー曲で当時19歳。
一体何者なんだ。
すでにアルバムが出てるということで早速DISCを購入した。
かわいいパッケージに詰まった心地よい破壊力。メロディーだけでなく歌詞もすでに彼にしかない世界観が、哲学があった。
「(清竜人は)うん、守らないと。国宝ですよ(笑)。詩人としての言葉もいいし」
―椎名林檎 MUSICA VoL.27(2009年6月15日)
林檎嬢に国宝と言わせしめた彼。(笑 つきではあるが笑)
とんでもない大型新人だ。翌月に2ndアルバムリリースがあったことも重なり、ここからすっかり彼の音楽に魅了されていった。
衝撃
2012年5月。
2nd、3rdと順調に清竜人popsファンの道を歩んできた人はみんな驚愕したはずだ。
"え?ナニコレ???"
解禁された4th アルバム『MUSIC』
その内容は電子音楽に振り切りミュージカルテイストになっていた。
クセがすごい、というかクセしかない。
いくらファンといえどこのアルバム全曲をリリース直後すんなり受け入れることはできなかった。
後々のインタビューを読んで理解したのだが、彼自身は3rdアルバム『PEOPLE』前にすでにこの音楽分野に興味が湧いて創作のベクトルもそちらに向いていたのだが、事務所かレーベルかの大人の方針があって作られた作品が3rdアルバムだったのだ。
(大人の方針ありがとう。今振り返っても絶対守った方がいいラインだったと思う。)
PEOPLEはアルバムを通して人間愛が伝わる良作だった。おそらく本人的に不本意な部分もあった仕事だったのだろうが、それでこのクオリティなのか…。
底知れぬ才能だ。
きっとボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソングは何百人かの結婚式で流れていると思う。
話を4thに戻そう。
MUSICについてはここでもうついていけないと判断した人が多かったのかなと思う。(SNSリアクションや売上を見る限り)
私もこのアルバムは苦手だった。当時声優歌唱やアニソンに興味を持てなかったしミュージカルなんて触れたこともなかった。正直、なんでこっちの方向に行ってしまったのかなと。
だけど彼の作る音を信じたいという気持ちから全作品聴いた。
acting要素を落とし込んでいるのは未だにこそばゆくなってしまうが、音の作りに関してはやっぱりの信頼感がある。好みではないが聴いてみてなんとか受け入れられた。
衝撃作後の限定アルバム
4thを経て、5thはどんな作品が出てくるのだろうかと思っていたがそれはすぐにきた。限定生産のアコースティックアルバム。その名も『KIYOSHI RUJIN』
正直に書けば4thをすんなり受け入れられなかった身として、購入する気にはならなかった。
だが、ここでリリースされた1曲を後のベストアルバムで聞いてまた心を掴まれた。
ぼくはバイセクシャル
これは彼自身がバイセクシャルだということをカミングアウトしている作品ではない。
アイデンティティとは何か?自分としてどう生きるのが正しいのか?現世を迷いながら生きている人の内省が散りばめられている曲なのだ。
ピアノ伴奏のみで歌詞がよく届く。いわゆるJ-POP構成ではない曲展開なのに馴染みがよく、『見つからないなんにも』というフレーズはおそらく日本語がわからない人の耳にも残る。
とてもいい。
(が、センセーショナルなタイトルのおかげで紹介しづらいことこの上ない。笑)
作曲だけでなく作詞においても才能の塊だと再認識した。
WORK
大分ファンが減ったのではないかと思われるタイミングでリリースされた6th アルバム『WORK』
私も少し心が離れてしまっていたが、先行で上がっていたteaserを見てアルバムに対する期待値が一気に上がった。
電子音楽とアコースティック(というかJazz)の融合。これまでの5枚のアルバムの総括とも言える作品になりそうだとワクワクし、このアルバムを手に取った。
その中の1曲、きっと彼のmasterpieceとなるであろう作品と出会えた。
このアルバムの発売が2013年。
今ここに文を書いているのが2023年。
10年経ってなお、この曲を聴くたびにその美しさに感動する。曲の展開が進むたびに恋をしている時のような高揚感がある。
私にとっては完璧な音の世界が広がっている一曲。
関ジャムというTV番組で音楽プロデューサーの蔦谷好位置さんが「普段曲を聞いているとここをもっとこうしたら…と思うことが多いのだけど、この曲は直したいと思うところが一切ない(ニュアンス)」と言って下さっているのを見て、ただのリスナーだが嬉し泣きした。それ程に大好きな一曲。
このアルバムは全体的にいうとFusion※というジャンルらしかった。(作品を通して初めてジャンルを知った。)
清竜人の作品性としては特別にJ-POPの誰かの影響を強くは受けてはおらず、父親の影響でFusionをよく聴いていたらしい。だからJ-POPばかり聞いてきた私にとって彼の音楽性は○○っぽいと感じることが殆どないし、このシンプル&クリーンなメロディーの裏で複雑なコードがいくつも重なり美しい音楽としてひとつのものになっているんだなと理解できた。
アレンジも含め全て1人でディレクションしたアルバムがこんな素晴らしいなんて…これは次作も楽しみだ!そう感じたアルバムになった。
※Fusion(jazz fusion)とは?
