坂道アイドルのブログをテキストマイニングで分析してみた。モチベーションとうまく付き合うためには?

はじめに

最近まとまった時間ができたので、以前からやりたかったテキストマイニングを、坂道シリーズの公式ブログをサンプルにやってみた。

サンプルとして、坂道シリーズに所属するアイドル92人(乃木坂44人、櫻坂26人、日向坂22人)の直近10件の公式ブログ全文を用いた。ただし名前やあだ名、出身地のような個人の特有のワードは文章から除外した。

分析にはテキストデータの統計的分析ができるソフトウェアKH coderを使用した。KH coderの詳細については下記を参照いただきたい。

ソフト上では頻出語の特定やクラスター解析などができるが、今回は対応分析の結果について取り上げたい。

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動詞、形容動詞、形容詞の傾向

ブログ全文の中から動詞、形容動詞、形容詞として認識されたワードの頻出順上位50個を対象に分析した。これら3つは感情を表す品詞であり、これらを分析することでグループや自分自身が置かれている現状に対する気持ちやモチベーションをブログの中から汲み取ることができると考えた。

メンバーを「グループごと」と「グループ+期生ごと」の2パターンによって分類し、現状に対する気持ちが、グループのなかで共有されているのか、グループのなかでもメンバーによって違っているのか、という疑問について検証しようと思う。

対応分析の結果を動詞、形容動詞、形容詞の順に下のグラフで紹介していく。グラフの左は「グループごと」、右は「グループ+期生ごと」に分類したものである。


まず動詞では、感情を表すときに使う「思う」と「感じる」に赤印をつけた。

動詞

「思う」と「感じる」は「乃木」「乃木2」「乃木3」「櫻1」と近いように見える。

このことから、乃木坂のメンバーの特に2期生と3期生のブログで、感情を表現している頻度が高いことが分かった。一方で、乃木坂の1期生と4期生は「食べる」「着る」「買う」「話す」などに近いことから、ブログの中で日常生活の様子を報告することが多い傾向にあることが分かった。


また形容動詞、形容詞ではポジティブな感情を表す言葉にはオレンジ、ネガティブな感情を表す言葉にはブルーの印をつけた。

形容動詞

ポジティブ→「好き」「大好き」「幸せ」「素敵」「元気」「綺麗」「新鮮」「楽」「幸せ」「ハッピー」「前向き」「すき」
ネガティブ→「不安」「苦手」「残念」「無理」「嫌」

形容動詞については、目立った関係性やクラスター性は見受けられなかった。

形容詞

ポジティブ→「嬉しい」「楽しい」「可愛い」「優しい」「美味しい」「面白い」「温かい」「有難い」「明るい」「明るい」「美しい」「暖かい」「素晴らしい」
ネガティブ→「苦しい」「悲しい」「辛い」「懐かしい」「悔しい」「怖い」「難しい」「寂しい」


形容詞の右のグラフでは、左に「乃木4」「櫻1」「櫻2」「日向1」「日向3」のクラスター、右に「乃木2」「乃木3」「乃木1」「日向2」のクラスターが明確ではないが見受けられる。左のクラスターの近くにはオレンジのポジティブなワードが多いが、右のクラスターの近くにはブルーのネガティブなワードが多い。

つまり、最近のブログのなかで、乃木坂の4期生、櫻坂の1期生と2期生、日向坂の1期生と3期生はポジティブな感情を表すことが多く、乃木坂の1、2、3期生、日向坂の2期生はネガティブな感情を表すことが多い傾向にあることが分かった。

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ネガティブな感情はどこから生まれたのか?

ここからはなぜこのような傾向が示されたのか、グループの現状を踏まえて考察してみる。

2020年10月以降、グループを卒業したもしくは卒業を発表したのは4名で、乃木坂では1期生の2名と2期生の1名の長い間グループを支えてきたメンバーの卒業が相次いだ。「乃木1」「乃木2」がネガティブのクラスターに入ったのはこのことが要因であると思われる。メンバーの卒業発表に対する気持ちやそれに起因する悲哀の感情がブログに表れたのだろう。

この図は「卒業」「白石」「堀」など2020年10月以降の卒業発表に関するワードと形容詞の共起ネットワークである。頻出であるほどワードほど○が大きく、関係が近いワード同士が線で結ばれている。

