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871ンスタライブ #022(w/視聴者ハルさん)

#871ンスタライブ #022
2021年1月4日(月)

テキスト:宙組

主催:柳井貢(以下:871)
ゲスト:ハル

(871) こんばんは、お疲れさまです。今日は去年の早い段階からDMを頂いていて、ちょこちょこやり取りをしていた一般の視聴者さんと繋いでお話します。

(ハル) こんばんは!

(871) こんばんは。改めて、配信をやることになった経緯を振り返ってもいいですか?

(ハル) 大丈夫です!お願いします。

視聴者ハルさんの状況と、今回の配信に至った経緯

(871) 今、お仕事をされていて、春に転職するんでしたっけ?

(ハル) そうです。4月に上京しようかなと思っていて。

(871) 4月に上京して、何をやるかはもう確定ですか?

(ハル) 確定して…。
12月に凄く悩んでて。私は今、栄養士の資格を持ってるので病院で働いてるんですけど、勿論、栄養士の資格を活かした今の仕事も良いなって思ってるし勉強も楽しいんです。でも音楽を聴いてライブに行くようになったら、音楽関係の仕事も良いなって気になりだして。そしたら、一昨年くらいに音楽雑誌のアルバイトを見つけたんです。

年齢を重ねるとそういうのって動きづらくなると思うので、後悔しないように、バイトでも全然良いので、今のうちにやりたい!と思って。音楽雑誌の仕事をすることになったらフリーターになるんですけど、その求人を見つけたのが就職する前だったので、フリーターになっても大丈夫なように今のお仕事で貯金をして準備は出来ていて。金銭的に不安な部分もありますが、いつでもいけるように準備をしました。12月の段階では、“4月になったら上京して応募しよう!”と思ったんですけど、その時に柳井さんのインスタライブを観て、DMを送らせて頂いたんです。そしたらそのDMの内容を、後日インスタライブのテーマとしてあげて下さって。その時に答えていただいた回答が、「企業に入るのもいいけど、まずは今出来ることからやってみたら?」っていうことだったんです。
(▼その配信はこちら )

その時栄養士か音楽系に行くのか凄く悩んでいたので、柳井さんのお話を聞いて、栄養士でとりあえず就職して、noteをちょっとずつ書いてみようかなっていう方に落ち着きました。すみません、長くなっちゃいました。

(871) 全然全然!なるほどね。栄養士のお仕事は見つかってるの?

(ハル) 大学から紹介を受けていて今連絡を取っているところなので、チャンスはあるかなっていう感じです。

(871) なるほど。まだ100%固まってるわけじゃないけど、順調には進んでいるっていう感じだね。凄いじゃん!
僕も責任重大だなとドキドキしますけどね(笑)今日、送ってもらったnoteの『THE ORAL CIGARETTES』(以下:オーラル)の『What you want』のレビューを読ませていただきました。


あのレビューは、一つの方策としては全然間違ってないと思うし、ハルさんは『What you want』が凄く好きで思い入れがあって、こういう考え方の下に書かれている楽曲だと仮説を立てた上で、楽曲のアレンジとかが素晴らしい作りだ、みたいなことを語ってくれているわけじゃん?
純粋素朴な疑問として、ハルさんのアウトプットとしての目的と、誰かのインプットとしての目的のマッチングがどう成立するのかな?っていう。成立してないってことではないんだよ?だけど、万人でもないと思うの。

(ハル) そうですね。私もこうしたいっていう理想はあるんですけど、のめり込んで書いた後に冷静になって見ると、ズレてきてるというか、やっぱり自己満足で終わってるのかなって思います。

(871) なるほどね。

栄養士と音楽ライターの両立

(871) 俺は、栄養士とギリギリまで両立してみたらいいんじゃないかなと思ってて。物理的・な難しさだったり、時間的な難しさはめちゃくちゃあると思うんだけど。っていうのは、栄養士の仕事についてちゃんと分かってる訳ではないんだけど、栄養士の仕事って基本的にニーズがあって、そのニーズに対して知識と経験値で応える役割じゃん?

