RINGOMUSUME「JOMON」が王林のブレスで始まるのはなぜか?
姉妹編「RINGOMUSUME「JOMON」が王林のささやきで終わるのはなぜか?」
2021年2月20日に公開された「青森の縄文遺跡群」イメージソング『JOMON』PR MOVIE(https://youtu.be/_k_KFMJhU1M)は、1週間で視聴回数が7万回を超えました(2.28‐15:00現在)。
まさに「縄文と現代をシンクロしながら展開する、時空を超えた新感覚のPR MOVIEは、MVとしても見応えのある本格派。」です(YouTubeの説明文)。
楽曲も映像も、そして遺跡で火を焚くのを許可した青森県の対応も、全部がすごいMVなので、視聴回数が伸びるのも当然でしょう。
私も大好きなMVで何度も視聴していたのですが、あるとき、このMVが王林のブレス音(息を吸う音)で始まっていることに気づきました。
あれっと思いました。以前ネットで「ブレス音が聞こえるのはNG」というのを見たような気がしたからです。
ためしに「CD ブレス音(息継ぎ音)」などで検索してみると、やはりブレス音に批判的な多くの記事が出てきました。
いろいろな意見がありますが、まとめるとこんな感じです。↓
1 ブレス音が聞こえるのは歌の基礎ができていない、下手な人である。
2 ブレス音が聞こえると文句を言う人はいても、聞こえないと文句を言う人はいない。(よって、ブレス音はない方がいい)
3 CDでは技術的に消せるはずだから、ブレス音は消してほしい。
しかし、音源を作っている方もプロです。
ブレス音を気にする人が一定数存在することが分かっていて、ブレス音を消すことが技術的に可能なら、普通はブレス音を消します。
もちろん、歌の途中のブレス音は消しづらいことがあるかもしれませんが、「JOMON」の場合、始まりのブレス音で歌い出しまで少し間があるので消すのは容易です。
それにもかかわらず消していないということは、そのブレス音になにか意味があるのではないか。そう思いました。
1 RINGOMUSUMEの曲中のブレス音
まず、これまでのRINGOMUSUMEの曲でブレス音はどうなっているのか聴いてみることにしました。
RINGOMUSUMEの曲で、イントロがなく、いきなり歌から始まるものとして思いつくのは、「ぐぐっ」https://youtu.be/U6kyFY4igO8、「りんごのね」https://youtu.be/0xlskXvj0yI です。
この2曲の始まりがどうなっているかを聴いてみると、
「ぐぐっ」はブレス音らしきものが一瞬聞こえましたが「JOMON」ほど明確ではありませんでした。
また、「りんごのね」はブレス音は聞こえませんでした。
ほかの曲では、オケがそれなりの音量で鳴っていることもあって、気になるブレス音はありませんでした(個人の感想です)。
そんな中で「夏ノ蜜柑」https://youtu.be/5x2mb2kGsZoでは、特にJのブレス音が割とはっきり聞こえました。
歌い出しの息を吸う音と最後の「君といたあの夏が来る(ブレス)よ」では、こんなに聞こえてたのかと思うくらいでした。
ただ、これも味というか演出だと思います。その理由は、あとで述べます。
2 King Gnu -「白日」
RINGOMUSUME以外でイントロがなく、いきなり歌から始まる曲で思いつくのは、King Gnu - 「白日」https://youtu.be/ony539T074wです。
聴いてみると、思い切り息を吸う音で始まり、「ワザとなの?」というくらい思い切りブレス音を出していました。
ただ、曲が進むにつれてブレス音が強調されなくなっていきます。やはり、最初にブレス音を強調していたのは、ワザとなのだと思います。
白日の歌詞は、過去の重い出来事を告白するような内容になっています。そういうことを言うには、一度大きく息を吸って、思い切らなければいけない。そういう感じを出したかったのかなと思います。
「夏ノ蜜柑」も、君を探して走ったり、君のことを想って胸が苦しかったり、君といた夏が来る(のに君はいない)とため息をついたりするわけで、息遣いが聞こえた方がそういう曲の内容に合っていると私は思います。(「君といたあの夏が来るよ」は本当に切ない。)
3 「JOMON」のブレス音の意味とは
「JOMON」の場合、白日や夏ノ蜜柑のような事情はないと思います。
では、どういう意味が考えられるでしょうか。
(1)「ループ再生に最適化した」説
注目したのは、「JOMON」が縄文と現代のシンクロを強く印象付けるように、「星の数ほどに遠い むかしむかしのこと」で始まり、そして終わっていることです。
思わずループして聴きたくなりますが、実際に「JOMON」をループで聴いてみると、ブレス音がある方がおさまりがよい気がします。
歌いきって(息を吐いて)曲が終わっているので、息を吸って始まるのが自然に感じられるのです。
(2)「阿吽の呼吸」説
また、息を吸う、息を吐くが対になっていることで思いつくのは「阿吽」です。
ここでは始まりと終わりという意味ではなく、「阿吽の呼吸」で縄文と現代がシンクロしているという意味なのかなと思います。
(3)「現代から縄文への切り替え符号」説
実は、「JOMON」にはブレス音が聞こえるところがもう一か所あります。
それは、1:39からのサビ(「JOMONタイムスリップガール」)の前です。
2番(1:05「青き森 深い夜を」~)は、現代の彩香(ヒスイ大珠)~王林(鹿角製櫛)~ジョナゴールド(遮光器土偶)~とき(貝輪)のシーンがあり、1:37で縄文に場面転換し、ブレスがあってサビという流れになります。
そうすると、ブレス音は現代から縄文への切り替えの符号と考えることもできそうな気もします。
4 終わりに(歌は楽しく聞くのが一番!)
いろいろ書きましたが、私が勝手に想像していることであって、本当のところはわかりません。(いろいろ思いを巡らせるのは、楽しかったです。)
私の場合、もともとブレス音を全然気にしていませんでした。
この記事を書くにあたり、ブレス音に意識を集中して聴いていたら、ブレス音を気にするクセが丸1日抜けませんでした。
曲を楽しむどころではなくなってしまうので、こういう聴き方はおすすめしません。
「ブレス音が聞こえるのは歌の基礎ができていない、下手な人である」というのは、声楽的には正しいのだと思います。
ただ私は今回のブレス音に意識を集中して聴くという体験を通して、「自分は(声楽的に)上手な歌を聴きたいわけではない」ということを再確認しました。
やはり、好きな人(グループ)の歌を、自分の好きなように、楽しく聞くのが一番です!
おわり
追記
聴き手一人一人の心に残るように歌うことが一番大事
(2021.3.11東奥日報「りんご娘 彩香が書く 13」)