津軽弁講座 ~RINGO SISTERS「SEBADAVA MAINEBION」編~
「沸騰ワード」「アナザースカイ」の効果か、RINGOMUSUMEのYouTubeチャンネル登録者数の伸びがすごいですね。
「りんご娘」というネーミングとバラドルのイメージでMVをみて、あまりのギャップにびっくりした人も多いみたいです。
ということで、
津軽弁に興味のある人もそれなりに増えていると思いますので、RINGO SISTERS「SEBADAVA MAINEBION」を題材に解説したいと思います。(念のため、RINGO SISTERSはりんご娘です。)
この曲は、スピッツの草野さんのラジオで紹介されて、全部津軽弁のロックに衝撃が走って、ツイッターがそこそこ沸きました。
※字幕オンにすると、標準語訳が表示されます。↓
※私は、子供の頃は、弘前市、黒石市で育ち、今は青森市在住です。
解説に大きな誤りはないと思いますが、あくまで個人の感覚です。
地域や年代によっては、別の解説があるかもしれません。
RINGO SISTERS「SEBADAVA MAINEBION」
作詞:樋川新一 作曲:多田慎也 編曲:島田尚
※歌詞カードはローマ字表記ですが、日本語表記に直しています。
津軽の おなごば なめるんでねえ この
(津軽の女性を馬鹿にするんじゃないわよ、この)
Yeah Yeah Yeah
びょん!びょん!せばだばまいねびょん!
「おなごば」=女性を
「ば」は、「~を」の意味になります。
ちなみに、
RINGOMUSUMEの「LOVE & SOLDIER」に ♪ わば なば 好ぎだなんて ♪ という歌詞があり、歌詞カードでは「I LOVE YOU.俺、お前のことが好きだ。」と解説しています。
「わば」=私は、「ば」は「~は」の意味になっています。
私自身は「ば」を「~は」の意味で使ったことはありませんが、「わだばゴッホになる(棟方志功)=私は絵描きになる」という例もあるので、時代や地域によっては、そのような使い方があるのだと思います。
わんどきゃ すげんだ なさ すかへるが
(私たちって すごいのよ あなたに 教えてあげましょうか)
「わ」=私
「わんど」=私たち
「んど」は「~たち、一定数以上の固まり、群れ」の意味です。
(例)
「な」=あなた 「なんど」=あななたち
「わらし」=こども 「わらはんど」=こどもたち
「あれんど」=あの人たち、あれらのモノ
「きゃ」=~は
「わ(っ)きゃ」=私は 「な(っ)きゃ」=あなたは
「きゃ」はほかに、共通認識を示す(促す)ニュアンスでも使われます。
(例)「んだ」=そうです 「んだっきゃ」=そうですよねぇ~
「すげんだ」=標準語「すげぇんだ」
「なさ」=あなたに
「さ」=~に、~へ
(例)「わさ」=私に、私へ 「どさ」=どこに、どこへ
「すかへる」=教える。「しかへる」と発音することもある。
「が」=~しようかの「か」と同じ
りんごと米で こしたに おがる
(りんごと米で こんなに 成長するのよ)
自給自足だ 青森県 青森Prefecture
「こしたに」=こんなに
(類)「あしたに」=あんなに 「そしたに」=そんなに
「おがる」=成長する、生える、大きくなる
(例)庭さ 草 おがった。(庭に雑草がぼうぼうだ)
老後の夢は家庭菜園?
がっぱ 売るほど とぢ(土地)余って
(たくさん 売るほど 土地が 余って)
「がっぱ」=たくさん
「がっぱど」と「ど」がつくこともある
(類)「ずっぱど」=満杯に、限界まで
(例)「はごさ ずっぱど りんご ある」(箱に満杯のりんごがある)
はだげ(畑)貸すじゃ 器具も貸すじゃ
(畑 貸すよ 農具も貸すよ)
みんな農家だ 青森県 青森Prefecture
「じゃ」=口調を整える役割?
ちなみに、
RINGOMUSUMEの「LOVE & SOLDIER」に ♪ わの どさ こいじゃ ♪ という歌詞があり、歌詞カードでは「俺のところにおいでよ。」と解説しています。
「こい」と「こいじゃ」の違いは、うまく説明できませんが、「じゃ」には多少お願いの要素が入っているような気もします。
やーやーどー
(弘前ねぷたの掛け声)
一度 来てみへ 青森県 青森Prefecture
(一度 青森県に 来てみなさい)
「来てみへ」=来てみなさい
「へ」=~してみたら、~してみなさい
(例)い(行)ぎへ=行きなさい
やーやーどー
いながば なめじゅんだな いっぺん 来てみへ 弘前さ
(田舎を 馬鹿にしてるの? 一度 弘前に 来てみなさい)
「なめじゅんだな」=馬鹿にしているの?
