駆けろ鉄路2千キロ!道東を鉄道で巡る旅 ~2日目②花咲線
2022年8月22日(月) 13:25 釧路駅
列車は釧路駅を出発。根室に向けた2時間半の旅が始まる。
花咲線の地図
旅程がより実感できるよう、花咲線の地図を以下に書いた。
花咲線の全長は135.4km。午前中に乗ってきた帯広-釧路よりも長い。京都からだと、大阪、神戸を過ぎ、姫路までの距離に相当する。
なんとなく釧路は北海道の東の端で、花咲線はそこからちょこっと伸びている路線という印象があったが、こんなに長い路線が続いているとは。
釧路から135km先には、どんな風景が待っているのか。
武佐駅~尾幌駅:大自然の風景
ある人曰く、「花咲線の良さは、釧路発車後10分でわかる」と。
本当かな?とも思ったが…
本当にわずか10分で、大都市釧路から、人っ子一人いない原野の中へ放り出された。
これは…すごい所に来た。
武佐駅から先、特に別保駅から尾幌駅までは森林の中を縫うように走っていく。この辺りには駅も(廃駅含め)ほとんどないので、思う存分、目前の緑を堪能できる。
しばらく、車窓からの風景をどうぞ。
あ、何かいる!
これは…タンチョウだ。
タンチョウというと冬のイメージが強いが、夏は北海道各地で子育てをし、冬に越冬地に集まってくるのだそうだ。そういう意味では、道内に散らばっている夏に見られたのはラッキーだったかもしれない。
門静駅~厚岸駅:昆布干しの風景
門静駅に着くと、駅前で何かを干しているのが見えた。
駅前の土地が昆布の干場として使われるのだそうだ。
昆布干しは海岸でやるものだと思っていたが、そこだけでは土地が足りないということなのかもしれない。海の恵みの豊かさを感じる。
厚岸駅~茶内駅:厚岸湖の風景
厚岸と言えばカキ。駅前の「氏家待合所」で販売されている「かきめし」が全国的にも有名だ。
実は今回の旅でも狙っていたのだが、以前行われていた予約販売は現在やっていないようで、また買うために下車する時間もなく、泣く泣く断念。リベンジを誓う。
厚岸から先は厚岸湖沿いを走る。
厚岸湖に流れ込む別寒辺牛川(べかんべうしがわ)の河口に近づくと、次第に草が生えてくる。湿地になっているようだ。
空の青と草の緑のコントラストが美しい。
ガラス越しに見てるのはもったいないな。(窓が汚れてるのもあって…)
思い切って窓を開けることにした。
ここからは色調無加工の画像でお送りします。
あぁ、天気のいい時に来れて良かったなぁ…。昼に釧路湿原行きを見送っているのもあり、感動もひとしお。
窓を開けて風景を見られるのも、この時期だからできることだろう。寒い季節にそれをやったら、周りから怒られても仕方ない。本当にこの時期で良かった。
茶内駅~姉別駅:ルパン三世の町、浜中町
次の駅「茶内」に着くと、あの人が出迎えてくれた。
書いてある通り、浜中町はルパン三世の作者、モンキー・パンチの生まれ故郷で、各駅にルパンのキャラが配されている。
実はルパンのキャラのラッピング車両もあるのだが、今回の旅ではあいにく会うことができなかった。また機会があれば。
厚床駅~別当賀駅:牧場のある風景
厚床駅から根室市に入った。終点の根室駅はまだ40km近く先だが、早くも最東端の市に突入した。
花咲線では、畑ではなく牧場が目立つ。気候の影響だろうか。防風林の隙間から、時折牛や馬の姿を見ることができた。
ちなみに途中には「初田牛」という廃駅があるが、牛とは特に関係ないらしい。
牧場の広い土地にはエゾシカも多く生息しているようだ。
別当賀駅~落石駅:落石海岸の絶景
別当賀駅を過ぎると、再び海沿いに出る。
この「落石」(おちいし)の辺りは花咲線の中でも特に絶景のスポットで、花咲線のポスター等でもよく使われている。
まるで日本ではないような景色が目前に広がる。
是非窓を開けて絶景を楽しんでほしい(上の写真では開け忘れた
落石駅~昆布盛駅:風車のある風景
落石駅を過ぎると、遠くに風力発電の風車が見えてきた。海沿いは風が強く、風力発電にはもってこいなのだろう。
…だが、様子がおかしい。足がないのである。
イヤだな…怖いな…と思いながら、電車が進んでいくと、謎が解けた。
