「DOORSCOPE one room edition」制作記録
先日よりライブ記録映像「DOORSCOPE one room edition」の配信が始まりました。
観ていただけましたでしょうか?
昨年末に敢行した東阪ツアー「DOORSCOPE」の東京公演の映像に、新録の弾き語り映像や大阪でのバックヤードの様子を追加しています。
弾き語りした楽曲は本来予定していたセットリストと同じ場所に差し込んでいたり、言わば完全版みたいなものです。
そもそも、本来なら2020年は3月、6〜7月、11〜12月と、ツアーを3本やる予定で。
2019年の末には、直近のワンマンの準備もしつつ6〜7月分のツアーに向けても各所に連絡したり、徐々に動き出していた。
年を越して引き続き調整をしていた矢先にコロナが蔓延。
3月のツアーも、開催2週間前を切ったタイミングで中止に急遽舵を切り、なかなかに大変だった。
得体の知れなさから、メールを打つにもどう書けば良いかが全く分からない。
それを何人分も考えなきゃいけない、しかも時間もまるでない、みたいな感じで少々パニックになって参ったのを覚えている。
ていうか勝手が分からなかった分、コロナ渦の諸々であの時が一番大変だったかも。
どんな業種であれ、あの時期を乗り越えた人たちは本当にスーパーマン。
全力で褒めたたえ合いたい。もうそろそろ一年経つのか。
とは言えこの段階では自分も周りも含め、数ヶ月後には収束しているだろうという認識だった。
だから引き続き6月分のツアーに関しては段取りを進めていて、それが希望としてあったからどうにか乗り越えられた。
と、今振り返ると思う。
4月。5月。
良くなるどころか益々シビアになっていて、6月のツアーも断念する事に。
只、3月時に比べて時間もあったし、受け入れる体勢を自然と作れていたからか、ショックはほんの少し軽かった。
6月には少しずつ外にも出られるようになったり、配信ライブも気付けば沢山見受けられるようになった。
この頃あたりに年末のリリースをうっすら予定する。
何となくのリリース候補日を並べて、それぞれの前後にツアーの候補日も並べてみたりしていた。
三度目の正直、ライブがしたい気持ちはこの時が一番強かったかもしれない。
そのまま6月の後半から9月頭までEPの制作。
作業を進めてく過程で、エンジニアのザワさんが映像配信の音響を勉強し始めた事を知ったり、サポートメンバーにも徐々にオファーと日程調整の連絡をした思い出。
この辺で初めてちゃんと「ワンマンの映像配信」というものが選択肢に加わった気がする。
9月末。
「Birthday」のMVを撮るにあたって、監督のナイーブさんとZOOM会議にて知り合う。
ビデオの撮影自体は10月31日だったけど、それまでの1ヶ月でかなり密に連絡を取っていた。
打ち合わせも兼ねていたから最長で4時間とか電話していた日もあった。
だからいざ撮影当日になってみて、面と向かって「初めまして」と言ってもお互いピンと来てなかったのが結構シュールだった。
4時間も電話しているとまあ脱線する事もしばしばあって、ある時に色んなアーティストの配信ライブについて話す事があった。
海外アーティストの配信ライブまでは、この時はまだ観たことがなくって、教えてもらうもの全部がとにかく自由で新鮮で。
この時教えてもらったもので、特別覚えているのがこれ。
この時は自分でももう配信ライブを何本か経験していてどれも充実感があったけど、普通のライブにはない結構な緊張感がどこも張り巡らされていた。
配信ライブの一般化みたいなものの黎明期だったし、やっぱ大体の誰しもが初めてだったからこそ余計にそれが強かった印象があって。
場所も時間も選ばない自由さ、そしてそれをめちゃくちゃ楽しんでるこの感じが羨ましくて、心底「なりたい!!」と思った。
こんな風に自由なライブはいつかやりたいなと思っている。(この1〜2年のうちに。出した暁には観てね買ってね)
撮影が終わってからも、有難い事に編集に立ち合わせてもらっていたから、引き続きナイーブさんとは連日会っていた。
映像編集というものはなかなかに時間が掛かる。
