一流の表現者
もう1年も前のことになるんですが、仕事で村上龍さんにお会いしました。インタビュー番組のディレクターをやったときです。
インタビュアーは、幻冬舎の石原正康さん。トップクラスの編集者です。この人のすごさはちょっと話しただけじゃぁわかりませんよ。なんていうか、よく言えば優しい…感じの。この人ホントにすごい編集者なんだろうか?っていう…。
だけど、しばらくつきあってると、だんだんわかってくるんだなぁ、これが。ボクはディレクターですから、出演者をノせて盛り上げる役割があるんですけど…簡単に言うと、ですよ。それしかやってないみたいだと思われるとね…。
気がつくと石原さんの空気になってて、逆にこっちがノセられているんですよね。これが、い〜い気分なんですよ。
それで、気づくんですよね、なるほどこれがこの人のすごさか…って。
で、村上龍さんの話ですが。
なんていうか、憧れのロックスターみたいな感じ。やっぱ説得力がちがうっていうか…。
収録は、もう全編が名言のようで、一言ももらせない、濃厚な時間でしたね。編集は苦労しましたが。
今でも、心に残ってるのが…、
例えば、「半島を出よ」の中で、福岡ドームのオーロラビジョンを破壊するシーン。ここの数行を書くのに、30時間ぐらい考える。書き出したら早いんだけど、どう書くかって長く考える。意外に思うかもしれないけど…。深く考えるんじゃなくて、長〜く考える。
って言うんですね。
勇気が湧いたように感じたんですね。つまり、村上さんに特別の才能があって、 —ま、才能はとうぜんものすごくあるんですけどね— ささっと書いてしまう…んじゃなくて、数行のために30時間も考えるって…。
その物理的な圧倒的な量がプロたるゆえんかと…。あれだけすごい創作を支えてるのは、能力よりも物理的な量なんだな…と。ぼくらも制作にめちゃくちゃ時間がかかりますが、時間かかっていいんだな、って。時間をかけてるから、物理的に。それが説得力になってるんだぁ。
よくスポーツ選手も言うでしょ?あれだけ練習したんだから負けるワケがない、って。あれって、練習量がすごいぞって部分と、まぁ、あと自信につながって、ものすごく発揮できるってことなんでしょうなぁ。
なんか伝わってるかなぁ、この記事、時間かけてないからなぁ…。
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