勿論栄養士の中にも研究的なことをやって、ニーズのないところに発見を持ってサービスを提供する人達もいるとは思うんだけど、病院や施設で勤務している栄養士さんって基本的には「こういう病気だからこういう栄養を摂った方がいい」とか「こういう栄養を摂りすぎない方がいい」っていうところに、食事や材料のアドバイスするっていう仕事なんじゃないかな?って思っていて。それって基本的にはニーズがはっきりしてるじゃん。患者さんの求めてる事が明確にあって、それにどう応えるか、正確に丁寧に且つモチベーションを維持できるように提供できるか、っていうサービスとしてのフォーマットができていると。

それもすごく重要なことだなって思っているんだけど、かたや、音楽ライターとかエンターテイメントの仕事って、ニーズに応えるだけだとちょっと物足らないというか。ニーズに応えることが目的なら栄養士とか、そういうニーズがハッキリしてることを仕事にする方が充実感は得られやすいと思う。

例えばオーラルの楽曲の良さを語って、「わかるわかる!そういう良さあるよね!」っていう共感って、一個のコミュニティであって、横の繋がりが生まれるっていう意味では僕らにとっては凄くありがたいことなんだけど、オーラルを好きじゃなかった人が好きになる動機にはそこまでなってないというか。ゼロだとは言わないけど、そこまで可能性が高くないというか。好きじゃない人を文章1つで好きにさせるっていうのは物凄く難しいことだし、そういう現実を踏まえた上で仕事にするってなると、好きじゃないアーティストから依頼を受けてお金をもらった時に、どういう語り口でその音楽を語るのか?みたいな葛藤がすごい出てくる。そうなった時に対比として、明確なニーズに応えるっていう仕事もやりながら、ニーズが明確ではないところに供給していくっていう両方をやるのが人生経験としてすごい重要なんじゃないかなと思っていて。だから僕は可能な限り両方を経験し続けるのが良いんじゃないかなって思ってる派、みたいな感じですね。

(ハル) あ〜、そうですね。確かにそうした方が自分の為にもなりそうな感じがします。

(871) 精神安定にも良いと思うよ。ちょっと昭和的な感じだけどさ、「俺にはサッカーしかないからサッカー選手になるしかないんだ!」みたいなモチベーションって凄く強いけど、危なっかしいというか。人間としての魅力はそれだけとは限んないじゃん?みたいな。やっぱ人一人の力や存在価値、能力って「これしかない!」ってことはまずないはずだから。

ちゃんと自分の存在確認をする上で、2.3個居場所を持ってるのは自分の為にも重要じゃないかなって思っていて。音楽が好きだからバイトでもその道一本で行く!って決めつけて、フリーターでもそれをやる!みたいなのはダメだとは思わないし、そういう人の強さもあるんだけど、ハルさんの悩んでる状況を踏まえると、今のその選択で俺は全然良かったんじゃないかな〜って思ってるって感じ。

お節介だよね?(笑)ごめんね(笑)

(ハル) いや、そんなことないです!(笑)本当に私は、自分の考えだけでいってたら危ない方に進んでいたような気がするので。(音楽雑誌のアルバイトに)受かるかどうかもわかんなかったですけど、柳井さんが話題に上げて下さった時の「変化ハイ」になりやすいっていう話が凄く刺さりました。典型的な変化ハイになりそうだったので。

(871) 変化ハイは本当に皆気をつけてほしい。自分に対してもそうだけど。節目はやっぱりインパクト強いから、節目に向かってのモチベーションって結構作りやすいんだけど、節目を越えてから継続できるかどうかの方が実は凄い重要。変化ハイに関しては受け売りじゃないから、良く名前を付けたなって自分で思ってます(笑)節目に向かって自分のモチベーション高めるっていうのはダメなことじゃないし、コントロールさえ出来れば変化ハイがプラスに使えることもあると思うんだけど。「今、変化ハイだな」って気づけてない状態でハイになりすぎてるっていうのはちょっと危なっかしいとは思うね。

因みに、読む方も含めて、インタビューとかディスクレビューとか、ライブレポートとか漠然としたアーティスト批評とかの中で、何が好きとかあったりするの?

(ハル) 物にもよるんですけど、アルバムとかCDのディスクレビューと、ライブレポートが結構好きだなって思います。

(871) 会話の中でのことより、客観的批評性というか、解説に興味があるのかな?

