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初めて香水をつけたいと思った_混ぜるな危険1

2019年から、香りが好きすぎる変態デザイナーと一緒に仕事を始めました。これまで私は香りってなんかチャラい!と偏見を持っていましたが、彼と話すうちにむしろその奥深さに感銘を受け、香水を集めるようにまでなってしまいました。

彼は大学で建築を学び、現在はブランディングデザインをメインに(それに付随するグラフィックデザイン等も含め)活動しています。
彼は香りにハマった結果、視覚情報よりも嗅覚情報を扱うことに何か可能性があると考え、「香りで物事の見かたを変える」という目標に辿り着きました。

今回の仕事は、その目標と彼の考える香りの面白さ=「香りの10カ条」の2つをベースに、チームの名称を考えてほしいという依頼から始まります。

●一番初めに受け取ったメモ

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このメモを読み解いて、コンセプト作りを行なっていきました。

●嗅覚情報の特性

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まずは視覚情報と比較することで、嗅覚情報の特性をあぶり出そうと考えました。
視覚情報は何かしらの「現象」を伝えるものだと考えました。具体的には時間の経過や形状、色彩、空間等です。
それと比較した時に、嗅覚情報からは「〇〇の匂いがする」というように対象物の性質が伝わってくると考えました。木の匂いや腐った匂い、桃娘のように表面的なものではなくその裏側にあるものが直感的に感じ取れることが、嗅覚情報の特性です。

●匂いと香りの違い1

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次に、匂いと香りの違いについて整理する必要があると考えました。
この図は「匂い=性質を伝えるもの」という考えを図式化したものです。
例えば植物の匂いは植物そのものの成分や特性に加え、育った環境(水分・空気・地質)の影響を受けます。そして食物連鎖上その上位にいる草食動物、肉食動物、そして人間も間接的・直接的にその影響を受けます。

個々の匂いとは、自然に生み出されるアノニマスなものと定義しました。

●匂いと香りの違いの考察2

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そのように匂いが勝手に生まれるものであることに対して、香りは意図的に作られたものです。すなわち、形というビジュアル要素を削ぎ落し、体験のデザインに特化したプロダクトであると考えました。

匂い=自然発生的/アノニマス
   ↕︎
香り=意図的/プロダクト

匂いと香りの関係性はこのように整理することができるのではないでしょうか。
さて、ようやくここで「香りで物事の見方を変える」という想いが重要になってきます。その想いに実現するための“香り”とは一体なんなのか?を考えていきます。

●匂いと香りのあいだ

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彼の具体的な構想において重要なことは、香りが主役ではなく価値を伝えるための手段だということです。そのためには“香り”が、裏に消えなければいけません。

伝えたい価値を引き立たせるためのベストな“香りをセレクト”する。
“香り”はその価値に対して違和感を抱かせないほど、“自然に馴染む”。

これは価値がもっているであろう「匂い」を発掘し、「香り」によって体験化することによって、初めて実現できるのではないか。
そう考え、まずは“香り”=「匂いとしての香り」と定義しました。


●建築としての香り

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「匂いとしての香り」は、匂いと香りの間に位置付けることができます。
また価値(性質)を体験化する手法は、建築設計(周辺環境の特性や施主の思い・暮らし、街の歴史を人々が体験する空間として形にする行為)と非常に似ています。
彼がやろうとしていることは、大学で学んでいたこと密接に結びつくと考え、「匂いとしての香り」を「建築としての香り」と言い換えることにしました。
それによって “香り”を彼の過去と今を結ぶ一つの軸として定義しています。

ここまでの考察によって、彼の目的を達成するための手段を具体化ことができました。

●香りの10カ条

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次にチームの特性を具体化する必要があると考えました。
これは彼が感じている香りの面白さを10コ並べた、香りの10カ条です。
これらは「建築としての香り」の扱い方の指標であり、チームのスタンスに変換できると考えました。

●「香りの10カ条」から「香りの可能性」へ

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「香りの10カ条」をチームのスタンスに変換するために、以下の3つに整理することから始めました。

①「ヒト」・・・人との関係性を示すもの
②「モノ」・・・モノとの関係性を示すもの
③「コト」・・・コトとの関係性を示すもの

綺麗に3つに分けることは難しいためプロット図にし、それぞれの要素との距離を視覚化することで、3つの「香りの可能性」に整理しました。

①「ヒト」・・・見えない曖昧さによって解釈の余地を生むこと
②「モノ」・・・環境の性質と混ざり一体のものになること
③「コト」・・・誰もがフラットに体験できること


●「香りの可能性」から「チームのスタンス」へ

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「香りの可能性」を「チームのスタンス」に変換することで、チームの名称を考えるための土台を作ることができました。

「建築としての香り」×「チームのスタンス」によって名称を考えていきます。

●チーム名案(決定案)

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いくつかのチーム名案を提案しましたが結果的には、一番挑戦的な案が選ばれました。失敗すればネガティブなイメージを生む名称を、彼は笑いながら選び取りました。

このネーミング以降、混ぜるな危険のメンバーとしても活動することになりました。投稿時点では既に読香文庫というイベントも開催(2019.12.01~2020.01.31)しており、今後も関わっていく予定です。


次回以降のnoteでは、読香文庫の企画時の資料や、それ以降の企画についても時系列で掲載していきます。

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