RINGOMUSUME「SNOW MONSTER」 歌詞を【妄想解釈】
0 RINGOMUSUME「SNOW MONSTER」とは
「SNOW MONSTER」は、RINGOMUSUME 4thアルバム「Eternity」の最初の曲です。(作詞・作曲:多田慎也 編曲:島田尚)
八甲田山の樹氷がテーマになっています。
曲は、アイドルポップらしからぬ、何か不穏なことでも起こりそうなイントロで始まり、だんだん盛り上がって明るく終わる、と見せかけて、心をザワザワさせる音で終わります。
でもそれが全然不快ではなく、むしろ、もっと聴きたくなる不思議な中毒感。
Spotifyのアイドルポップジャパンのプレイリストに入るのも納得です。
曲のテーマになっている「八甲田山の樹氷」は、冬の厳しい寒さと強く吹き付ける風雪が作り出す自然の造形美です。
刻々と変わる冬の八甲田山の厳しい天候を音楽で表現しているのかもしれません。
また、実際のパフォーマンスでは、最後に舞台奥へ歩いていくメンバーが振り返って、人差し指を口に当てるポーズで終わるという意味深なものです。
ということで、全体的に意味深でミステリアスな「SNOW MONSTER」ですが、「30代女性のイメージのちょっと大人の歌」なのだそうです。(by ジョナゴールド。2021.07.17RABラジオ「土曜はDON」)
それでは、歌詞を読んでみます。
(個人的な妄想ですので、みなさんの世界観と違っていたらすいません。)
1 嗚呼/あのこと
いきなり「嗚呼」です。
曲を聴かずに歌詞だけ目にしたら、何と読むのか一瞬戸惑うかもしれません。
曲のイントロ同様に、歌詞の出だしもインパクトがあります。
「嗚呼」と「ああ」を比べると、なんとなく、「嗚呼」は心のより深い場所からの声のように感じます。
(私)には、(あなた)から責められるような過去「あのこと」があるようです。
もしかしたら、(私)と(あなた)の間で、冬に「あのこと」が起こったので、冬が来るたびに心を突き刺されるような感情が生まれるのかもしれません。
「突き刺さるように降る雪」は、相当激しい風雪です。
心に突き刺さると感じるほどの強い痛みをもたらす「あのこと」とは、一体何なのか。気になります。
2 愛してる
(私)と(あなた)は、かつては肌が触れあうほど、近くにいる間柄でしたが、今では離れ離れになっています。
でも、(私)は(あなた)を愛しています。
しかし、(私)が(あなた)のいるところへ行くには、思い切って、何もかも捨てなければなりません。
ベタですが、
「何も持たない男(あなた)と別れて、何もかも(地位・名誉・財産)持っている男の方に行ったけれど、結局何も持たない(あなた)のもとへ戻る」
みたいなことなのでしょうか。
そして、別れるときに(あなた)に対して、ひどいこと「あのこと」をしてしまったのを悔いている。
(ベタ過ぎですね。でも、もう想像力の限界です)
3 最初からわかっていたでしょ?
「最初からわかっていたでしょ?こうなること」と訊いているので、ふたりは再会しています。
つまり、(私)は何もかも捨てて、(あなた)のいるところへ行くことを選びました。
(あなた)を愛しているからそうしたはずなのに、Jの歌い方からすると、「(私)が戻って来るって思ってたんだよね。だから、あのとき引き留めなかったんでしょ?」的な、(あなた)をちょっと咎めるようなニュアンスがある感じもします。
この「火」は何の火なのでしょうか。
冬だとしたら、ストーブ?揺れる火だから、暖炉かも?
暖炉の火だけの、少し薄暗い部屋で向かい合う二人、そして壁に映る二人の影が揺れる。これはこれでロマンチックではありますが…。
私としては、そういう現実的な火ではなく、象徴的な「愛の火」ととらえたいと思います。(Styx「愛の火を燃やせ(Don’t Let It End)」からパク…、インスパイアされました。)
「Melody」は、これまでの人生の紆余曲折だと思います。(人生をMelodyになぞらえる歌は結構あるような気がします。)
火が映し出す『影』は、責められるべき「あのこと」です。
再会して燃え上がった愛の火が強くなればなるほど、影も濃くなります。「あのこと」への後悔の念が強くなるのです。
「揺れて(それはスローモーション)」は、(私)の心の葛藤(来てしまったけれど、これでよかったのか)を表していると思います。
そして「あのこと」が心の中でゆっくりとリフレインされます。
こうしてMemory(思い出)をゆっくりと振り返るうちに、やはり愛の思いが強くなって、 (あなたの)全てが欲しくなってしまうのです。
4 「SNOW MONSTER」は(私)
ここは、次(5)の内容を先取りしての解釈になります。
5で、(私)のことを「同じ人だと思えない」、「あなたの知らない」と言っています。
(私)も、そして(私)と(あなた)の関係も、「何もかもが変わってしまった」のです。
「SNOW MONSTER」を二人を取り巻く環境の象徴ととらえることもできると思いますが、私はあえて、「SNOW MONSTER」は(私)だと解釈します。
心に突き刺さるように降る雪が、長い間に幾層にも重なって、(あなた)の前でも素顔になれない、本当の気持ちを見せることができない「SNOW MONSTER」に(私)は変わってしまったのです。
だから、「最初からわかっていたでしょ?こうなること」などと(あなた)を責めるようなことを、本心ではないのに言ってしまうのです。
そうした自責の念、良心の呵責に耐える姿はときとして、美化の対象になります。
しかし、そんな賛美も、(私)にとっては「一瞬のレクイエム」でしかありません。本来の(生き生きとしていた過去の)(私)はもういないのです。
