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ショートショート『株式会社リストラ』

株式会社リストラは、入社希望者が後を絶たない。

「ひとり入社したら、誰かひとりが強制退職させられる」という、社名を感じさせる何とも残酷なルールが人気の理由だ。

自動的に優秀な人材だけが残り、会社にそぐわないとされる存在が淘汰されていくシステムによって、働く社員はやり手中のやり手ばかり。業績は右肩上がり、給料やボーナスの額もトップクラスなスタートアップ企業の採用募集に、向上心溢れる野心家たちが殺到するのであった。

「社長、お世話になりました」
新たな中途社員の採用が決まりリストラ宣告を受けた社員が、社長室で最後の挨拶を交わしていた。

「…それにしても社長、どうしてこんな社名にしたんですか?」

「もともとは全く別の名前だったんだ。リストラのルール自体は昔からあったけどね。

創業者たちが全員いなくなったから、構造改革完了の意味も込めてさ」



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