ディスクレビューやライブレポートの魅力

(ハル) ディスクレビューは、レビューがあることでイメージが湧いたり、曲の背景や言葉からの連想、繋がっているテーマ等がわかるので面白いんです。ライブレポートは、拘った演出の中で何を表現しているかとか、どんな伏線を張っているかとか、1つ1つの演出のヒントやトリックを知れるのが面白いなと思います。曲だったら4~5分、ライブなら2時間とかなんですけど、その中でこれだけの世界観が詰まっているんだなっていうのを知れると凄い感動します。

(871) なるほど。一視聴者、一リスナーでは気付き切れない視点とか、見解を補完してくれる部分の良さっていう感じかな。ちなみに固有名詞出さなくて大丈夫なんですけど、特にこのライターさんが書く原稿が好き、みたいなのはあったりするの?

(ハル) あります!

(871) その人が書いてると読みたくなったりとか、下手したら対象アーティストよりライターさんに興味があって読むみたいなことがあったりする?

(ハル) あります。

(871) そうなのね。そこを掘る魅力ってなんなんだろうね?

(ハル) きっかけかなって思います。私が行ったライブで、とあるライターさんがライブレポートを書いていて。ライブレポートとか音楽を文章にしたものって、誤解が生まれないようにだと思うんですけど、わりと難しめの言葉を使ってることが多くて。ちょっと申し訳ないんですけど、それでなかなか入ってこないってことがあるんです。私はライブレポートを集中して読んで、自分が行った気持ちになって疑似体験とかしてるんですけど、そこまでに至らないっていうか。

頭では理解してるけど体の中まで入ってこないことが多いんですけど、そのライターさんのレポートは本当に臨場感が凄くて、「このアーティストのファンなのかな?」って思うくらい特徴ある歌詞を上手く文章に入れてたりして、すごい惹き付けられて。読んだら、本当に楽しいライブに行った感じになりました。そのライターさんの記事は、そこまで興味ないアーティストのものでも読みますし、普段聴かないアーティストのレビューとか読んで好きになったりしてますね。

(871) そう言って貰えるのは、ライターさんの立場からすると冥利に尽きるよね。だとすると、その人のような文章を書きたい気持ちもある?

(ハル) あります。でもなかなか自分でやると出来ないというか。『What you want』も本当は2週間前くらいから取り掛かってて、3日くらいで出来たらいいなと思ったんですけど、全部書いて読み直して…っていうのやってると尽きなくて。自分の中でイメージが湧いていても、それを文章にすると上手くいかず、そういうのを繰り返して昨日やっとあげた感じですね。自分のキャパを超えてるというか…。

(871) “キャパ“でも間違ってはないと思うんだけど、思うことがあるとすると、如何に編集意図を明確に持てるか、みたいな気もしたかなぁ。切り口は凄く良かったと思うの。歌の中で出てくる”あなた“っていうのがもう1人の自分だって言う仮説。で、例えばそのポイントにとにかく集約してタイトルをつけるなら、”もう1人の自分に向けた○○ソング〜“みたいなさ。自分の中に表と裏があるというか、余所行きの自分と、自分しか知らない自分と、2人ぐらい存在してるって恐らくかなりの人達が抱くであろう感覚だよね。それを提議して、疑問なり意志を投げかける曲ですよ、みたいな。

私が作り上げた仮説と切り口に完全に振り切った編集をすることによって、オーラルが好きかどうかではなくて”心の中にもう1人の自分を抱えてる人“がその文章に触れた時に「あ、どういう曲なんだろう」って聴いてみるみたいな。そういう可能性は秘めてるレビューだったような気はするけどね。

(ハル) ありがとうございます。
そうなんですよね…。オーラル以外にも曲のレビューを書いていて、そのレビューのタイトルががっつり「○○(曲名)を聴いて」っていうので。そうやってピンポイントで絞っちゃうとその曲名で検索した人しか見ないし、「その曲知らないわ」ってスルーされるなと思いました。

