長いお別れ 映画レビュー
今後の日本映画界を背負って立つ監督の一人だと勝手に思っておりますのでw、監督作は見逃さないようにしておりますw
湯を沸かす〜でもそうだったけども、自然と涙が溢れてしまう。
映画全体から、現在の日本なんだけど、ノスタルジックさを感じる。
暖かさや純粋な気持ちでの家族愛。
家族の暖かさというか、特にお母さん役の松原智恵子さんの「家族の中心はお父さん」という信念を曲げず健気に且つ明るく可愛くいる存在はだいぶ精神的にお父さんや娘達は助けられているのではないかな、と。あんなに出来た人は居ないと勝手に思う。
お父さんが居ないとダメ。お父さんを支えるのは私の役目。すごい。簡単に出来るもんじゃない。愛しているんでしょうね…
新幹線で実家から帰るときの二人の会話が、もう切なくてねぇ…。
長女。この話の中で唯一感情移入し辛かったw 外国に住み、旦那(北村有起哉さん)は感情の起伏がなく冷たく、家族の問題には「君に任す」とばかりで。自宅で家事ばかりだからか英語も話せないまま。一人息子は同じ学校の同級生に首ったけで、その気持ちのまま日本に行かないと行けなくなり…
と、このシーンだけ妙に違和感があって。もう少しやり方違ってもいけたんじゃないかなとか。息子が不登校で、というより遊び呆けているのか篭ってるのか、も分かりづらく。
まぁ、北村有起哉さんの終盤の演技は笑えたけどもw
次女。蒼井優。ご結婚おめでとうございます。仕事をしつつ夢である料理のしごとを諦められないまま、両親のケアもしていく。
男女関係がなかなかうまく行かないのもなんかもうかわいそうに思えてきて。
悪くないんだよ、誰も。。。誰もが誰だって人生を持っているからこそ「繋がり」があって。中村倫也の使い方が贅沢だけど、合ってる。。。蒼井優が悩み苦渋の表情でついに泣いてしまう、という演技はピカイチだなぁと。縁側でのお父さんとのシーンです。
ぐわっとこっちもきちゃって。お父さん、なんとなくわかってたんじゃないかな、とか。
そして。何はともあれ御大。山崎努さん。
神がかっておりました。歳を重ねるにつれどんどん痴呆が進む様や、一挙手一投足、もうその家族の「大黒柱」だったんだ、としっかりとしたお父さんであったんだな、と思わせる。痴呆、という病気を笑いあり涙あり、一人の人間としての立ち振る舞い、というか。いかに悲惨に惨めに見えないように作られているのか、見せているのか、は脚本や監督さん、演者側のたわものだと思います。
個人的な話として。リンクしてしまったのは4年半前に亡くなった親父の事でした。
僕は親父のことがまあぁ、嫌いでw
食卓を囲んでも学校の話、友達の話は煩いと言われ、仕事と自分の趣味の話、あとはテレビばかり見ている人で、そこから何故かお金の話になり毎日絶対母との口論が始まり、ヒートアップし、茶碗や湯のみが飛び交うような平成の時代にまだそんな家庭があったのかと今更ながら思い返しますが。
そんな親父が倒れたのは、なんと病院治療入院の事。自営業で林業をしていた親父でしたが、無理に土地、山、作業車や道具を揃え借金だけがかさみ、勝手に初めて勝手に辞めて行き、僕ら兄弟3人で住んでいたマンションの母と転がり込んできた事から始まります。
何もしてはいれない親父は土木の作業員としてアルバイトを始めたんですが、元から足腰がヘルニアで弱まっていたのがきてしまい、腰の手術までに発展。手術後はだいぶ回復経過も良かったのですが、持病であった糖尿に対してのインシュリン注射と腰に対する薬等々の理由が重なり、血液の流れが頭へ。そのまま脳内出血を起こし倒れてしまったのです。入院中に別の病院へ入院。こればかりは病院側が悪いわけでなく、親父の身体の異変がそうさせた物だそうです。
それから二、三日は目を覚まさず。目を覚ましたときはまるで人が変わったかのように記憶障害と言語障害でうまく喋れなくなっていました。喋ったと思ったら15年前の事を言いはじめる始末。母はびっくりして病室から出て泣いておりました。
それでもまだ自我があるときもあり。ごく稀に真っ当な事を言ったりもありました。
そんな親父自体を僕は見たくなくてなるべく遠ざかるようになっていました。
意識を取り戻してから1ヶ月後ほど。
親父の容態が悪くなります。
喋ることがもっと難しくなり、ご飯を口から食べることもままならなくなっていました。
流石に母だけに看病してもらうのは気が引けたので一ヶ月ぶりに会いにいくとびっくりした顔の父が居ました。
流石に息子の顔は覚えていたようですが、高校はどうだ?とかマジかよ…当時そんなこと聞かなかったくせに…と思ったり。とりあえずなんの気もなしに会話を続けていると、母が花瓶の水を変えに病室を出た後でした。
急に親父が口を開いたと思ったら
「おい、お前がこの先どうなるかはわからんけど、おい(俺みたいな意味)はこん先、老い先はもういかん。だから、お前どんが長男だからお母さんと弟たちを見っとぞ?あと、これだけは言っとく。自分で線引きをしろ。どこで、どっかのタイミングで線を引くっとぞ。なんでもよ。結婚でも、仕事でんそう。まあ、頼むよ、お兄ちゃん」
と言われました。あまりにきちんと目を見て言うもんだからしっかり覚えています。
え、、、ああ、、、うん。。わ、わかった。
と僕が言うと親父はニコッとし眠りにつきました。帰りの病院のエレベーターで母にこの事を伝えると号泣しだしたので、僕も泣いてしまいました。
次の日に親父は植物状態になりました。鼻と口に管を入れられ流動食を流され。人工呼吸器で延命処置をされた状態。
そのまま半年の月日が経ち親父は天に召されました。その無くなる日。母方の親戚5家族と、父方の祖父と親父の妹さん二人がタイミングよく駆けつけ看取られたままあの世にいきました。
一人一人の呼びかけに親父は最後の力なのか、眠っていたのにグッと目を見開き全員に応えようとしていました。
親父は母方の親戚にだいぶだいぶ迷惑をかけていたのであまり近づこうともしなかったのですが自分の最後だからか挨拶しようとしたのか。わざわざ長崎から鹿児島まで来てくれた父方の親類。親父は呼びかけられてびっくりして自力で起き上がったとき。あの時がもう最後の力だったのでしょう。
そのあとはいくら呼びかけてもピクリともしませんでした。
その時、みんながみんな涙を流しておりましたが、僕だけは泣けなかったのです。
親父が今までやってきたことなどなどを思い返してしまって。悔しさと憎さで泣けませんでした。
「長いお別れ」を見て、病室での家族で誕生会をしようとするシーンで何故か僕は、親父の最後を思い返し、リンクしてしまい号泣してしまいました。
自分の親父と比べるもなにも、似ても似つかないんだけど、もっと話しておけばよかったな、もっと優しくできたろうな、とか沢山の後悔と自分が勝手に作り上げていた「親父像」を母だったり親類や親父の友人からの話を思い出して、あれそんなに嫌いでなかったのかな、一人しかいない親父だからこそかな、とふと考えたりしました。
僕の家族の事を他人に話すと口を揃えて「普通じゃない」「イかれてる」と言われますが、多少は誇張もあるだろうけど、それが自分にとっての育った環境であって、それが普通で。そんな家族の事を思い返したいいきっかけになりました。
中野量太監督の作品は今後も追いかけていきます。
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