ショートショート『金持ちジュリエット』
”目覚めたジュリエットは、大変驚きました。
なぜなら、目の前には亡くなったロミオの姿が――…”
「あああもう!!なんでまたバッドエンドなのよぉ!!!」
苛立ったジュリエットは、思わずコントローラーを放り投げた。
今年30歳を迎える財閥令嬢のジュリエットは、年齢=恋人いない歴のいわゆる「喪女」だ。「ずーっとうちに居てくれていいんだからね?」と甘やかしてくれる大富豪のパパに無理を言い、自分の名前に絡めて「新章ロミオとジュリエット」という名のオリジナル乙女ゲームを作ってもらったのだった。
「ハッピーエンドルートの確率、高めにしてって言ったのにぃ…」
何度プレイしても悲しい結末を迎える物語にジュリエットはしびれをきらし、ゲーム画面を閉じてそのままベッドに横たわった。
「あーあ……ロミオ……」
「………ゲームでくらい、幸せ味わわせてよ……
…どうして前世の記憶なんか残っているのよ、ばかぁ……」