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連想ゲーム

新宿に言ったら、京王線周りのデジタルサイネージに『春の高尾は花の都だ』というややタイミングのずれた広告が出ていた。そろそろ夏の広告に切り替わるのかなぁなどと思いつつ、『花の都』という言葉から芋づる式の連想ゲームが始まった。
花の都→フィレンツェ→フローレンス→そういえばフローレンス・ナイチンゲールはフィレンツェで生まれたからフローレンスらしいな→ってかそもそもフィレンツェって『花の都』って意味のある名前なのかな?
気になってウィキペディアでフィレンツェを調べてみると、古代ローマ時代には『花の女神フローラの町』という意味のフローレンティアという名前だったらしい、当たらずとも遠からずなのか。むしろ英語のフローレンスの方が原語に近い雰囲気だな、さすがロマンス語影響圏。
などという連想ゲームの果てに、記憶はとあるミュージカルを掘り返す。

"The Light in the Piazza"というミュージカルがある。日本版も公演されたが、私が知っているのはブロードウェイ初演版のキャストアルバムの方だけである。1950年代にアメリカ人の母娘がフィレンツェを訪れることで始まる話だ。美しい音楽の中で繰り広げられるのは、過去の事故により軽度の知的障害のある女性と、年下のイタリア人青年との結婚という、中々に込み入った話だ。あらすじはそれこそウィキペディアの英語版で最後まで読めるので、気になる方はぜひお読みいただきたい。
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Light_in_the_Piazza_(musical)

私がこの作品を映像として見たのはトニー賞授賞式でのパフォーマンスだけなのだが、それがまたとても良かった。特に母マーガレット役のヴィクトリア・クラークさんがとてもとても良かったのだ。笑いじわの多い顔立ちと柔らかな歌声は、『26歳の娘がいる中年女性』というマーガレット役のリアリティを見事に強めていた。ちなみに当時クラークさんは46歳だったようなのだが、私は彼女の深みと落ち着きを見てもう少し年上なのだと誤解していた。後年『シンデレラ』でマリー(フェアリーゴッドマザー)役をやった時に、印象が全く変わっておらずびっくりした。欧米系に比べるとアジア系はいつまでも若いと言われる事もあるが、40代頃で顔の印象が完成してそれ以降ほぼ印象が変わらない欧米系と、60代前後で雪崩を打つように老成するアジア系のどちらが良いかは個人の好みの範疇である。
よかったら、最初のナンバーだけでも聞いてみて欲しい。ヴィクトリア・クラークさんと、娘役のケリー・オハラさん(渡辺謙さんが出演した『The King and I』でアンナ役を演じた方)の美しい歌が堪能できる。ちなみに、アルバムを聞けば、ドラマ”glee”のシュー先生役でお馴染みマシュー・モリソンさんの歌声も楽しめる。
https://open.spotify.com/track/6VN79rWMKySWxiec4VFNfN?si=2565c673c90840b0

うっかり語ってしまったが、なぜこのミュージカルを思い出したかというと、そういえばトニー賞授賞式で、フィレンツェとフローレンスの両方の呼び方を使っていたなぁ……という、ただそれだけである。

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