ショートショート『コロコロ変わる名探偵』
女の勘は鋭い
とよく言われるように、
愛する男の前では、女はみな”名探偵”だ。
今日もある女が、男の部屋で名推理を働かせていた。
「この髪の毛、私のじゃない」
黒髪の女は、寝室の枕元に落ちていた、ゆるくパーマのかかった茶色い髪の毛を拾い上げてそう呟いた。
「新しい女ができたのね、許さない……」
*
黒髪の女が家を後にした30分後、男とゆるふわ茶髪女が帰ってきた。
「……ねえ、ちょっと誰のよ、これ」
茶髪女は、目視しづらいソファのくぼみから、見覚えのない女物のピアスを見つけて突き付けた。たじろぐ男に女はすかさず平手打ち。別れを告げて、そのまま家を出て行った。
あっという間の出来事に、男は膝から崩れ落ち嘆く。
「浮気なんて今までしたことないのに、どうして彼女ができるといつもこうなんだ……」
そんな様子を盗聴していた黒髪の女は、にやりと笑みを浮かべていた。
「今度の彼女も、無駄に勘が働く”名探偵”で良かったね、
私だけの王子様」