富士通エフサスの再編に見るITインフラサービスの今後
前回、ITインフラサービスは現場にハードウェアがなくなるため、その付帯作業もなくなるという内容の記事を書きました。
今、その業務に従事している人は今後どうなっていくのでしょうか。
再編が進む、この分野では最大手の富士通エフサスを題材に考察していきます。
ITインフラサービスにまつわる作業は、6つの職種により提供されています。具体的にどのような影響があるのか挙げていきます。
1.ハードウェアのエンジニア(CE)
2.インフラエンジニア(サーバ系)
3.インフラエンジニア(ネットワーク系)
4.運用支援担当
5.設備工事担当者
6.営業
以上の職種の人に影響が出ています。
富士通エフサスの再編にもそういった事情が働いているのではないでしょうか。
同社では2021年の4月から、1から5のエンジニア系の人材はそのままですが、6の営業は富士通マーケティング(FJM)を母体とする富士通ジャパン(FJJ)に転籍したそうです。ここには富士通本体の営業(中堅企業、自治体など)や他の子会社からも営業・SEが転籍してきており、業種ごとの営業体制になっているようです。
■職種ごとの影響
1.ハードウェアエンジニア(CE)
導入設置、保守対応の対象がなくなり、保守収入が減ります。
【サーバー・PC系】保守単価の高いサーバ系機器がなくなり、逆に保守単価が低い/現場での保守対象とならない(引き取り修理など)PCやスマートデバイスなど、引き取り対応などの機器が残るでしょう。
【金融端末系】ATMの共同利用等での削減、店舗統廃合で減少します。また、FinTechにより現金を扱う機会(機械)が減るでしょう。
【店舗POS系】WindowsPOSが主流となり、タブレットPOSでの提供も増えています。iPadのPOSもあります。キャッシュレス決済により、釣銭機などがなくなります。すると、POS専用機+釣銭機の構成からPCタブレット+カードリーダの構成になり、保守単価は著しく下がります。
これにより、各地に配置されるCEが減少するでしょう。
2.インフラエンジニア(サーバー系)
顧客現場にサーバーのセットアップをする必要がなくなります。
この人員は、データセンター等の大規模顧客向けに集約され、地方への組織展開は少なくなるでしょう。
各種サーバーアプリはクラウドサービスに移行され、「構築」から「設定」作業に代わり、顧客自身が行えるようになり、外注の必要性がなくなります。
3.インフラエンジニア(ネットワーク系)
企業のネットワーク構築の目的はセグメント分けです。拠点間接続や、セキュリティレベル、サーバー・クライアント、フロア等でネットワークを分け、通信を制御するのです。
各種業務がクラウド化し、インターネットに直結されるスマートデバイスやモバイルPCが増える中、従来のネットワークの概念が意味をなさなくなってきています。
テレワークが進み、そもそも企業のネットワーク自体が不要になっているケースもあります。
4.運用支援担当
顧客のサーバーの「お守り」のために常駐したりするエンジニアや、ハードウェアやソフトウェアの異常を監視する機能は、その存在意義を失います。ヘルプデスク的な業務は残るかもしれませんが、それとてクラウドサービスで業務が成り立てば、内製化されてしまうでしょう。
5.設備工事担当者
サーバールーム自体が不要になればそもそもこの職種は不要になります。
データセンターなどの需要しかなくなるでしょう。
6.営業
クラウドサービスで業務を実現するにはインターネットと端末があればよく、ITインフラを提案する営業は、ほぼ不要となるでしょう。
富士通エフサスの営業が富士通ジャパンに移籍となったのもこの理由からではないでしょうか。
■今後について
ITインフラサービスは最終的にはハードウェアが存在するところにしかビジネスがなくなります。クラウドサービスを提供する拠点としてのデータセンターとそれを利用するための端末(PC/スマートデバイス)の2極に集約されていくでしょう。
そのためには、従来の全国にもれなく要員を配置したモデルを縮小し、最適配置に変えていく必要があります。その際に一番割を食うのが現場を一番支えている若手のエンジニアです。先行きが縮小傾向のため、エンジニアの飽和状態となり、彼らにとっては定年までこの分野でやっていけるかが問題となります。
エンジニア自身の対応については、副業なり転身なり自活の道を探ることがこれからは必須となりますし、事実この分野での転職者は多いと聞いています。
企業側としては、このエンジニアをどのように活かしていくのかが大きな課題です。大手であればなおさらその責任は重いでしょう。
再編を進める富士通エフサスの今後に注目していきたいと思います。