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RINGOMUSUMEの歌詞を読む ~カタカナの使い方~

1 多田さんの歌詞

多田慎也さんの曲は、メロディーがいいのはもちろんですが、「歌詞がいい」という人は結構多いと思います。

先日、多田さんのラジオで、影響を受けたJ-POPとして「ミス・ブランニュー・デイ/サザンオールスターズ」をあげていて、
「ひとつの単語だけで、いろいろ考えさせてしまう歌詞に衝撃を受けた」
と言っていました。
ミュージシャンになる前から歌詞に対する感度が高く、さらにセンスを磨いてきて、今の多田さんの歌詞があるのだろうなあと思います。

ということで、RINGOMUSUMEの歌詞カードを改めて読んでみました。

歌詞の世界観、ストーリー性といった大きなテーマで書ければいいのですが、いまいち読解力に自信がないので、「カタカナの使い方」について書きたいと思います。(地味すぎ?)

日本語は、漢字、ひらがな カタカナ、alphabetの使い分けによって、微妙なニュアンスの違いが出るなど多彩な表現ができます。
多田さんも、当然、意識して文字を選んでいるはずなので、じっくり探るとおもしろいと思います。

(「ん?」と思うことがあると思いますが、感性の違いということでご容赦ください。)

2 「アメノチヒカリ」

まず、タイトルが全部カタカナの「アメノチヒカリ」です。

多田慎也史上一番チャレンジした楽曲。
「どんな時でも自分らしく」をコンセプトにした、地元の若者を応援する爽快なアッパーチューン。
RINGOMUSUME HP「17thシングル『アメノチヒカリ』リリース」

歌詞の内容としては「いろいろ思い通りにならないことがあっても、自分を信じてがんばれ」という感じです。

アメは「意地悪なセカイ」のような思い通りにならないこと、ヒカリは「背伸びして取る夢の風船」のような希望を表す比喩で、自然現象の雨・光とは関係ありません。

ためしに漢字交じりで書いてみます。
「雨後光」「雨のち光」「雨ノチ光」
漢字にすると自然現象の雨・光のように感じます。

ひらがなだけにすると「あめのちひかり」です。
自然現象の雨・光の感じは薄まっています。
また、カタカナと比べると、文字が丸いせいか、やわらかさを感じます。

「あめのちひかり」は、V6『WAになっておどろう』みたいな曲調が合うイメージです。
そういえば、歌詞の意味もちょっと似ているところがあります。
♪ 悲しいことがあればもうすぐ 楽しいことがあるから 信じてみよう ♪ (『WAになっておどろう』)

(話を戻します)

こうしてみると、全部カタカナが一番しっくりくる感じがします。

さらにカタカナの使い方を見てみます。

♪ アメノチキラリ 意地悪なセカイだって ♪
♪ 今日から オトナなんて 誰も決められるわけない ♪
♪ いいコじゃなくたって いいんだよ 自分に正直に ♪

「アメノチヒカリ」は、中高生に向けた応援ソングでもありますが、中高生のころは、「もう大人でしょ」と言われたかと思うと、「子どものくせに」と正反対のことを言われたりします。

♪ どうぞ呼んでくれたまえ お好きなように何でも ♪という歌詞にも関連しますが、
「セカイ」「オトナ」「コ」いう表記は、若者の揺らいでいる状況を表しているともいえると思います。

では、ほかの曲についても、少し書いてみます。

3 「オトナ」を使いがち

【snow snow snow】
♪ 知らない扉を Knock Knock Knock オトナになるって ドキドキ ♪

【FOURs】
♪ 少しオトナになれたかな 私たち今どこに居るのかな ♪

※ 成人ということではなく、いろいろなことを経験したり、知ったりして、人間的に成長し始めた状態を表現しているように思います。

4 「君・キミ」の使い分け

【JIGA-JIGA】
♪ 君の横顔思い出した時に 何かがハジけた ♪

【JOMON】
♪ キミのせいだよ blue and lonelyなFeeling ♪
♪ キミにクラリ ♪
♪ キミに会いたりななない! ♪

※ 「君」は具体的な個人で、「キミ」は抽象的に縄文人全体を指す、ということでしょうか??

【JOMON】はほかにも、
♪ オンナノコッテタイヘンデショ? ♪
♪ トキメク 色即是空 ♪
があります。

※「女の子って大変でしょ?」にすると、現実感が出てくる気がします。
とするとやはり「抽象的縄文人説」でいいのか……?

5 同じ音の書き分け

【Ringo star】
♪ 冷たい風にフワリ 花びら一片 ひらひら ♪
♪ ふわりふわり ゆらりゆらり あなたを探すように ♪

※ なんとなくだけど「フワリフワリ」は見栄えがよくない気がします。
春のあたたかく優しい風は「ふわり」、冷たい風には「フワリ」が合いそうです。
歌詞を読み進めると、「冷たい風にフワリ」は「時に傷つくことさえ恐れず進め」につながり、「ふわりふわり」は「宵の風に舞う花びらは儚い想い」につながっているので、そのイメージを視覚的に表したのかもしれません。

6 ??(よくわからない)

【JET GIRL】
♪ グルグルしていく この季節もイノチも 誰の?誰の?誰の? ♪

※ このイノチってなんだろう?

【kimi-dake】
♪ アイシテルがぎゅっと詰まって ♪

※ 嶽キミに詰まっているアイシテルとは、甘さ?農家さんの愛情??

【0と1の世界】
♪ アイボウに飛び乗った 鳥たちさえずる夜明け前 ♪

※ 仕事のパートナー(軽トラ、漁船など)を相棒と呼ぶことはあります。が、カタカナにしたのはなぜ?

7 「夏ノ蜜柑」

♪ 恋した私 夏ノ蜜柑 ♪

これまでの例とは逆に、漢字が象徴的な意味で使われています。

「ミカン」「みかん」という文字は、果物感が出てしまいます。
「蜜柑」は目にする機会が少ないせいか、果物感は薄れる気がします。

さらに「ノ」と組み合わせることで、レトロ感というか、どことなく古風なところがある女性を思わせます。
(一文字だけど私的にカタカナの使い方ベスト1です。)

ためしに別の表記をしてみました。
夏のミカン 夏のみかん 夏の蜜柑
果物の宣伝のように見えて、やはりしっくりきません。

夏ノミカン 夏ノみかん ナツノ蜜柑 ナツノミカン Natsu no Mikan

しいていえば、「ナツノミカン」は「あり」かもしれません。
でも、なんとなくPOPな感じがして、歌の中の女性像が変わってしまう気がします。

<(_ _)>
とりとめなく、話が長くなってしまいました。

カタカナだけでこんなに語れるなんて、歌詞の世界は広くて深いですね。

多田さんは、最初から迷いなく文字をチョイスしているのか、試行錯誤でいろいろ書いて並べてみて、しっくりくるのを選んでいるのか、どっちだろう?

おわり

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