音楽を届け、提供する上でのスタンス

(871) ちょっと意地悪な角度かもしれないけど、曲名を伏せたレビューで、曲を聴いてみたいってなる文章が書けると凄く役割を果たせた感じがするよね。「こんなことを歌ってたり、こんな問題定義をしている楽曲が世の中にはあるんですよ、あなたは知ってますか?」で、一番最後に曲名を紹介するみたいな。文章を読んでる時は何の曲の話をしてるのか全然わかんないんだけど、読んだ上で聴きたいか否かみたいな。それが客観視点の醍醐味なのかもしれないね。ちょっとストイックすぎるような気もするけど。「オーラルの○○っていう曲のレビューを書きます!」っていうタイトルにしちゃうと、オーラル好きな人は読むし、オーラル興味無い人は読まないっていうものになっちゃうよね。

(ハル) 私がディスクレビューに惹かれて書きたいと思った理由に「曲の本当の良さを伝えたい」みたいなのがあって。皆が曲を知るきっかけって、テレビとかで、曲そのものとか見た目とかから入ると思ってて。そこでイメージがついちゃうと、偏見…っていう言い方は誤解あるかもしれないですが、そういうので判断されちゃうと勿体ないと思ったんです。「本当はこうなんですよ、ここまで考えられてるんですよ」っていうのを書きたいなって思ってるんですけど、曲名をがっつりタイトルにしちゃうと、いってほしくない方向にいってしまうなと思いました。

(871) そこは両方あるよね。僕らはベースとして心のどこかで、「音楽って素晴らしいものだ」っていう共通の概念を持ってる人達同士じゃん?で、そこをあんまりにも強く確信を持ちすぎるのも俺はちょっと危ないな、って思っていて。もちろん、素晴らしいはずだっていう気持ちは持ってなきゃいけないし、持ってるんだけど。

例えば、これは完全に僕の考えなんですけど、スポーツで勇気を与えたり、生きる希望を見出してる人達に対して、「スポーツより音楽の方が素晴らしい!」みたいな議論って俺はあんまり興味なくて。だけどやっぱり、一人の人間がエンターテイメントを享受できる可処分時間は限られているから、それの奪い合いをしている事実もある。その中でどういうスタンスでエンターテイメントのプロモーションをするべきかは、懐を広く持った上で、“こういうのもありますよ“という感じでスッと、如何に自然に差し出せるかが重要な気はしていて。その辺の塩梅が凄く難しいなって常日頃思ってたりするんだけど。
やっぱり今、エンターテインメントを享受する為のプラットフォームが、テレビからスマホ、YouTube、TikTokっていうところに若い子達が動き始めている中で、その子達が享受してるものを否定はしたくないなと思ってる。そこに楽しみがあって、それが「明日も学校頑張ろう!」とか「アルバイト頑張ろう」とかになっているのは事実としてあるから、そこに割って入るというよりかは、”こういうのもありますよ“みたいなスタンスでスッて差し出せるかどうかみたいな。

僕らが例えば「YouTuberなんてしょうもねー!音楽だけが素晴らしいエンターテイメントだ!」みたいなスタンスでいてしまうと、噛み合わないまま機会損失しちゃうんじゃないかなってちょっと思ってる部分があって。あ、これ、ハルさんがそういうこと言ってるとかでは全く違うんですけどね。さっき言ってもらった、見た目とかテレビのタイアップとか、そういうカジュアルなところでしかきっかけが生まれづらくなるのは勿体ない、っていう部分を発端にこの話を勝手にしちゃってるんですけど、やっぱりきっかけはカジュアルであるべきだっていう気もするんですよ。ただ、そのカジュアルさを、見た目とかテレビのタイアップとかTikTokのバズじゃない形で、如何に僕らはスッと差し出せるか。それがもしかするとレビューでいうところの気の利いたタイトル一つで、小さくてもそういう事が生まれていくんじゃないかな、みたいな。

ちょっと難しかったかな(笑)自分でも話してて、ちょっと迷子になりかけてるギリギリのラインにいますけど(笑)気が利いてる、みたいなことは結構ポイントかなと思っていますね。

