祖父の原稿 10
十 おかやま県民健康マラソン大会
昭和61年3月21日、第7回おかやま県民健康マラソンを走ることになったのには、次のような前段からである。
3ヶ月前の61年元旦、岡山市で生活している長女の結婚相手からの年賀状「義父はマラソン狂、3月に岡山にマラソン大会があります。沙希も4月に小学生となる。入学祝いを併せて63歳の健脚を披露する健康マラソンを走ってください」新年早々嬉しい要請を受けて、参加申し込みを依頼し3月を待つ。
3月21日、一家4人が乗った福江の運転する車に同乗し、沙希ちゃん、元太に囃(はや)されながら初めて見る岡山市の郊外山陽町の桜が丘会場に着いた。受付で大会プログラムを受けとる。
ごあいさつ
昭和55年から毎年、県民の皆様の体力づくりに資すことを意図して、記録より完走することを目的として開催しております。
今大会の参加者は、東は関東、西は九州からの参加者を含めて1万を超えて瀬戸大橋開通時代を迎えるにふさわしい大規模な大会となりました。
今日1日さわやかに走っていただき、明日の健康の確かさをしっかり感じとっていただきたいと存じます。、、、略、、、
参加の種目
①健康マラソン20km
②健康マラソン10km
A 男子(中学生以上〜29才まで)
B 男子(30才〜49才まで)
C 男子(50才以上)
③ファミリーマラソン5km
・クラス区分なし(小学生以下の参加は保護者同伴)
あいさつの一言一言に岡山県民は健康に関心が高いことを知った。「人生80年代に対面した、自分の健康は自分で」の合言葉でモモタロウマラソンを立ち上げたシニアも岡山人。全県民の健康への高い関心度を知って、健康マラソンに参加出来たことが嬉しかった。
参加はC部63才で高齢の位となるが、沙希の入学祝いに花を添えたい走る以上は何としても表彰台に立って、孫達と喜びの対面をしたいと、高揚した気持ちに押されてスタートした。周りは芋を洗うような団子集団。友人もいない。知人もない。10分走るとようやく集団を抜け出した。ただ走るだけ。頭の中に描いた表彰台に立った姿を追って無性に走ってゴールに飛び込んだ。右側から飛び出してきた決審員が差し出した着順カードを手にする。
人垣の中から犬のように出てきた元太を抱き上げ広場まで来て力尽き倒れ込んだ。痛くも何ともない。顔を見合わせて大笑いになる。
C部2位時間42分35秒。表彰台に立った。群衆の前面に出てきて、じっと俺を見つめている元太の目に合って喫驚した。真剣な顔で見つめる心は何だろう。4才になって初めて見せる顔に驚いた。俺のこの晴れ姿を見て感動したのか。幼児から脱皮したのか、賞状を手にしたが頭の中は元太でいっぱいになっていた。俺の頑張りを見てどんなに成長していくか。