コンマレベルで素材を噛み合わせていく事もそうだし、保存ひとつするにしても、ものによっては相当な時間を要する。
ご飯を作ってもらったりUNOをやったりという脱線もありながら、引き続き配信ライブについての話もしていた。
この時期にナイーブさんへ正式にライブ撮影をお願いした気がする。
どんなのが良いかなと、色んなアーティストの配信ライブを観てくうちに「これ!!!」となったのが以下二つ。
直感で「良い」となっているから理由はどうしても後付けになってしまうけど、今思うと、この資料映像みに惹かれたのかなと思っている。
未曾有の2020年を映像に残すのに、この質感は打ってつけというか。
あとは普段は10年後に聴いても10年前に聴いてもリアルタイムに思えるものが作りたいなと考えながら作っているけど、コロナ渦を経験しながら作ったEP、取り分け5曲目の「2020の窓辺から」は「こんな事もあったね」といつか古く感じてもらえたら良いなと思いながら作っていた。
それは自分の作品だけじゃなくて、色んな人の作品に触れてみても感じる事が、特に下半期は多々あって。
そのある種願掛けめいたものにも、この古いフィルム感はとても合うように思えた。
特にこのVulfpeckのライブ映像は、あの質感にワンカット撮影というのも相まってドキュメンタリー感を凄く感じた。
ナイーブさんもライブのワンカット撮影には興味があるとの事だったし、これを目標に撮ろうというのが決まった。
この頃にはツアーのリハーサルも始まっている。
情勢も引き続き移り変わっていたし、ライブ敢行にあたってのガイドラインもどうなるかがまだ分からなかった。
どうなっても対応が出来る様にと少し短めの内容にする事にして、いつも以上にセットリストを厳選して組んだ。
「本当はここでこの曲やりたかった・・・」というものを幾つか泣く泣く削ったけど、配信は時間も場所も選ばない事を思い出す。
この気持ちは配信ライブで汲もうと、弾き語りを撮る事もこの辺りで決めた。
ライブ本編の撮影は東京だけだけど、大阪の様子も伝えたかったから、移動中やライブの前後で主に土器さんにゴープロを回してもらっていた。
あの大阪の様子だけ編集は自分でやらせてもらったけど、素材がもっと沢山あったし、「あれも」「これも」と使いたいのがあり過ぎて大変だった。
東京でのリハの休憩中に「大阪にめちゃくちゃ美味しいラーメン屋がある」と皆言っていて、行きましょうかという話になった。
ひとしきり盛り上がってスタジオに皆が戻る中、チラッと是永さんが「でも年内はラーメン禁止しているんだよな」と言っていた。(特に意味はないらしい)
大阪に着いて皆お腹も減っていて、ホテルのチェックインを済ませるや否や再びゴープロを回し、その店へ出向いた。
信号を渡り、大通りを歩き、商店街を抜けてまもなく到着。
何を食べるかひとしきり迷い、券売機の前に立ったところで「やっぱり別の店行ってきます」と是永さんは旅立っていった。
あの精神力、後ろ姿はまさしくウォーリアーだった。
出だしの映像はその道中のもの。
それも踏まえて是非観て欲しい。
大阪公演も無事終えて、さほど間髪入れずに東京公演。
「ドキュメンタリー感」「資料映像感」を意識していたから、本当は会場に入る前のスペイン坂を登ってくるところから始めようと打ち合わせしていた。
しかし当日、車移動で向かっていると軽い渋滞が発生していて、途中で電車移動に切り替えたりとドタバタがあって遅刻。
坂の上でナイーブさんがカメラを向けていてくれたけど、焦りでメガネが曇り過ぎていて使用を断念。
冒頭の映像は待ってくれている間にナイーブさんが撮ってくれていたもの。感謝。
前にも書いたけど、この日は知り合い大集合みたいな日で凄く楽しかった。
し、仲の良い人たちだけで一つライブを作れるようになった事も感慨深かった。
渋谷WWWは元々映画館で、建物の造りにもかなり名残がある。
だけど映写機のエリアまで残っているというのをこの日初めて知り、ちょっと緊張気味に立ち入ってみた。
狭さが程良くて、秘密基地みたいで格好良い。
その部屋に機材を持ち込んでもらう。
バンドサウンドの録音はそこで行った。
リハの合間に弾き語りの映像を撮影。