「なめる」=(標準語)馬鹿にする
「じゅん」=~している
「だな」=~なのか?
「じゅん」を詳しく説明すると、
まず、「ちゅう」=~している、という津軽弁があります。
(例)「いま 弘前さ 来ちゅう」=「いま、弘前に来ています」
これを疑問形にすると、
「いま 弘前さ 来ちゅんだな」=「いま、弘前に来ているの?」になります。
「来ちゅうだな」となるところ、発音の関係で「ちゅん」に変形します。
「なめじゅんだな」も「なめ(っ)ちゅうだな」となるところ、訛りで濁音化し、変形したものと思われます。
「弘前さ」=弘前へ
「さ」=~へ
桜ど おなごも 世界一 リンゴしかねど 思えばまねや
(桜と女性も世界一 りんごしかないと 思ったらだめだよ)
「ど」は訛りによる濁音化です。
「ね」=ない(標準語でも「ないよ」を「ねーよ」と言いますね。)
「まね」=だめ
「や」=~だよ
何しゃべちゅんだきゃ なもわがねべ?
(何をしゃべっているのか 何もわからないでしょう?)
「わがね」=わからない(標準語でも、わかんねぇと言いますね。)
ちなみに、
南部地方(八甲田山の東側)では「だめ」という意味になります。
「べ」=疑問詞
わ なさっきゃ あわせで らいねや
(私、あなたになんか合わせていられないの)
津軽弁 勉強さなが
(津軽弁 勉強しなさい)
「なさっきゃ」=「な」「さ」「きゃ」=あなたには
「らいね」=~してられない(標準語でも、やってらんねと言いますね。)「あわせで らいねや」=「あわせて られねーよ」
「勉強さなが」=勉強しなさい
「~し(さ)なが」=~しなさい
「~しなさい」という意味で「~しへ」と言うこともあります。
「~し(さ)なが」は「どうして~しないの?」とちょっとイライラしているニュアンスが入っている(ように感じます)。
(例)「早ぐ たべへ」=早く お食べなさい
「早ぐ かなが」=早く 食え
※「かなが」は「くわないか」が変化したものか?
わんどきゃ ある意味 ヨーロピアンだね
(私たちは ある意味 ヨーロッパ人なのよ)
せば だば まいね どさ ゆさ めびょん
(それだったらだめ どちらへ お風呂へ おいしいでしょう)
フランス人と同じだべさ 青森Prefecture
(フランス人と(発音が)同じですよね 青森県)
「津軽弁とフランス語は、発音が似ている」というのは、前から言われていて、以前トヨタ「パッソ」のCMで津軽弁編というものが作られ話題になったこともありました。
嶽きみ(だけきみ)ソフトきゃ たげ めんだや
(嶽きみソフトはすごくおいしいのよ)
「嶽きみソフト」=岩木山麓の嶽地区で生産される「嶽きみ」(とうもろこし)を使ったソフトクリーム。
「たげ」=すごく だいぶ、相当。「たんげ」とも言う。
「め」=おいしい。うまい→うめー→めー。
いがめんちも くたこと ねべよ
(イカメンチも食べたことないでしょ)
「いがめんち」=イカの足(ゲソ)を包丁でたたき、季節の野菜などと一緒に小麦粉を混ぜ、油で焼いたり揚げたもの。津軽の郷土料理。
「くたこと」=食ったこと
岩木山を 一度見れば なも たまげるね 青森県
(岩木山を 一度見たら あなたも びっくりするわよ 青森県)
やーやーどー
一度来てみへ 青森県 青森Prefecture
やーやーどー
いながば なめじゅんだな
いっぺん 来てみへ 弘前さ
桜どおなごも世界一
リンゴしかねど 思えばまねや
何しゃべちゅんだきゃ なもわがんねべ?
わ なさっきゃ あわせで らいねや
津軽弁 勉強さなが
まいびょん まいびょん まいびょん まいびょん
(だめだと思うよ×4)
いーびょん いーびょん
(いいと思うよ×2)
おもしぇびょん
(おもしろいと思うよ)
しっちゅうびょん
(知ってると思うよ)
津軽の おなごば なめるんでねえ この
「びょん」=~だと思う。~だろう(推量)
「まい」=だめ。「まいね」「まね」とも言う。
ここの歌詞は、RINGO MUSICの歩みと重なっているように思います。
(ドラムが弘前ねぷたの囃子になってるのも意味ありげ。)
最初はみんなから「なに馬鹿なことやってるんだ」と言われ、だんだん「いいかも」と思われるようになり、「面白い」と言ってくれる人が出てきて、みんなに知られるようになった。
深読みしすぎかな……。
おわり