ショートショート『空飛ぶストレート』
「ストレートヘアを持つ人に魔法の粉をふりかけると、空が飛べるの」
ティンカーベルは言った。
「ピーターパンってそんな話だったっけ?」
「”信じる心”が条件じゃなかったっけ?」
「てかコイツほんとにティンカーベルか?」
ネバーランドに何故か迷い込んでしまった僕たちは、目の前に現れた妖精のことがどうにも信じられなかったが、もとの世界に戻るためには空飛ぶ力が不可欠だったので、とりあえず順番に魔法の粉をかけてもらうことにした。
「わ!ほんとに飛べた!」
まずは黒髪さらさらロングのAが鮮やかに宙を舞う。すぐさま金髪ハンサムショートのBが続く。ここまで順調。そして最後は、赤毛くるくるパーマの僕の番。
「あれ、お前も飛べてるじゃん」
*
「無事に帰れて良かったー」
「結局、飛ぶのに必要だったのは信じる心だったけどね」
「はは、そうだね」
僕がストレートヘアの持ち主だってこと、ティンクにはバレていたのかな。