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演劇部での後悔

下手の横好きではあるものの、マンガやイラストを描くことが趣味な私。
夏の終わり頃までとある商業アンソロで描かせて頂いていた成人向けマンガ(所謂エロマンガ)の仕事を辞退し、現在は高校演劇を舞台とした一次創作の一般向け同人マンガを描いている。

私は高校1年生の頃、演劇部に所属していた。
中学時代はバリバリの帰宅部で高校演劇などに一切縁のなかった私が何故高校でいきなり演劇部に入部したかと言うと、新入生向けに開かれる部活動説明会の壇上に立っていた赤縁眼鏡の似合う女性の先輩(以下S先輩)に一目惚れしたという、至って不純かつ単純な動機だった。
私は今も昔も眼鏡フェチなのだ。

そんな邪な気持ちを抱いて入部してきた私に対し、たった一人の新入部員な事もあってか先輩方は優しく歓迎してくれた。

私が入部を決めるきっかけとなったS先輩は「勉強になるから」と近隣校の自主公演に連れて行ってくれたり、私が担当していた道具作りをわざわざ電車に2時間近くも揺られて私の家まで来て手伝ってくれたり、休日の活動日に駅から自転車に二人乗りして一緒に学校へ向かったりと何かと後輩の私の面倒を見てくれる人で、活動中は大体一緒に居たような気がする。
これまでの人生を振り返ってもここまで無条件に他人から優しくしてもらった経験は他に無いんじゃないかな。

そんなこんなで入部~秋の地区大会までを無事に乗り越え、更に半年ほど経った冬の終わり頃に事件は起きた。
春の地区大会(高校演劇では通常秋と春に大会が開かれる)へ向け、上演する台本を決めねばならないという時期にS先輩が自作の台本を携えて部室へやってきた。
台本の内容は正直言ってあまり覚えていないのだけど、確か周りの先輩方がS先輩の書いた台本に猛反対していて、S先輩とその他部員で対立気味になってしまったのだ。
そんな中、私は他の先輩のプッシュにより代わりの台本を書くことになった。
…が、当時は創作など全くした事がなかった私に上演時間1時間の脚本など書ける訳が無い。
全てが嫌になり、自暴自棄となった私は部活から逃げた。

S先輩は最後まで私の面倒を見ようとしてくれたようで、偶々校内で遭遇した際に、先輩は私の腕を掴み「今後どうするのか」と問い掛けてくれたが
それに対し私は手を振り払ってその場から逃げ、そのまま演劇部を退部してしまった。

この出来事が自分に対し非常に優しく面倒を見てくれたS先輩との最後の思い出であり、恋愛的に好きとか嫌いとか、そういった物の以前に恩を仇で返してしまったという後悔があれから15年の時が過ぎ三十路へ突入した現在でも頭の中をグルグル回っている。

現在進行形で汚点を積み重ね続けている人生である事に自覚はあるが、流石にここまで最低な事をした経験は他に無いと思う。

因みに私が退部した後、他の先輩方も当時の部長一人を残して退部してしまったようで、翌年に演劇部の文化祭公演のピンチヒッターとして私が裏方の手伝いに行った時には既にS先輩の姿はなかった。

あの時、S先輩が持ってきた台本を使うよう他のメンバーを説得していれば。
あの時、S先輩の手を払い除けずに部活へ復帰していれば。
あんなに優しくしてもらったのに、何故私はS先輩の味方で居られなかったのだろうか。

この記事が平成21年の自分の元に届いてくれたらどれだけ良いか。
あんなに好きだった、あんなに優しかったS先輩を傷付けてしまった自分の事が本当に許せず、自己嫌悪で胸がいっぱいだ。

きっとこの事は40代になっても50代になっても、はたまた死ぬその時まで後悔し続けるのだろう。
今更謝ろうとしても当時の先輩方の連絡先などもう知らないし、当時のメンバーには二度と会うことは出来ないと思う。

そんな十代の頃の後悔を元手にして、現在コミティアに出す予定の100pマンガの原稿を描いている。


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