画像4

確かに「卒業」と「白石」が、「寂しい」「悲しい」「辛い」などのネガティブな感情を表す形容詞とつながっている。このことから、ネガティブなクラスターに入ったメンバーが白石さんの卒業に関して言及している傾向にあることが分かった。

「乃木1」「乃木2」の他にネガティブのクラスターに入ったのは「乃木3」「日向2」であったが、卒業発表に対する感情の変化を考えるには無理があるため、何か他の要因があるに違いない。そこでメンバー自身のモチベーションに対する感情について考察してみることにした。

以下にメンバーが楽曲に参加した時期を時系列で示してみた。また2021年2月で何年目になるのかも示した。

2012年2月 乃木坂1期生→10年目
2013年11月 乃木坂2期生→8年目
2016年4月 櫻坂(欅坂)1期生→5年目
2016年8月 日向坂(けやき坂)1期生→5年目
2017年3月 乃木坂3期生→4年目
2017年10月 日向坂(けやき坂)2期生→4年目
2019年3月 日向坂3期生→2年目
2019年5月 乃木坂4期生→2年目
2020年8月 櫻坂(欅坂)2期生と新2期生→1年目
2020年9月 日向坂新3期生→1年目
2021年1月 乃木坂新4期生→1年目

ネガティブのクラスターに入った乃木坂3期生と日向坂2期生はデビューした時期から4年目となっている。
一方、ポジティブのクラスターに入った乃木坂4期生、櫻坂1期生、櫻坂2期生、日向坂1期生、日向坂3期生はデビューした時期から5年目または1〜2年目となっている。

つまりデビューしてから1〜2年目と5年目のメンバーはブログでポジティブな感情を表す傾向にある一方で、4年目のメンバーはネガティブな感情を表す傾向にあることが分かる。

ブログでの感情表現が現状に対する感情を反映しているとすると、デビューして1、2年はポジティブな感情が多いが、4年経つとネガティブな感情が多くなり、5年経つとまたポジティブな感情が多くなるという経年変化が存在することが考えられる。デビューしてからの時間によって長期的に変化する感情と、シングル発売やテレビ出演、メンバーの卒業などによって短期的に変化する感情が混ざり、そのときの感情として発信されていることが考えられる。

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ネガティブな感情が生まれるのはアイドルだけじゃない

アイドルのブログをテキストマイニングにより分析した結果、仕事に対する感情の経年変化が存在することが示唆された。しかしこの現象はアイドルに限らず、社会人にも起こる現象である。

よく仕事は3年目からが大切、3年間は耐えろというふうに言われているが、実際の調査では多くの人が入社1年目から3年目にかけてモチベーションが低下する傾向にあると示されている。

このモチベーションの低下は実際の仕事の量や人間関係が要因であるとされているが、ダニング=クルーガー効果という現象も考慮する必要があると思う。

これは簡単に言うと能力が低い人ほど自己評価が高く、能力が高い人ほど自己評価が低くなるという現象である。この現象は人間のあらゆる活動において当てはまる。物事をよく理解している人は濁した発言をするし、一方で中途半端な理解レベルに留まっている人に限って断定的な発言をするというそれである。

入社後のモチベーション変化もこれに当てはめることができ、入社後すぐは新しい環境で様々なことを教わるので仕事について知った気分になりモチベーションが上がるが、徐々に仕事の全体像が見えてきたり周りからの正当な評価を受けたりすることでモチベーションが下がる。やがて職場での立場や、なにか大きな達成感を得ることでモチベーションは再び上がるということが考えられる。

アイドルについても同じことが言えるだろう。最初はアイドルという仕事に期待を感じモチベーションは高く維持されるが、次第に慣れを感じたり、求められるハードルが上がったりすることでモチベーションが下がる。やがて、やりがいを見つけたり、実力がある程度ついてくるとモチベーションは再び高くなると考えられる。

なにごとにおいても、始めてから何年か経つとモチベーションが下がりネガティブな発言や思考が多くなるのは当然のことである。しかし、それを乗り越えることで新たなステップへ進みポジティブな気持ちで臨めるようになる。確かに、今の櫻坂1期生や日向坂1期生は、どこかたくましく、楽しそうにアイドルをしているように見える。うまくモチベーションと付き合っていくために、彼女たちを見習ってみてはいかかだろうか。

e-karas

備考: 乃木坂4期生の黒見さんのブログは異常に長いうえに、独自の言葉や言い回しが多く見られたのでサンプルから除外した。

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