1960年代後半から1970年代初頭に発生した、ジャズを基調にロックやラテン音楽、時にはクラシック音楽などを融合させた音楽のジャンルである。
(Wikipediaより引用)
25
みなさん、ご存知でしょうか?清竜人25という名前。
名盤 WORKのあと、1人でやるのに飽きたなぁと思った彼。
なんと。
アイドル始めました。
それも一夫多妻制で、周りの子はみんな奥様(という設定)。
"えぇーーー!思ってた方向と180度違うんだが!!!(クソデカボイス)"
MUSICぶりのぶっ飛び。
"竜人くんよ、あんたの脳内一体どうなっとん???"
本当にあなたの素晴らしい過去作がなかったらとっくにイロモノ扱いしてろくに曲も聞かなかったろうけど、このアイドル期も残念ながら(?)音はいい。
歌詞は変態性丸出しだし、終わりかけの惰性であろう期間の作品は曲も少しつまらなくなっていたが。(変態性に関してはMUSICで免疫が出来ていたので無問題)
それにしてもその発想の斜め上感よ。
こんなカテゴライズ出来ない難解な男、そうそういない。彼を理解するのに最も助けになったインタビューリンクは以下🔗
(プロインタビュアー吉田豪さん、さすがの引き出し力でした!ありがとうございます)
これを読んだあと、マネージャーさん含めマネジメント側の方はこの変態天才をどう商業音楽として落とし込もうか苦慮されたんだろうなと、一社会人として手を合わせ想いを馳せずにはいられなかった。(本当にお疲れ様です、ありがとうございます🙏✨)
と同時に、自分がこれをやりたいから、面白そうだからという理由だけでとんでもない方向に飛んで行く彼のこともとても愛おしいと思った。
全てのアーティストに共通して想うことだが、こと作品づくりにおいてファン・リスナーのことなど全く配慮しなくていい。こういうものが流行ってるから・売れそうだから、というマインドで作品は決して作らないでほしい。なぜならそれが素人リスナーレベルでも透けて見えるから。
このインタビューからはそういう邪神みたいなものが全くなくて、好奇心からあちらこちらにぶっ飛んでいることが理解でき好感が持てた。
再会
清竜人25解散前後くらいにリスナーと作るバンドTownプロジェクトが開始されたのだが、その頃から私の仕事が忙しくなっていたこともあり本格的に彼を追わなくなってしまった。
そこから月日は流れ。
つい最近、最新曲がリリースされ、それがジャンプ作品Dr.STONEのアニメテーマ曲になっている事を知った。
清竜人…懐かしい。かつて愛した男。(語弊)
そう思いながら最新作と共に一作前のアルバムも聞いてみた。
WORK以来の大スキど真ん中だった。
このアルバムで特に1番反応してしまうのがnothing…
手癖のような表現で「こういう曲を作ってしまいがち」と彼はインタビューで答えていたが、そんなこと言わないでくれ。Fusionをたくさん吸収してきた清竜人が作るJ-POPが大好きなんだ、私は。他の曲もいい。一曲ごとにテイストは違うが、だからこそ一層アーティスト清竜人のこれまでの軌跡をたどるような感じがして、より立体的に彼の音楽性を感じ取れる。
FEMALE最高だよ。
リリースから1年も経った今頃聴き始めて突然の清竜人ブームが再来している。
ごめんよ竜人。あなたやっぱり天才だったわ。聴きながらトキメキが止まらないよ。ありがとう。
もしかつて清竜人の音楽に触れ好きだったが今離れてしまっている方がこれを読んでいたらぜひ一度戻ってきてほしい。
初めましての方もよかったら一聴して頂きたい。そう言いたくなるくらいの作品だった。