(ハル) やっぱりそういうのって、計算高くやらないと難しいですよね。

対立・対比構造で語ることの難しさ

(871) そうだね。計算高く…もそうだし、ちょっと違う言葉に言い換えると、他のエンターテイメントを否定せずに音楽やアーティストの良さを見抜いた上で、言語化できるかどうか。存在する他所のエンターテイメントと喧嘩するのも俺は凄く勿体ないと思ってて。
勿論、自分個人の興味ある・ないはあるよ?じゃあ僕が、ボーカルダンスグループみたいなものに興味があるかどうかで言うと、すごく掘り下げるほど興味があるわけではない。でもそういう人達のことを好きな気持ちを理解しようと頑張るのはすごく大事だと思ってるかな。実際で楽しんでる人がいるからね。

(ハル) 書く時に結構ネックだなって思うのが、自分が思うように書いた方が持ち味とか出るんですけど、結構私の言葉って刺さりやすいというか、もしかしたら誰か傷つけちゃうんじゃないか、みたいな言い回しを結構しちゃうんです。悪気がある訳ではなくて無意識なんですけど、すごい集中して文章を書くと、結構乱暴っていうか、雑な言い方だったりして。誰も傷つけない穏やかな感じに書いて、且つ自分の言いたいことや作曲の良さを書くって本当に難しいなって思ってて。それが今柳井さんが言ってた、他のエンターテイメントと喧嘩するみたいなことになりそうだなと思いました。

(871) そうなんだよね。何かを表現する時にわかりやすい対立構図は作りやすい。政治とかもそうとも言えるじゃん。○○党はこうだけど、○○党はこうです、みたいな。仮想敵を作って、「僕らはそうではないですよ」っていう語り口ってキャッチーにはなるし、分かりやすくはなるんだよね。だから一概にそれを否定しているわけではないけど、否定じゃなくてもできる可能性はあるよね、とは思う。

例えば、野球の競技人口や観戦人口を増やしたいっていう“野球さん”と、サッカーの競技人口、観戦人口を増やしたいっていう“サッカーさん”がいたとして、「野球は○○だから面白くないけど、サッカーは○○だから面白いよ!」っていうサッカーさんと、「サッカーはね○○な部分が面白いのはむちゃくちゃ分かるんだけど、野球には○○な面白みがあるんだよね!」っていう野球さん、どっちの語り口が興味持てるかって、俺は野球さん(後者)な気がするんだよ。片方を落として上に行くんじゃなくて、片方も上げた上でもう一方の良さも言うみたいな。優劣を作るわけじゃなくて違いを明示する、言語化するっていう。

そういう語り口もあるんじゃないかな。片方を下げたら、もう片方は上がるっていうのは読み手もすぐ理解できちゃうので、相手もちゃんとあげた上で、違いを明確にしてあげることで、「おっ、そうなんだ!私サッカーばっかり面白いと思ってたけど、野球にはそういう違った面白さもあるんだ!」っていう風に聞ける。でもサッカーを落とされちゃうとサッカーに興味がある人は「お前分かってないな?野球のことばっかり言いやがって、サッカーだって良いとこあるよ!」ってなっちゃう。対比を作ること自体がダメだっていうことではなくて、対比を作った上で、どういう語り口をするのかは色々方法があるような気はするよね。

(ハル) 例えばAとBがあって、Aを上げてBをもっと上げる、みたいな感じができれば凄く刺さると思うんですけど、やっぱりAも上げてBも上げてってやると、インパクトを与えるのって難しいなって思います。そんなことないですかね?

(871) そんなことないと思うよ!しかも書き手の評価はそっちの方が上がると思う。それだけのエンターテイメントの物量を分かってないと語れないからね。

分かりやすいので言うと、「俺アイドルなんか全然好きじゃないし全然聴かないけど、絶対ロックバンドの方が良いに決まってる!」っていうライターさんと、「いや〜、アイドルもね、僕散々聴いてて、なんだったら○○ちゃんと○○ちゃん推しなんですけど、でもやっぱロックバンドにはアイドルにないこういう良さがあるんですよね!」っていうライターさんが二人いたら、話を聞きたくなるのは絶対後者だよね。何かを排除するっていう時点で、その人自身が話を聞いてもらえないっていうデメリットを売ってしまうんじゃないかと思うよね。

