小説:狐006「前衛芸術」(647文字)
仕事で信じられないミスをして落ち込んだ日の『狐』にて。
「ナリさんよぉ。病人みてーな顔すんなや。人生なんてあっという間だぞ。悩む暇があんなら笑えや。苦しむ暇があんなら踊れよ」
スミさんはそう言って、ぎこちなくも陽気な盆踊りに似たステップを踏んでみせた。それは盆踊りとは明らかに異なるふるまいで、憤怒と歓喜を同時に表現したような前衛芸術を思わせるものではあるものの、決して前衛芸術などではなかった。その狂気を存分に吸い込んだ珍奇さと滑稽さに満ちた舞いは、私の胸に突き刺さり、心の