霧だ。霧が出ていて、風車の足を隠していたのだ。
写真奥の方にある風車、霧で足元が隠れて羽しか見えていないのがお分かりいただけるであろうか。
この辺りの海域では暖流と寒流がぶつかるため、夏に霧が出やすいそうだ。「霧多布」という地名もあったな…と思い出したが、霧多布はこの辺りではなく、先ほど通ってきたルパンの町、浜中町にある。
電車は「昆布盛」という変わった名前の駅に着いた。そういえばさっきも昆布を干している人を見た。その名の通り、この辺りも昆布の産地なのだろう。
東根室駅:日本最東端の駅
電車は西和田駅と花咲駅跡を通過し、ついに日本最東端の駅、東根室駅に到着した。
自分と同じく、最東端到達を目的としたと思われる「鉄」な同乗者が一斉に駅名標と「日本最東端の駅」の看板の写真を撮る。皆それぞれ、日本最東端の駅に到着した達成感を静かにかみしめる。
ちょっとした興奮の後、電車は次の駅、根室駅に向けて出発した。
根室駅:花咲線終点、日本最東端の有人駅
釧路を出て2時間半、花咲線の終点、根室駅に到着した。
先ほどの東根室駅から北西にカーブしたところにあるので、根室駅は最東端ではない。代わりに「最東端の有人駅」の称号があり、ホームには「日本最東端有人の駅」の看板が立っていた。
西日を背にたたずむ最東端の看板を、逆光に苦戦しながら撮影する。
駅を出ると、目の前が海でないにもかかわらず、カモメの鳴き声が聞こえる。遠くまで来たなぁと旅情を感じる…ところだが、「キャア゛ァァァ、キャァ、キャァ」とけたたましく鳴いていて、正直やかましい(汗
あまり聞き慣れない声だったが、声の主はオオセグロカモメという品種で、北海道では年中見られるようだ。
今夜は根室で1泊するのだが、この鳴き声は何時ころまで聞こえるのだろう…
駅前では自転車ライダーが自転車を組み立てていた。これからさらに東、納沙布岬に向かうのだろう。絶景の中を自転車で走る。実に魅力的だ…が、ここまで自転車持ってくるのが大変そうだな…
根室駅の隣にある「根室市観光インフォメーションセンター」で、最東端駅の到着証明書を受け取る。証明書はテーブルに置いてあり、どこから来たか等の簡単な情報を用紙に記入し、自分で日付印を打って入手する形だ。が、いざ日付印の押印という段階で何故か手が震えてしまい、綺麗に押すことができなかった。
フリー切符等を買うと、駅員さんがよく日付印を打ってくれるのだが、簡単にやっているように見えて、あれ意外と難しいんですねぇ、と、隣にいた「鉄」っぽい夫婦連れと談笑する。
東根室駅:ふたたび
再び根室駅に戻り、折り返しの電車に乗ることにした。
根室で泊まるのにどこに行くのかというと、先ほど通過した東根室駅だ。そこできちんと下車して、名実ともに最東端に「到達」したと言いたい、という単なる自己満足である。証明書ももらったし。
車内は行きと同じくらいの混み具合だった。というか、根室に着いてとんぼ返りで帰ってしまう人が相当数いるようだ。大きな北海道、留まっている余裕はない、ということか。しかしそれはあまりにも勿体ないのでは…!
16:12、電車は根室駅を出発し、3分後、あっさりと東根室駅に到着した。
最東端の駅に下車したのは自分だけ。まぁ、わざわざ下車にこだわるのは自分くらいか。なにせ、一度降りれば、次の電車は3時間後である。
電車の扉が閉じ、まさに出発しようかという所で、遠くから女子高生3人組が走ってくるのが見えた。しかし駆け込むにはあまりにも遠すぎた…電車は無情にも出発してしまった。
「あー行っちゃった!」「ははは」
駅前にある最東端の駅の碑の土台に座り込んで談笑を始める3人組。
そのまま待つんだろうか。繰り返すが、次の電車は3時間後である。
場違いな自分はささっと周辺の写真を撮って、東根室駅を後にした。
君たちが座っているその碑も撮りたかったんだけどな…
次回予告
東根室駅を離れ、ゆっくりと根室の宿に向かう。
根室の味覚に舌鼓を打ちつつ、3日目に向けて募る不安とは…?
ちなみに
根室市が花咲線の公式サイトを立ち上げている。
自分が撮った写真よりもっと美しい写真が並んでいるので、是非見てもらって魅力を知り、そして実際に花咲線に乗車して絶景を味わってほしい。