(ハル) 自分の癖とかを考えても、結構そういう可能性があります。

現代におけるパーソナルな信頼の重要性

(871) ハルさんの衝動に振り返るとさ、やっぱり自分が興味ないアーティストのライブレポートでも、そのライブを見たくなるぐらいのライターさんがいる訳じゃん。そのライターさんに対するハルさんの評価を、ハルさんも同じように得ていこうと思うと、一番最初に何が大事って、ハルさんの魅力をまず理解してもらうこと。ハルさんの魅力を知ってる友達はハルさんのことを理解していて「ハルが言うんだから、オーラルちょっと聴いてみようかな」って思うと思うんだけど、ハルさんのことを理解していない人に街中で「ねえねえ、オーラル知ってますか?」って声かけたところで「いやいや、知ってるとか知ってないとかじゃなくて、怖いです」ってなっちゃうわけじゃん?(笑)
そういう意味で言うと、やっぱりハルさんの人格とかキャラクターを文章の中でアピールすることもすごく大事だろうなと思う。特にこれから先は。

喋ってて思ったんだけど、多分ね、5年~10年前はそれを自分の代わりに媒体の屋号が保証してくれてたんだよね。○○の雑誌に書いてるってことは、この人はある程度保証されてる人間だ、みたいな。でもこれから先それが無いとは言わないけど、ネットメディアなりnoteなりTwitterなりで、パーソナルがちゃんと信頼を得れてる人が屋号の下で書けるっていう時代になると思う。だから、パーソナルな信頼を得てないと看板あるところは使わないと思うから、自分が看板の側の人間だったら、やっぱりSNSで評判悪い人に自分の雑誌で書いてもらおうと思わないもんね。

そういう意味でいうと、ある程度の知識と経験と興味を持ってる人が語っているのか、趣向性が狭い中で語ってる人なのかっていうのは、やっぱり読み手にも伝わると思うし。そこは結構重要なポイントかもしれないね。自分でも言いながら気をつけようって思うけど(笑)

(ハル) 今の話を聞いても思ったんですけど、noteとかTwitterとかInstagramとかが主流になる中で、やっぱり自分を売ることも大事じゃないですか。そう思って私もnoteに書いたら、とりあえず自分のフォロワーの人とかに「書きました!読んで!」みたいな感じでTwitterに流すのが1番広告として手っ取り早いなって思ったんです。でも、仲が良い人達が多いし読んでくれる可能性は高いと思ったんですけど、書いてることが自分のエゴっていうか、それ中心になってないかな?っていうのが凄く怖くて。実際私もめちゃくちゃ曲を聴いて調べて書いたんですけど、正解ってなかなかわからなくて。私よりも更に調べてる人とかが、「いやこれ、こう書いてるけど、こうでしょ?」みたいな感じで反発というか、食い違わないかな?って怖くてあんまり広められてないのが悩みですね。

(871) 難しいところだよね。凄くその気持ちわかる。SNSで自分を売っていくことが大事って僕も思ってるから、インスタライブをやったりしているし。僕自身も最近意識してることなので、共感します。僕も、高校大学の同級生からいきなり「お前何やってんの?偉そうに」みたいなコメントきたら怖いな、とか、例えば業界のマネージャーの先輩方から「インスタライブで好き勝手言っとるらしいな?」みたいなのがもしきたら、怖いっちゃ怖い。けど、その不安に打ち勝つのは、間違ってたら謝るっていうことを含めて真摯でいられるかどうかだよね。

間違ってたら謝ったらいいんだよ。間違って謝ってる姿って、それはそれで見てくれてる人は見てくれるから。間違ってるのに下手にカッコつけて取り繕おうとすると「何カッコつけてんの?」ってなっちゃうけど、間違ってたら「間違ってました!すみませんでした!」って、それも含めて発信なりしていかないと、間違ってることにも気付けないし、その人自身のキャラクターとか想い、考え方を伝えていくことは進んでいかないので。僕もこれやってて「うわぁ〜微妙だな〜ちょっと誤解生みがちな発言しちゃったな〜ツッコミくるかな、こないかな〜〜」とか「“雑誌の広告の話してたけど、あれで全部語ってるって思われたらちょっと問題あるんじゃないの?”とか言われんじゃねぇかなぁ〜」って不安抱えながら喋ってるから(笑)頑張ろう、そこは(笑)

(ハル) はい(笑)
広告の回も私見たんですけど、それって柳井さんの今までの仕事での経験で得たものを話してるって感じですか?それとも調べてたりとか勉強してるんですか?

