小説:狐025「ポジション」(883文字)
珍しく会社の飲み会があり、それを経て『狐』に来た。いつものカウンターに腰掛けていつもの球状の氷が浮かんだビールを飲む。
後ろでは既にいつもの調子で方向感のない議論が巻き起こっていた。
「譲れないね。鶏の唐揚げだよ」
とスミさん。
「いやー。サードは春巻きに決まりですって」
とタロウさん。
サード? 三塁?
スミさんが少し大きな声を出す。
「だからさぁ、セカンドがたこわさびでショートが枝豆なのは一致したよなぁ! ならサードは鳥唐で決まりだろ?」
「決まらないです!