愛とキャッチボール
もし公園に
誰でも使っていいグローブとボールがあったとして
俺ともう1人誰かがいれば
確実にキャッチボールすると思う。
キャッチボールするのに特に理由なんかなくて
そこにグローブとボールがあるから。
それだけの理由。
今年に入って、今までやってこなかったことをしたくて、彼女にキャッチボールしよって提案してみた。
嫌がるかと思ったら案外乗り気で2人でグローブを下見しに行ったが
お互い野球が素人すぎて、グローブがいい値段しすぎて、一旦保留。
そんな事を、野球に纏わる全てが大好きな野球部出身じゃない先輩に話すと、
メルカリで左利き用のグローブを見つけて買ってくれた。
週末の土曜日、朝9時に公園に集合。
小学生以来の時間帯と場所の組み合わせ
はっきり言って最高。
まずは、右手にグローブを装着。
まだ俺たちが子供の頃は、少年野球に入ってなかった子達でもグローブは持ってた。
そんな記憶が蘇る。
今の子はどうなんだろう。
もし息子ができたら、グローブを買ってあげることに決めた。
先輩は、肩を回すことから教えてくれた。
実りのあるキャッチボールになることがここで確定してる。
パンッ!!!
たまに鳴るキャッチの瞬間のこの音がたまらなく気持ちいい。
オッケー!!!
綺麗に捕れたら自然と声が出る。
先輩はアインシュタインの顔のプリントTを着てた。
胸のアインシュタイン目掛けて一球一球丁寧に投げる。
山なりなボールの放物線のカーブが回数を重ねるごとに低くなってきているのがわかって楽しい。
でも少し力むとボールがすっぽ抜けて、明後日の方向に飛んでいく。
キャッチボールは力加減が難しい。
1時間半くらい男2人でパシパシ球投げ合って、ヘロヘロになって、タバコで一服。
2人で安い自販機に行って、普段絶対選ばないメロンソーダ味の着色料飲料をゲット。
これがうますぎた。
あの日の公園、親にもらったお小遣い、部活帰りの夕方、深夜徘徊、全部このメロンソーダに詰まってた。
しばらくして俺の彼女も合流した。
楽しそうに球を受ける彼女、彼女が取れるように優しく投げてくれてる先輩。
愛すぎる。
彼女と2人でボールを投げ合ったりもした。
意外と上手く投げて、上手く捕る彼女。
活発な女の子ってやっぱ可愛いわ。
見てるだけで元気出る。
結局3人でも1時間くらい投げ合って
あっという間に2時間半が過ぎて、
海鮮丼をご馳走してもらって解散。
おいしかった。ありがと。
子供の頃、キャッチボールは突発的に発生する遊びだった。
大人の今、キャッチボールは1週間前から決めとかなきゃいけない予定になった。
でも俺はその予定をこれからも続けたいと思う。
だってキャッチボールって愛だから。
これからも愛したい人たちを俺はキャッチボールに誘う。