ウマに脚 トリに羽 ヒトに生理(後編)
【前編のおさらい】
・馬、牛、豚、羊、やぎ、鳥、猫、犬には人間のような生理がない。
・当たり前だと思われていた生理が、自然界では実は珍しい現象だった。
・人間はかつて捕食される側の弱い存在であったにもかかわらず、なぜリスクを負ってまで、進化の過程で、この「生理」という仕組みを身につけなければならなかったのか。
ここまでよろしいでしょうか。
それではお待たせしました。
本日の記事では、いよいよ核心の部分にせまっていきます。
人間にあって他の動物にないもの
それはズバリ大きくて複雑な脳です。
人間の脳は他のほとんどの動物と比べ、大きく、構造も複雑です。
この脳のおかげで人間は、今日のような文明社会を築きあげた、と言えます。
そして、脳の基本的な形は、お母さんのお腹の中で、つまり胎児の頃にほとんどが出来上がります。
馬が産後まもなく走り回れるように、鳥が羽を持って生まれてくるように、人間は、特別な脳を持って生まれてくるのです。
しかし、この人間の脳を作り上げるためには、特別な栄養補給システムが必要になります。
胎児は自分で栄養を補給できませんから、お母さんの体から栄養をもらいます。そのために、お母さんと胎児は、’’あるもの’’で繋がります。
それが「胎盤」です。
特別な胎盤(たいばん)
考えれば当たり前の事ですが、妊娠出産の仕組みは、動物によって全く異なります。
魚や鳥のように卵を産むものや、哺乳類でも、カンガルー等の有袋類はほぼ胎児の状態で、お母さんのお腹の袋に産み落とされ、母乳で育てます。
その他のほとんどの哺乳類は、胎児が「胎盤」というものでお母さんのお腹の中と繋がり、栄養をもらいながら体を作ります。
人間もこの仕組みを採用してます。
そして、この胎盤が特別なのです。
人間は大きく複雑な脳を育てるために、胎盤がお母さんのお腹の中に深く繋がります。
この時、お母さんのお腹に直接食い込むと、赤ちゃんが生まれて外に出た時に、お母さんのお腹は、この胎盤に引っ張られ、裂けて、破れてしまいます。
ではどうするのか?
そこで登場するのが、子宮内膜です。
毎月の生理という現象は、この子宮内膜を分厚く育てて、妊娠がなければ外に排出する、という事を周期的にしています。
つまり、子宮の中で、妊娠の準備を、あらかじめ整えているのです。
この準備しておいた、子宮内膜というクッションに胎盤は食い込みます。
そして出産の時は、子宮内膜が脱落細胞というものに切り替わり、はがれて胎盤ごと出てきます。
こうする事によって、女性の体は命の危険を孕んでいる、妊娠、出産という偉業を成し遂げるのです。
いかがでしょうか?
一般的にあまり知られていない、生理の大切な役割をご理解頂けたかと思います。
生理という仕組みがなければ、人間は大きく複雑な脳を持った子孫を残すことができず、文明を築くこともなかったでしょう。
そして、愛を育むことも。
毎月のしんどい生理に耐え、人類の文明と、愛を育んできてくれた「女性」という存在に、尊敬と感謝を。
いつもありがとうございます。
ジェントルきょうへい
参考:生理とは(辞典)
参考:犬のヒート(発情出血)
参考:日経サイエンス 2019年11月号 特別リポート:生殖医療の現在 「抜け落ちた視点 月経の科学的解明」著者 Virginia Sole-Smith
参考:「サピエンス全史」著者 ユヴァル・ノア・ハラリ 初版発行2011年