なにもかもが変わってしまったふたりですが、(あなた)が「あなたの知らない」(私)を抱きしめることで、全てが氷解します。
そう、それまでのこと(あのこと)がまるで何もなかったかのように。
(ここでの「抱きしめる」は必ずしも肉体的な抱擁ではなく、変わってしまった(私)を、「あのこと」を含めて、全て受け入れる「精神的な抱擁」の意味かもしれません。)
明るい曲調の「yeah yeah」は、(あなた)との関係を取り戻せた、安堵や嬉しさを表していると思います。
それでも、(私)の心の中には「あのこと」へのわだかまりが残っています。
(「でも私 きっと覚えてる」の曲調の変化もそのことを示唆していると思います。
また、観客に背を向ける振付になっているのも、前向きになれない心情を表したものと解釈することもできます。)
5 もう何も見えない
普通は「涙でかすんでよく見えない」程度です。「雪嵐のようにもう何も見えない」は尋常ではありません。
(あなた)を目の前にして、(あのこと)を まだ責めるように、突き刺さるように降る雪の勢いが、これまでにないほど強くなっているのかもしれません。
6 風の形で凍る
ここの歌詞は、まさにSNOW MONSTERの情景そのものです。
せっかく(あなた)が「あなたの知らない」(私)を抱きしめることで、全てが氷解したはずなのに、(私)は(あなた)に寄り添うことができず(雪原の向こうに)、不安を抱えて息をひそめて立っています。
(「creature”s”」なので、(あなた)も同じように立っているのでしょう。)
そして、突き刺さるように降る雪の形にまた凍ってしまうのです。
7 雪の妖精
実際のパフォーマンスでは、ここで印象的なダンスがあります。
王林、とき、彩香がSNOW MONSTERのようにじっと立っている間を、Jが駆け巡ります。
そして、Jが合図をすると魔法が解けたように3人が動き出すというものです。
(オンラインライブのチャットでは、Jは「雪の妖精」という声もありました。)
このダンスは、一体何を表現しているのでしょう?
(私)は過去の呪縛から逃れ、また(あなた)の前でも自然にふるまえるようになったということなのでしょうか?
8 時よ止まれ
しかし、SNOW MONSTERに「消えないで」と願っています。
やはり、「あのこと」を全部なかったことにして、以前と同じようにふるまうことはできないのです。
これからふたりで歩む道には光が差していますが、(私)にとっては凍てついた光です。そして、煌めきは一瞬のレクイエムです。
(私)は(あなた)にまた「あのこと」をしてしまうのが怖くて、自分はSNOW MONSTERのままの方がいいと思ってしまいます。
ただ、それでも(あなた)に抱きしめられたこの時を止めたいのです。
始めに書いたとおり、歌い終わった後の振り付けが、印象的です。
照明が緑に変わる中、舞台奥へ歩いていくメンバーが振り返って、人差し指を口に当てるポーズという意味深なものです。
もしかしたら、(あなた)が(私)に、「もう、そんなに自分を責めなくても」みたいなことを言おうとしたので、それに対する「何も言わないで」のサインなのかもしれません。
2021.9.18追記
2021.9.18の「OH!ときめきゴールドサイト」で最後のポーズについて話していました。
・(王林)ポーズの意味について、HIROMI先生からは「こうです」という説明はなかった。
・(彩香)ある人のことを想いながら探し求める曲なので、ちょっとミステリアスな雰囲気の女性のイメージ、「謎の女よ」みたいな感じのイメージでやっている。→(王林)きっと、それです。
・(彩香)ちょうど曲が終わるくらいのタイミングで振り返るようにHIROMI先生から指示されている。→(J)練習で、彩香のポジションをときさんがやったら振り返るタイミングがめっちゃ早かった。
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負い目を抱えたまま生きていくって、演歌にはありそうなテーマですが、アイドルの歌として、こんな解釈でいいんだろうか。
やはり、間違っているのか……?
“Don’t think , feel”
あまり深く考えず、感じたまま曲を楽しんだ方がいいかもしれません。
おわり
おまけ(レクイエム)
レクイエムとは、死者の安寧を神に祈るミサ、そのミサで演奏される曲のことです。
八甲田山は雄大で美しい山ですが、有名な雪中行軍遭難事件を始め、多くの人がなくなっている山でもあります。
そう考えると、雪原に立つ樹氷の群れは、ミサで祈りをささげる人々の姿にも見えてきます。
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レクイエムで私が知っている曲と言えば、モーツアルトの「ラクリモサ(lacrimosa(涙の日))」です。
モーツァルトが死の直前に書いたとも言われ、未完の部分は弟子が補作しています。
モーツァルトの生涯を描いた映画「アマデウス」で、雨の中、彼の棺が共同墓地へ運ばれていくシーンで印象的に流れています。
「ラクリモサ」カール・ベーム指揮・ウィーン交響楽団
モーツァルトの曲を引用してロックにしたEvanescence(エヴァネッセンス)の「Lacrymosa」。
”And you can blame it on me just set your guilt free, honey.”
「この別れを私のせいにしてもいいから、あなたは罪の意識から自由になって」という別れの歌です。
クラシカルでちょっと暗い(耽美的な?)雰囲気に惹かれるんですが、心が弱っているときに聴きすぎると持っていかれるので要注意です。