(871) 両方両方!経験談ももちろんあるけど、僕そんなに幅広く勉強してないし。なるべく公言していこうと思ってるんですけど、最近のインプット源は、キングコングの西野亮廣さんとか、オリエンタルラジオの中田敦彦さんとか、YouTubeベースです。そうやってエンターテインメントの新しいフォーマットにトライアルしてる人達の全部を全部肯定するっていうわけではないけど、そういう方法論あるんだ、そういう考え方があるんだっていう風にインプットをしてますね。

それに自分の仕事の経験値をミックスした上で「こうじゃないかな?」とか「こういう歴史がありますよね?」とか話してます。でも歴史とか背景みたいなこともかなりイメージで語ってる部分もあるので、間違ってたらいつでも謝る準備はしてるし、保険かけながら話してます。「間違ってるかもしれないんですけど、こういう要素ってあったと思うんですよね。」みたいな言い方をするようにしてます。実はそれもあって、文字じゃなくてお喋りにしたのもあります。文字で書くと凄く読みづらくなっちゃうけど、お喋りだと保険かけて前置きが多少長くなっても、ある程度聞いてもらえるかなっていうがあるので。不安をそのまま「不安ですよー!」って言いながら喋ってる感じです(笑)

(ハル) 自信持っていいってことですね。

(871) 自信持って。間違ってたらいつでも謝ります、ご指摘いつでもくださいって最後に書けばいいよ(笑)

(ハル) 良いですね(笑)書きます(笑)
どんどん(自分の記事を)広げていこうかなって思いました。

(871) どれくらいの効果があるかわからないですけど、今日観てくれた人の何割かはディスクレビューも読んでくれる気がするので、僕宛にツイートしてもらえばRTします。皆に読んでもらえるように。

(ハル) ありがとうございます!
また私のnoteの話になっちゃうんですけど、今3本記事を書き終わってて。1本目が自己紹介的なこと、2本目が「○○を聴いて」というもの、3本目が『What you want』のレビュー、ちょっと複雑に思ったのが、自己紹介の記事のいいねが1番多いんです(笑)自己紹介は書きたいままに話し言葉で書いたんですけど、2本目のディスクレビューはちょっとライターっぽく言葉を難しくしたり批評家っぽくやったつもりだったんです。かける時間も自己紹介が1番短くて、2本目、3本目になるに従って長くなっていくんですよ。それなのに自己紹介が一番いいね多いんだ、って地味に悲しくなったりとかして。

(871) あくまで仮説でしかないけど、自己紹介が一番ハルさんのキャラクターが出てるってことじゃない?多分頑張って書いたことによって、余所行きの服を着すぎちゃったっていうか。デートの時に張り切って、ヘアメイクを呼んで化粧しまくって他人にコーディネートしてもらった結果、“ちょっと普段のこの人が見えてこないな“ みたいな。そういう文章になってしまった可能性もあるよね。

(ハル) 完全にありますね。

(871) もちろん家の外に出る限りは裸では出られないから、多少の服は着て多少のおしゃれはした方がいいと思うんだけど、なるべく普段着だったり、背伸びしすぎてないカッコつけレベルで文章をトリートメントできるかは重要な気がするね。

(ハル) 親しみやすさ、とかですかね。

(871) 何で私がそれを書いてるのか、とか。私は何故これを書いてるのかっていう部分にキャラクターが生まれたりするので、「好きだから書いてます!」だと「そうなんだ」になっちゃうけど、「私、こういう事があった時にこの曲に助けられました」だと「なるほど…!」ってなるよね。そういう部分を如何に自分からさらけ出せるかは結構重要な気がするよね。

(ハル) レビューを書く時に、自分の実体験を出そうか出さないかすっごい悩んでて。アーティストの実体験とかだったら好きな人は興味を持つと思うんですけど、私はアーティストでも無いしファンがいる訳でもないので、実体験とか自分のことばっかり喋っても、「え、知らないよ」みたいな感じになりそうで、自分の主観を入れるか入れないかって悩んでたんですけど…入れた方が分かりやすいですかね?

