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Photo by
ryokoyunoki
薫風の侯。
私の本名を知っているはずのその人は、それでも私を昔のハンドルネームで呼ぶ。
私もその人の本名を知っているけど、やっぱり昔のままハンドルネームで呼ぶと思う。
15年くらい連絡など取っていなかった。
高校生の頃から書き始めたWeb上の日記を、その人は何故かいたく気に入ってくれた。
時々メールでやりとりをした。
時々日記の中でもやりとりをしたりした。
何が彼の琴線に触れたのかは今でも解らないが、文章を褒められることは素直に嬉しかった。
顔も性格も知らないであろう私を素敵だと手放しに褒めてくれるその人が私は結構好きだったのだ。
お互いにきっとなんだかんだ相変わらずなことにホッとしている。
私は変わらず田舎の沿線の閉鎖的な町に住み、その人は海の見える町に住む。
美術館が好きでバイクが好きだった。
花もお酒も好きだったと記憶している。
仏桑華を教えてくれたのは、その人だ。
そろそろ、芙蓉も咲きますね。
木槿は今が綺麗です。仏桑華はここら辺では中々見ません。
あなたが見たのも確か沖縄でしたね。
私の肩越しに花や海を眺めたいと気障なことを何気なく言えるその人が、私はやっぱり結構好きだ。
アナベルの雪の中に立つから、その時は嘘でも綺麗だと感想を言ってね。
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