自転車に追突された日

仕事帰りにバス停でバスを待っていた時に事故は起きた。

昨日は具合が悪くて、とにかく早く家に帰りたかった。時刻表で次のバスの時間を確認し、少し横にずれてスマホに意識を向けながらバスを待っていた。歩道に立ってはいたけれど、道は片側通行できるスペースは空いていたと記憶している。

視界の端で何かが近付いているのを感じたのとほぼ同時に、地面に突っ伏している自分がいた。

何が起きたか分からず、けれど、無意識下で「痛い」と思いの他はっきりと叫んだ自分に驚いていた。痛いかどうかも分かっていなかったのに、痛いって叫ぶんだな…とだけ呑気に考えていた。

『すみません!すみません!どうしよう…どうしよう』

と一緒にしゃがみこんで焦りを隠せない様子で繰り返す女の子の声で、自分が追突されたことに気がついた。

警察を呼ぼうかと頭に過ぎった。


けれど、ただただ帰りたかった。
病院に行ったり知らない人に囲まれたり…想像するだけで頭が痛かった。

取り敢えず手のひらと膝が痛かった。擦りむいた時の痛みだからきっと大丈夫。


驚きと疲労と煩わしさで更に帰りたい。


何故か、心配してくれている加害者の女性をガン無視して直立だちしてしまった。案外普通に立てた。それにも驚いた。


私があんまりにも無視するもんだから加害者の女性もすみません気をつけますと言って逃げるように帰って行った。


帰らせてから、あ、警察呼べばよかったと思った。
何となく。

そのままバスに乗り検索すると、病院に行ったら治療費を出してもらえるとか、無傷なら何も貰えないけどむちうちは治療費が出るとか、貰えるお金を逃してしまったような後悔が押し寄せてきた。加害者の女性が諭吉にしか見えなくなっている自分に嫌気がさしつつ、先程の衝撃の痛みが少しづつ押し寄せてくるのを感じた。

負のループじゃないか。


追突された上に精神的に自分をいじめることになるなんて今日は本当についていない。


お金云々より友人に言われた
『追突するってことは前をちゃんと見てなかったってこと。スマホ見てたとかなら余計にちゃんと悪い事だと身を持って教えてあげなあかんで。』
という言葉が1番効いた。


多分私はぶつかられた事に怒っている。
だから相手を痛い目に合わせたいと思っている。
それだけで、私も悪いことをしているような嫌な奴になったような気持ちになってしまう。

けど、今度はちゃんと警察を呼ぼうと思った。




翌朝、普通に目覚めていつも通り体は重い。
これが昨日のものなのか、寝かたの問題かは分からない。けど、心が穏やかでないのは確か。


自転車に乗る人が多いのに一々怖い。自転車だけじゃなくて車も必要以上に怖い。



思い出したら背中が痛くなってきた…。








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