(871) 物によると思うよ。何某の媒体から依頼を受けて書く場合と、自分のnoteに書く場合でも全然変わってて。noteの場合は、まずは自分のファンがつかないと伝わらないっていうか、ブログの読者になってもらう必要があるから、やっぱりある程度パーソナルな情報はあった方がいいと思う。勿論、凄くマニアックな情報を網羅する、Wikipediaみたいなタイプのものを作るんであれば、そこにパーソナルな情報は必要ないと思うんだけど、やっぱりそこで感じたこととか解説めいたものを書く時に、パーソナルな情報はある程度入ってないと共感性が保てないので。且つ、例えば“MUSICAのディスクレビュー”とかっていう第三者に担保されてるものもないわけじゃん。勿論MUSICAのディスクレビューの限られた300文字の中で、自分の話が半分を喰っちゃうと「いや、そういうことじゃなくて…」ってなっちゃうから、どっちが正解っていうことではなくて、今書いてる媒体に対して目的をある程度自分の中で把握して、そこに必要なものと必要じゃないものを取捨択一していくってことなのかな。

(ハル) 分かりました。

(871) 1時間経っちゃいました。なかなか良い話ができたなと思ったので15分過ぎちゃいましたが、最後一つ、言いたいことや聞きたいことあれば!


871の言葉選びについて

(ハル) 1個だけ…本当に私からの話ばっかりで申し訳ないんですけど、柳井さんのインスタライブを見てて、言葉選びがすごいなって思ったんです。何手先も読んでるのかな?って思いますし、皆が平和に終わるような、誰も傷つけない言葉を選んで話して下さっていて。且つ、これを言ったらこういう方向に話が行っちゃいそうだから、ここではこう言っておこう、みたいなのも考えて話されてると思うんですけど、そういうのって経験からですか?答えづらいかもしれないんですけど…

(871) いや!答えづらいというよりかは、自覚がそこまで整理されてないっていう感じなんですけど、でも確かに経験量はあるのかなと思います。仕事も勿論そうだけど、いわゆる、気にしいっていうか。子供の時から他人の顔色はかなり伺うタイプだったので、学校で昼間にワァーっと友達と喋ってた内容を帰り道に「うわぁ〜あれもしかしたら○○さんに嫌な思いさせちゃってたりしないかなー」とか「嫌われたりしないかなー」みたいな。嫌われることに極端に不安を感じているっていうのもあるんです。

そういう性分もあって、日頃生活してる中でも、如何に誤解を生じないかとか、言い換えると、言葉の力を信用しないように心がけているってのはあります。それこそ「エモい」とかも、「エモい〜!」「わかるー!エモい!」っていう会話で、感覚が伝わっているのが凄く僕は不思議、っていう(笑)

ポジティブなことならそれでもいいなとは思うんですけど、ネガティブなこととか不安なことに関して言うと、あんまりふわっとしすぎてると伝わらない。だけど明確に言語化しすぎると含みが持たせられないし、限定されすぎちゃう。っていうので僕はやっぱり言葉の信用度にすごく不安を感じていて、それを感じながら40年生きてきた中で、保険の掛け方を自分なりに見つけて、このぐらいの言葉を使うようになっていると思います。

凄い細かいことで言うと、仕事のやり取りの中で、「○○してください」っていうのを「○○してもらえると嬉しいです」っていう風に言い換える。それをメールの文面とかで心掛けることによって習慣づいてくるというか。文字で打つときに“すみません”と“すいません”だと、“すみません”の方が伝わるよね。そういうことを僕は結構気にしてしまうので、同じことでも如何に柔らかく言うにはどの表現が一番適してるんだろう、みたいなことを日頃から気にしてるっていう感じですね。100点ではないですよ、まだまだ研究中ですけど。

(ハル) じゃあ本当に積み重ねっていう感じなんですね。

(871) そうですね。
ハルさん、じゃあ、TwitterでnoteのURLをリプってください!僕がRTしてそれを皆さんに読んで頂くというイベントをやりましょう。

(ハル) 分かりました!
私も続けて頑張ろうと思います。

(871) 今日はありがとうございました!

(ハル) こちらこそ本当にありがとうございました!

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