雑音や物音が入ったらどうしようと懸念していたけど、何とかクリア。
この時だけでその日一日の達成感があった。
無事に終演。
その後からすぐに作業に取り掛かってもらって、年末には音・映像共にほぼ完成。
5分ほどの映像編集で物凄くヒーヒー言っているその横での2人の仕事だったから、そのスピードの凄さを身をもって実感したし、本気でやってくれている事があ伝わってとても嬉しかった。
2021年。
年が明けてすぐの1月8日、ザワさんが自宅に。
道中で買ったハンバーガーを食べたりしつつ、音が完成。
いたく感動する。
めちゃくちゃエネルギッシュで、これを年明けに出せるのかと胸が高なった。
その音を投げて、1月13日。
各所へのテロップや、自分が編集した映像を差し込んでもらったものをナイーブさんから下北沢駅にて受け取る。
お互い予定があったから半ば密輸のような受け渡しになっていたと思う。
これを以て静かに完成した。
プラットフォーム探しも昨年末からやっていて、色々見たり聞いたりした中で長めに観てもらえるっていうのを一番掬ってくれそうだった事から、今回LIVEMINEさんに依頼する事にした。
色々と分からない事も助けてもらって、晴れて一昨日公開する事が出来た。
長く楽しみながら作ったから、とても達成感がある。
感想も読ませてもらっているけど、やって良かったなって改めて思っている。(不躾なお願いで申し訳ないけれどスーパー、スーパー待ってます感想を)
(質を保って)ライブを形に残すことって、もっと遠いところに行かないと出来ないものだと漠然と思っていた。
でもこの一年で自然に取れる選択肢の一つになったし、そんな感じでもっと先でないと出来ない気がしていたものが、意外とやろうと思えば出来るってのもよく分かった。
パッと浮かぶのはライブハウス以外でのライブとかVJとか。
突然選択肢が広がった分、ライブに対する考え方も随分変わった。
やりたい事も、同じく随分変わった。
例えば今はギターでも鍵盤でも、もっと楽器を弾きながら歌いたい。
今までは歌を聴いて欲しかったし、歌に専念するためにピンボーカルという手法を取り続けていたけど、映像というもので改めて自分のライブを観たり、選択肢が増えた事でその辺りの考えも変わって来て。
サポートメンバーのプレイ、照明、音響、場所、時間、カメラがあるならカメラワーク。
観れるポイントは、選択肢は多い方が今はきっと良くって、その中で自分の歌に注目したい人が居てくれるのならしてくださいというのが今のスタンス。
あと単純にもっとライブに参加したくなったから楽器も弾きたいという。(練習する)
聴いてもらうだけで何か渡せる作品を心掛けたように、観てもらうだけで何か渡せるライブを心掛ける予感がしている。
何というか、もっと落ち着いてくんじゃないかな。
それに沿って書く曲も変わったりするかもしれない。
次に自分が真ん中になって立ち上げるライブ、それは弾き語りなのかバンドなのかまだ分からないけど、兎にも角にもその時はもうそんなスタンスでライブを作っている気がしている。
それ故に今配信している映像はある種、2年近く続けて来たこのスタンスへの一区切りの記録でもあるというか。
だから撮っておいてもらって良かったなと思っている。
ライブだけに限らず、やりたい事があのツアーを境に増えた。
それは普段から見てくれている人にはもう勘付かれているかもしれないけど。
狙ったものも後付けのものも含め、意味がゴロゴロ出て来ますね。
ありきたりな言葉になるけど、それだけ2020はでかかったよやっぱ。
という事で、自分が思っていた倍書いてしまって長くなり過ぎたけど、「DOORSCOPE one room edition」、配信されています。
普通のライブよりも1対1だなと思うし、それぞれの部屋で作業して出来上がっていって、最後に観てもらう事で意味が生まれて完成するなと思っています。
好きな場所で、好きな時に、好きなだけ観てください。
好きなとこだけでも良いですし。
この映像に割いてもらっているその瞬間を部屋に見立ててたりもする、だからone room editionです。
3月12日まで。是非是非に。