見出し画像

凄いスピードで

台風は過ぎ去って、非常用に買っていたカップ麺も気が緩んでひとつ食べた。身支度を済ませて玄関を一歩出た途端に踵を返す。
そしてそのまま靴も脱がずに部屋へ戻って急いで一枚羽織って駅へ向かった。
久々に観た友達のライブに自信と熱量がとんでもなく渦巻いていて、あんな事を為せる日ってこの先また自分にも来ることってあるのかななんて思いながら只々圧倒されて。
凄いライブだったなと会場を出て、反芻しながら感想を書き留めて。ステージ上の姿を追いながら、そういえば「俺も頑張ろう」がスッと出て来なかったなとふと気付いたのはメッセージを送ったしばらく後だった。
送ったものを急いで読み返すと何かもう全てを諦めた奴の視点からの文章に読めなくもない。友達の晴れの日にとんでもない事をしてしまったとうろたえていると、疲れ切ってるだろうにその日の朝方には返信をくれて、逆にエールまでもらってしまった。本当に申し訳ない。でもおかげでやりたい事はもっと分かった気がする。
自信というのは本当に、知らぬ間に簡単に風前の灯火同然になる。
現にライブ中や連絡をしている時にはまさか自信のゲージがそんなさがっているとは気付けなかったし、どうやらどのくらいの燃えっぷりか気付かないくらい薪をくべなきゃならない。
今週3曲作って結構やってたつもりでいたけどまだ足りないのねと途方に暮れつつ少し寝て、ちょっと冷静になった頭で返信を返して、歌詞をまた書き始めた。もう目も当てられないくらいダサい事を言うけど俺にもあったはずで、圧倒的だった日が。それはもう二度と来ないものだとどこからかごく自然に思っていたから目指すと言う選択肢すら当然のように削がれていたけど、やっぱりもう一回くらい体感しておきたいみたい。ステージ上でだろうが作品の中でだろうが。そんな事を思わせてもらった。それくらい素敵なライブだった。

夕方、歌詞を書いていると送り忘れていた請求書の存在に気付いて急いで身支度を済ませて、玄関を出た途端にまた踵を返した。
そしてそのまま靴も脱がずに部屋へ戻って羽織っていたカーディガンをソファへ投げて郵便局へ向かった。相変わらず揺れっぱなしとなっている、全体的に。


朝方返信をもらったタイミングからふと聴きたくなって、今日だけで3回くらい聴いている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?